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世界が日本に来る意味ー日本はどこに行く(上)

幕末に、212年ぶりに日本は開国した。欧米の人が来日して日本を旅した。小柄で、男は丁髷で女は髷で、着物姿は、彼らの生活様式とはまったく違って見えた。エキゾチックな雰囲気な人たちが住む未知の国に見えた。イザベラ・バードをはじめ日本を訪れた欧米人が、多くの文化人類学的な書物を残した

1867年パリ万博での北斎たちの浮世絵が牽引したジャポニズムという日本趣味が欧州で起こる。その150年後の現在、日本ブームが来ているのか?

一方、江戸幕府は鎖国をしたものの、中国と朝鮮との交易・交流を継続した。彼らが残した書物にはエキゾチック的な感想はなく、同じ中華文明の基盤の江戸時代の日本には、なんら違和感がなかった

欧米の日本の見方と、東アジアの日本の見方は根本的に違っていた

1 世界が日本に来る

この春から、海外から日本を訪れる観光客が一転一気に増えている。コロナ禍前の訪日客を上回るだろう、予想よりも前倒しの見通しをする人もいる。なにが起こっているのだろうか?

インバウンドが増え、世界から日本に来ていただき、お金を落としていただけることは、日本経済にとって良いこと、この3年の不遇の倍返しだ、100倍返しだと、息巻く人や企業がいる


しかし、だ。そもそも世界から観光客が、なんのために、日本に来られるのだろうか?それを掴んでいるのだろうか?分かっているよ、外国から来られる人はこういっている

日本は美しい、キレイ、文化がある、伝統がありつつ最先端の技術があり、マンガやアニメの聖地であり、楽しく、日本の料理が美味しい、日本人は親切で優しく、お店には安くて良いものがたくさんあり、とっても安全で…

たしかに、そういう声が聴こえてくる。しかし、それが、世界の人がコロナ禍後にまず選んだ、他の国ではなく日本を選択した

決定的理由なのだろうか?

日本は、世界からお越しいただく人々のことをどれだけ理解できているのだろうか?それを理解せずに、これまでと同じような価値観、先入観で、日本は世界に接しているのではないだろうか?

幕末から150年後の2023年における、欧米の日本の見方と、東アジアの日本の見方は、同じだろうか?


2.文化と文明とはなにか?

インバウンドで賑わうなか、再来年の2025年に迫った大阪・関西万博での中国館のテーマが発表された。中国の古い書簡を開いたような竹の建物として、自然との共生という中華文明の真髄を訴求しようとされている。現代中国のこころが観えてくる。この中国のテーマ設定から、中国、そしてアジアから見える日本の姿を考えてみる

「中華文明の、自然と共存する理念を表現している」—重要なメッセージが込められているのではないか

「中華文明とはなにか」を考える前に、まず文明と文化とはなにかを考えたい。文化も文明も、日本人がつくった漢字。明治初期に西欧の言葉を漢籍と照して翻訳した一連の和製漢字のひとつである。意味が分からないような漢字である。いろいろな解釈があるが、私はこう捉えている

文化とは習慣で、文明とは結果・成果

人々がある文化的な活動を行い、その人々の活動を社会全体が価値として認めたものが「文明」になる。まだ分かりにくい

文化・文明ともに「文」がつく。この文とは、知識という意味

社会には、いろいろな人がいる。清廉潔白な人ばかりだと良いが、社会には野蛮な人もいる。落し物を奪ったり、人を殴ったりすると、社会が混乱する。その野蛮な人に、野蛮な方法をとらせないようにする方法が文化である

文化とは感性をふくめた知識にもとづく習慣

では、文明的な社会とはどういう社会かというと、だれかにそれを教えられることなく、みんながそれをするという社会である。たとえばコンビニでモノを買うときには、日本人は列に並ぶ、これは文化。しかしだれに教えられることなく、コンビニでモノを買うときは列に並ぶものだという社会的価値観があるのが文明である

つまり文化はだれかが教えないと身につかないが、文明は子どもがうまれた段階で社会の価値として存在しているもので、空気のようにその運命を吸い込み成長していく。それが文化と文明の意味と考えている

3.日本文化から中華文明を再構築しようとする中国

現代中国には、中華文明が目に見えなくなっている。日本に行き、正倉院展で唐の万物を観たり、唐の長安を模した奈良や京都の街並み、寺院や建物を観る。日本文化に慣れ親しめば親しむほど、これこそ中華文明だと理解する。中華文明が社会基盤のあちらこちらで息づく日本に、中華文明の保存版に見える。とりわけ「漢字」「漢文」という「漢」という字に感動する。

中国の儒教とか道教が生活や社会基盤に流れていて、中国人にとれば違和感はなく、日本文化は中華文明の現在進行形に見え、それを中国に持ち帰る

その例のひとつを靴にみる。中国では、もともと靴を脱ぐという習慣はなかった。シルクロードの国・地域の人々は、床に地面に座って生活してきた。しかし中華文明でありながら日本は家のなかでは靴を脱ぎ、生活空間を清潔に保ち、それぞれの空間に意味を持たせる文化、スタイルを育んだ

80年代の初頭まで、中国人は部屋の中でも靴を履いていた。日本人の生活スタイルを知り、靴を脱がないと足の衛生も良くなく部屋も汚くなるのではないか、靴を脱がない生活は文明的ではないと考えはじめ、日本の生活習慣がいいのではと逆輸入しだした

さらに中国には風呂に入るという習慣、道路ではゴミを捨てないという習慣はなかった。列に並ぶとか、信号を守るとか、対向車に「どうぞ」と道を譲るパッシングとか、人に親切にするといった日本人のライフスタイルに触れ、自分たちの文化に取り込みだしている

率先して日本文化を取り組んできたのは、台湾。自分たちのルーツを日本で探してきた。中華文明のルーツを日本文化から探して、自国に取り込み、日本チックになった。その台湾が日本人の人気観光地となっている

中国もそういう動きが加速している。中国の清は北方民族建国だったから、中華文明が薄れた。111年後の現在中国人口の91%を占める漢族にとって、漢・隋・唐の時代が中華文明の核で、この時代の文物が日本に残っている。とりわけ正倉院をはじめ奈良・大阪・京都など近畿に数多く残っている。日本に来てそれらを拾いあげ

日本文化から
中華文明を再構築する

それは中国人にとって違和感がない。なぜならば、もともとルーツは中国だったから。では、それが、これからの日本にとって、どういう意味をもつのだろうかを次回、考えたい


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