「旅するように生きる」ための3つのアイデア
旅というものは、自分自身の日常を非日常に変えてくれる。しかしこれまで日本で旅行といえば、連休の混雑時に渋滞を乗り越え、2泊3日で観光地をめぐってくるイメージだ。それがいま、リモートワークやSNSの普及によって、旅の意味が変わってきている。ゴールデンウィークの2泊3日ではない、「旅するように生きる」ためのツールを考えてみよう。
旅するように生きるツール1:旅くじ〜SNSの延長で旅をする
一つめの旅するように生きるツールは、旅くじだ。サイコロを回して、当たったところまでのチケットが割安で手に入る。いわゆるガチャの仕組みだ。
次の記事では、さまざまな「旅くじ」が流行っていることを報じている。旅くじを買った時の反応を映した動画が、TikTok(ティックトック)でZ世代を中心に拡散されるなど、行き先の分からない予想外の展開にひき付けられる若い世代の心理をうまく捉えたという。
もともと、JALの「どこでもマイル」などは、満員にならない路線を人気路線と組み合わせて3択のくじにすることで、少ないマイルで旅ができるというものだった。それがどんどん発展というか、よりガチャ体験が強調されてきた。
旅するように生きていると感じたければ、毎月一回、旅くじで出かけてみるのがいい。期せずして日本一周したような気になるだろう。そんなに遠くまで行かずとも、一日パスを買って、サイコロに行きたいところを6つ書いて転がすだけでも、サイコロ旅は楽しめる。偶然を求めて旅に出る、それ自体に大きな意識の変化があるのではないだろうか。
旅するように生きるツール2:ワーケーション〜会社の経費で旅をする
次の記事は、ハイアットホテルが温泉旅館に参入という記事なのだが、そのなかで、出張の前後に余暇を付ける「ブレジャー」や仕事と休暇を組み合わせた「ワーケーション」など新たなビジネス旅行の形態も増えてきた、と書かれている。
私自身の仕事が企業と地域をつないで社会課題解決をすることなので、京都にクライアントに来てもらって、地域のプレイヤーと協働してもらうことがある。昨年、プロジェクトメンバーの一人が、京都に約1ヶ月、地域との協働をきっかけに、ワーケーションと組み合わせて長期滞在していた。プロジェクトがある日は、出張費が浮く形で現地にいて、ない日はワーケーションで東京とつないで仕事をしていた。そして夕方になるとホテルの自転車を借りて、あちこち散策に行く毎日を過ごしていて、ほんとうに素敵な旅をしていた。
いまは、こういうふうに出張に絡めなくても、純粋にワーケーションに行くことも当たり前になってきた。各自治体も、移住関連予算をつけてワーケーションを支援しているから、格安のワーケーションプランもふえてきている。
観光を目的としない、暮らすように旅する経験をもっとも手軽に得られるのがワーケーションだろう。おおげさに考えずに、日帰りワーケーションから始めてみてもいいだろう。
旅するように生きるツール3:歩いてマイル〜近所を歩いて旅をする
3つめのツールは、歩いてマイルを貯めるアプリだ。もっとも身近な、物理的にも距離の近い旅を楽しくしてくれるツールだろう。スマートフォンの位置情報の取得機能を使って移動が記録され、人工知能(AI)が移動手段を自動判定するので、なんとなく移動していても、その移動そのものに意味を与えてくれる。
ツールを組み合わせて自分らしい旅の日常をデザインしよう
旅するように生きるとは、日常に旅のワクワク感がつねにある状態をつくることである。上記3つのツールを組み合わせて、自分の日常が旅のある状態になることで、人生の意味や見方を大きく変えることができるだろう。
もしあなたが場所と時間にしばられない仕事をしていて、家族のケアが必要のない、もっとも自由な人だとしたら、ぜひともいちばんダイナミックな「旅の日常」にチャレンジしてみてほしい。それは、旅くじで場所を決めて、そこでワーケーションをする。ワーケーションした先でも、歩いてマイルを使って、できるだけ徒歩や自転車で過ごす。個人事業主であれば、旅費は経費で落とせるはずだ。そして何より、この旅の日常から得られる発想で、イノベーティブな視点を得ることができるだろう。
高齢者の孤立問題解消に「旅の日常」を
これら3つのツールをうまく組み合わせれば、引きこもりがちな高齢者に「旅の日常」をプレゼントできる可能性もあるだろう。高齢者になって孤立し始めると、「行くところがない」ことが最大の問題になるからだ。旅の日常は、当たり前の毎日に、偶然と出会いをもたらしてくれる。
歩いてマイルと旅くじを組み合わせれば、近所のどのお店でランチするかを割安でくじで選べるようにできるだろう。ワーケーションでその地域に来た人に、ローカルを案内するというのも素敵だ。
「日常に旅を」という考え方は、お金や能力がなくても、私たちの人生の意味を大きく変える可能性がある。
「旅とともにあらんことを(May the Journey be with you)」(もちろん、スターウォーズの「フォースとともにあらんことを(May the Force be with you)」より)