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自分で年収を決める働き方、増税に備えたデジタル社会の生き抜き方

2023年4月からは医療機関に対してマイナンバーカードを健康保険証として利用するシステムの導入が義務化されて、2024年の秋頃までには紙の健康保険証を廃止させる計画だ。 この施策によって、全国民がマイナンバーカードを取得するようになるだろう。

マイナンバーカード保険証には、転職や引っ越しをしても同じ保険証を継続して使えるようになったり、確定申告の医療費控除が簡単にできるなどの利点がある一方で、利用者にとって不都合な面もある。

一例として、病院やクリニックを受診する際に、自分の年収レベルが医師やスタッフにわかってしまうことがある。これは、手術や高度な治療で高額の医療費がかかった時に、一定額以上の支払い分は公的保険から支給される「高額医療費支給制度」がデジタル化されることによる弊害だ。

従来の手続きでは、病院の窓口で患者が高額医療費の全額を支払い、後日、自分が加入する健保組合に対して給付申請をする流れとなっていた。これがマイナンバーカード保険証になると、自動的に限度額が適用された治療費が窓口で請求されるため、患者は高額の費用を一旦用意しなくても済むようになる。しかし、病院の窓口では、オンラインで限度額適用認定の情報にアクセスして治療費を算定するため、患者の年収区分がわかってしまう。

マイナンバー保険証のオンライン資格確認(厚生労働省)

マイナンバーを基盤としたデジタル社会では、年収も含めた詳細な個人情報が管理、共有されるようになるが、これをどのように捉えるのかで、仕事のスタイルや生き方にも変化が生じてくる。年収に対する競争意識を捨て去れば、年収は低いほうが好都合な面も多いのだ。それは、高額医療費の負担額にも該当している。

上図からみると、高年収者ほど高額医療費の自己負担額は高くなり、低年収者には優しい制度になっている。そのため、自分の年収を意図的に下げて、自己負担率を下げる方法もある。この考え方は、他の社会保険料や税金にも共通するため、これからの増税対策として注目されている。サラリーマンは年収を自分で調整することが難しいが、個人のビジネスオーナーや会社経営者であれば、それが可能だ。

【個人会社を活用した資産形成の方法】

 増税による負担が重くなる時代には、自分の給料は自身でコントロールできる働き方を選んだ方が、生涯トータルで貯められる資産額を増やすことができる。 これは、必要以上に働かないことではなく、事業の売上は伸ばした上で、経営者としての報酬を、節税面で最もメリットのある地点で決める方法を指している。

小さくても自分の会社を持ち、事業から得た利益から役員報酬を受け取る場合には、毎月の報酬額が高いほど良いというわけではなく、報酬を低くして資金を会社に残し、個人と会社トータルで保有できる資金額を最大化するのが賢い方法になる。たとえば、法人の年間利益が800万円ある個人会社の経営者が受け取る役員報酬として、600万円、300万円、100万円の3パターンをシミュレーションすると、100万円の設定が最も節税対策になる。

その他にも個人会社の経理では、仕事と兼用するマイカー購入費、自宅の一部を仕事で使う家賃、携帯電話、ネット回線、仕事仲間や取引先との交際費、出張を兼ねた旅行代などを経費としたり、配偶者も役員として役員報酬を分散したりして、最終的な利益と税率を下げる工夫もされている。

個人会社を利用した節税スキームは合法的なものであり、スポーツ選手や芸能人の中で行われてきたものだ。売上の大小によっても変わってくるが、事業が成長していけば、フリーランスや副業サラリーマンの中でも、自分の個人会社を作ることで、節税できる効果は大きくなる。

デジタル社会では、個人と会社の収入がガラス張りになるため、多くの項目で増税されていく。これは抗うことができない時代の流れだが、それだらからこそ、収入と所得の違いや、正しい節税の知識を学び、自分の手元に残る資金を合法的に最大化していくことが、老後を迎えた時の生涯資産の差となって現れてくる。

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