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人口も多く、それなりにお金を持っている中年の独身おじさん・おばさん

コロナ前から流行りのような言われた「Z世代マーケティング」だが、私はその流行当初から疑問を投げかけていたわけだが、そういう声はかき消され、まるで何かの新興宗教に取りつかれた人の軍団のように「これからは、Z世代だ!」なんてマーケティングセミナーが盛況だった。

私が「Z世代マーケティングなんて商売にならない」と言っていたのは、別に若者が嫌いだからではない。そういう感情の問題ではなく、ファクトを俯瞰して冷静に判断すれば、商売になるような人口ボリュームが少ないためだ。。

こちらの記事でも書いた通り、日本の年齢構成は昭和と比べれば随分と様変わりしている。簡単にいえば、若者が少なくなって、中年と老人が増えているのだ。長らく少子化が続いているのだから当然だろう。


この記事にある推移グラフを見れば、若者が増え始めたのは1980年代。恋愛至上主義といわれた時代でもある。そして、もっとも人口が多かったのは1990問題から2000年代前半にかけてである。その頃には、コギャルブームや女子高生ブームが起き、メディアでは雑誌が元気だった頃だ。スマホはまだ登場していなかったが、ガラケー文化が花開いた。

この人口がもっとも多かった重大に「若者マーケティング」をやるのは理にかなってはいる。当時も、女子高生を集めたグループインタビューなどが仕切れに実施されていた。女子高生たちの会話を別室からマジックミラー越しに見るおっさんたちの図というのは、今思い出すとなかなか気味が悪いものでもある。

しかし、いかんせん、若者をターゲットにしたマーケティングで大ヒットした商売があったかとえとそうでもない。勿論、メディアに取り上げられて話題になったという面ではたくさんあるが、利益として儲かったかというとそうでもないのだ。

なぜならば、人口が多くても若者の客単価は低いからだ。商売の売上とは、単純にいえば、客数×客単価で決まる。いかに客数が多くても、一人当たりの田客単価が低ければ総売り上げはあがらない。

それでも当時は、まだマスマーケティング全盛時代である。とにかく大量の客に一回でもいいから買って貰えれば、全体の客数が多いので、それだけで商売になった。100万人が単価100円で1回買ってくれれば、もうそれで1億円の売り上げなのでそれでいいという考え方だ。だから毎年のように新商品を出す。継続的に売れる必要はない。一回だけ買ってもらえればそれでいいという考えだからだ。

人口が多かった時代の商売はそれでよかった。

しかし、独身者に限っても、もはや若者より中年独身の方が人口が多い時代になった。ただでさえ単価が低い上に、人口も少ない若者を狙ったところであまり意味がない。むしろ、人口が多い上に若者より金を持っている中年独身を狙う方が合理的なのである。

なので、こちらの記事の以下の記述は実に正しい。

マーケティング論としてZ世代戦略が叫ばれるが、実はもっともマーケティング効果の薄い世代だと言える。なぜなら圧倒的に人口が少ないからだ。20~24歳までの人口を見ると約624万人。30代前半と比べても3%弱少なく、40代前半と比べると21%程度も少ない。しかもコストパフォーマンス志向は強いうえに、多様化が進んでいる。Z世代マーケティングの経済効果は、もてはやされる割に期待値が低いのが実情だ。

未だに「Z世代マーケティングだ!」なんて言っている上司がいたらヤバいと思った方がいい。

そして、残念な事に、今後少なくとも80年間は若者の人口が増える見込みはないのである。そもそも全体的に人口減少する。

Z世代がどうだとか、世代論マーケティングとか悠長なことが語られる時代はよかったろう。今後求められるのは、年齢とか世代とかにこだわらず、消費力のある優良顧客をどれだけ獲得できるかという点である。

実際、すでに外食産業はこの独身者によってその売上が支えられている。

コンビニだけではなく、スーパーの惣菜や冷凍食品も今や「一人用」で売られている。


お客と日々相対している流通の人たちの方が、マーケティングに敏感である。だから、流通業は電通や博報堂なんてところにマーケティングの仕事なんて頼まない。自分たちの方が経験もデータも上だからだ。

すでに独身人口は5000万人規模。少なくともあと20年はこのソロの時代が続く。ソロ社会を理解しないと商売にならない時代に突入しているのだ。

私は2014年からソロ社会のマーケティングについていろいろな企業とお話させていただいてきたが、「そんな時代なんて来ない」と事実に基づかない個人の不快な感情だけで切り捨てる企業人もたくさん見てきた。一方で、当時から事実を理解し、適応していこうという意欲のある企業人もいた。あれから10年、企業人としてどちらが正しかったのか?

未来をつくるのは無知な人間の信条や強いだけの頑固な意志ではない。現実を把握し、柔軟にそれに適応した人間が、結果として未来をつくっている。

但し、ひとつ注意したいのは、ソロ社会だからって、独身を狙いたいからといって「独身におすすめの…」「中年に最適!」なんてことをやるのは下の下である。それこそ彼らの感情がわかっていない。そして。感情こそが行動の源泉であることをもっと理解した方がいい。

ここに書いた「世代論の嘘」など、これからのソロ社会に対応する話を書いた本が以下です。よろしくお願いします。


長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。