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ベテラン営業の「経験による暗黙知」を言語化・ナレッジ化した話

最近考えているのが、「ビジネスを大きくしていく上で課題になるのは”後から入ってくる人の(熱量やスキルの)濃さ”ではないか」ということ。

我が社では『新メンバーがどれだけ早く、そして再現性高く、創業メンバーレベルの「濃さ」までキャッチアップできるか』を日頃から注視しています。

なぜなら、ここがグラついていると、「薄い人」がどんどん増えて事業の推進力が失われてしまうからです。そうなればビジネスの成長にも影響が出てしまう。

なので私は、新しいメンバーを迎えたとして、たとえば「3人目よりも、8人目のほうがキャッチアップが遅かった」場合、人数は増えても会社としては成長ができていない。

つまり、「会社としては進化していない」と、考えるようにしています。本来は人が増えるごとに、スピードと再現性が上がっていくのが理想のはず。

とは言いつつ、スキルの中には数年かけてようやく身につくような「濃さ」も当然あるし、新メンバーの知識や技術にも個人差はあるので、この理想はそう簡単に実現できるものではありません。

ところが先日、「社内でナレッジ(=ノウハウ化した付加価値の高い知識)をどれだけ真面目にためられているか次第で、キャッチアップのスピードや再現性は大きく改善する」と痛感した出来事がありました。

それが、「ナレッジ整備による、新メンバーの営業プロセスの倍近い改善」です。

一体どういうことなのか。ということで、この記事では、下記のアジェンダで、文字通り「ナレッジ」としてご紹介します。

1. ナレッジの言語化で営業力が向上した「経緯」

きっかけは、我が社が定期的に実施している営業の「失注分析」会議でした。

失注の傾向を見ていると、

・新メンバーは初回の商談→二回目商談へ進むのを難しいと感じている
・私を含む創業メンバーは初回の商談→二回目商談はそんなに難しくないと感じている

というように、新メンバーと創業メンバーとの間で、初回の商談を突破できるかのハードル認識に大きなギャップがありました。

新メンバーは営業スキルが不足しているわけではありませんし、初回商談の内容やトークスクリプトもしっかり磨かれています。その証拠に、初回の商談では顧客といい感じに盛り上がれている。

にも関わらず、なぜか2回目の商談につながらない。

「自分の経験からすると、初回の商談できちんと話せれば、2回目の商談はつながるはずなのにどうしてだろうか」

当初の私はモヤモヤを感じつつも、「経験や引き出しの差だろう」「まあ2〜3年も経てば」と解釈し、そこに何らかの”ノウハウの差”があると疑うことをしませんでした。

ところが、ある日の「失注分析」会議でのこと。

いつものように、失注した案件の整理や報告・どう対応すべきだったかの検討、今後の対応策などを複数メンバーで話し合う場を設けていました。

そこで、新しいメンバーの初回商談の失注報告に対して、創業メンバーから「その場合はこう対応すればいいんじゃない?」など、セールストークの持っていき方や、対応方法などのフィードバックがたくさん出てくることにふと気がついたんです。

そして新しいメンバーは、フィードバックに対して「たしかに!」「そんな方法があったんですね!」と発見があり、腑に落ちたリアクションを多くしている。

そう。実は、新しいメンバーと創業メンバー間とで、成果を断絶する”ノウハウの差”があったのです。

しかも、逐一経験せずとも、ロジック&パターンで「型化」ができるような差が。

この気付きを経て、社内で話し合って作った型が、こちらの図です。

こうして型化した内容を商談に盛り込んだところ、新人が初回の商談から2回目に進む確率が倍近くまで跳ね上がりました。何年も待たなくても、実績を大きく改善することができてしまったわけです。

2. 気づきを経て、職人芸をナレッジ化

この経験から得た気づきは、『(本人は気づきにくいが)「職人芸」的にやっていることにも、実はロジックやパターンがある』ということです。

私は前職でも営業をしていたこともあり、「初回の商談で話すべきことが話せれば、自然と2回目の商談に行けるものだ」と信じていました。いわば職人芸的な感覚だと思います。

なので「差がでるのであれば、それは営業力=場数や経験年数の差だから、仕方がない」とさえ思っていたフシもあります。

つまり、「うまくいく人といかない人の間に何の差があるのか」「ノウハウの差があるんじゃないか」と疑って考えることにフタしていたわけです。

ですが、社内で話し合う中で、自分が場数や経験だと思っていたことや感覚で職人芸的にやっていたことにも、実はロジックやパターンがあること。

そして、そのロジックやパターンを型化してメンバーに伝えることで、場数や経験の差を埋められることに気がつきました。

もともと私は、ナレッジには力を入れている方だという自負があったものの、まだまだ足りないと感じた瞬間でした。

「場数」や「職人芸」のようなあいまいな解釈には疑いの目を向け、何か少しでも「メンバーのヒントになるようなノウハウが隠れているんじゃないか」と考えておくべきだったとも思います。

ナレッジの必要性をいっそう痛感した今は、元キーエンス社出身の西島さんを招いての勉強会も開催するほどナレッジの蓄積に力を入れています。

3. どうナレッジを作っていくと良いか

ナレッジを作るにあたっては、「経験の差」といったあいまいな整理の仕方をしないことを念頭に

・「うまくいっている人・案件」と「うまくいっていない人・案件」の間には何の差があるか?
・うまくいっている人は何をしているのか?
・うまくいかない人は何をしているのか?

こうした「事実」のあぶり出しを、メンバーみんなで行うところからスタートするのが良いと思います。

メンバーみんなのノウハウを集めることで、「個の営業力」だけでなく「事業の営業力」を上げていくことにも繋がります。

その点、「案件を振り返る場」がそもそも必須です。営業なら「受注分析」「失注分析」ができていないと、議論ができません。「場」がない方はまずはそこからです。

※過去の案件の受注分析や失注分析については進め方がわからないというお声もよく聞きます。私が普段実施している分析手法をまとめていますので、詳細な方法については、以下のnoteをご覧ください。

今回の我が社のケースでも、まさに上記「失注分析」のnote通りに進め、みんなで差分を明らかにしていきました。

1. 営業が、自身で失注した案件をまとめたリストを用意する
2. その中で、「なぜ失注したのか」の仮説を営業が自分なりに考える
3. 自分なりに考えた「失注理由の仮説」を、他のメンバーと一緒に振り返る

という流れです。

そして差分をあぶり出せたところで、課題をクリアできているメンバー(今回でいう創業メンバー)中心に、どう対応すると良いかを言語化・整理して、メンバーと突き合わせを行ってまとめていきます
(私は整理にmiroやNotionを使いました。以下の図はすべてmiroで作っています)

そして体系的にまとめたあと、営業やカスタマーサクセスチームなど各メンバーにも再確認してもらい、かつ新しいメンバーがマネしやすいように実際の提案書や提案事例を掲載して仕上げます

この図はあくまで我が社のケースなので、このとおりにやればいいとは限りません。どうまとめるかは事業内容によって異なるので、一言で語ることは難しいです。

しかし、「うまくいっている人・案件」と「うまくいっていない人・案件」の間には何の差があるのか?うまくいっている人は何をしているのか?といった点から丁寧に考えていくのは、どこも同じではないかと思います。

まずは、事実をあぶりだすところからはじめてみると良いかもしれません。

終わりに

今回は「社内でナレッジをどれだけ真面目にためられているか次第で、キャッチアップのスピードや再現性は大きく改善する」という話をしました。

「あとは場数と経験」とあいまいな言葉で済まさず、職人芸と言われるような仕事の仕方もしっかり言語化して、ナレッジとして伝えていくこと。

これによって、新人はいち早く創業メンバーレベルの「濃さ」に達するようになるし、濃さがあればビジネスは大きくスケールするはずです。

もし今回の話が参考になって、今後に活かせそうだと思ってもらえたようであれば、それは「この話がナレッジとして機能した」ということだと思います。

ナレッジの効果が実感できたなら、ぜひ行動に移していきましょう。

もし、分析の手法やナレッジ化の方法にお悩みの点などがあれば、DMなどいただければ、可能な範囲でご相談に乗ることも可能です。

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