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「クリック水増し事件」を、リテールメディアで起こさないために

反響の大きかった、ネット広告取引の記事

 前回、以下の記事を投稿したところ、私の思った以上に反応があった。

急速に成長している、ネット広告の取引は、会計的な視点での、「会計監査」が不十分であり、日本のネット広告取引では、実際に広告の水増し請求事件が起きているという記事であった。
 このことについては、広告主の宣伝・広告関係者も問題と考えおり、2019年には、「公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会(JAA)」が、「デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言」を発表している。

 広告・宣伝の担当者が、現場でアドフラウドへの対応などを行っているが、私の考えでは、この問題は、広告・宣伝担当者だけで解決できる問題ではないと考え、前回の記事では、会計・財務の方へ記事を書いたのである。

 今回は、この話に続きがあることを、お伝えしたい。それが、「リテールメディア」という概念の登場である。

広告主が、広告主に、広告の水増し請求をする可能性が

 前回の私の記事では、

インターネットの広告は、広告主が、インターネットの媒体社に広告を発注し、バナー広告やキーワード広告が、媒体社のWebサイトで掲載される。そして、広告配信期間が終わると、媒体社のWebのログデータなどから、配信回数やクリック数の報告を受けて、広告主は、媒体社に広告費を支払う。問題は、この文章中に、「広告主」「媒体社」以外が登場しない。

https://comemo.nikkei.com/n/n0e33c25a7bc1

と、ネット広告の問題を、「広告主」「媒体社」という登場人物で説明を行った。
 ところで、この「媒体社」という定義が、インターネットの世界では、柔軟になる。それは、インターネットでは、誰でも媒体社になれるのである。例えば、広告主が公開しているWebサイトも、媒体である。つまり、インターネットでは、「広告主も媒体社」になっているのである。
 これに目を付けた概念が、「リテールメディア」という言葉につながる。

日経クロストレンドには、上記のように記事をまとめているページがあるくらい、注目の単語である。リテールメディアは。

この記事にもあるように、実際に日本でも取り組みが開催され始めている。

 リテールメディアの一つの簡単な例は、A広告主のWebサイトに、Bという広告主が広告を掲載するモデルです。この時、広告を出稿する、Bという会社は、A広告主のWebサイトに訪問しているお客様は、私たちBという会社の製品にも興味があるだろうと予測をして、広告を出すのである。
 この取り組み自体は、以前から実際のお店では良くあった。例えば、「お肉」のコーナーには、「焼き肉のたれ」が陳列されている。「ボディーソープ」の横には、「ボディーソープ用のタオル」が並んでいる。そのような、店舗の商品陳列が、Webサイトに実装されただけと考えれば、確かにリテールメディアの取り組みは、普通に思える。
 ところで、ここで問題が起きる。リテールメディアのビジネスで、広告費を請求する、前述の例ではAという会社の、広告配信レポートは、正しいのだろうか?そして、Bという広告を発注した会社は、広告費の支払いに足りるだけのレポートをAから受け取れるのかという疑問だ。
 例えば、リテールメディアを運用しているAという会社は、ページの変更を行う時に、Aの会社の社員がサイトを訪問するだろう。そして、Bの会社が掲載している広告バナーの動作確認のために、バナーをクリックするだろう。これは、広告を出しているB社からすると、サイトの訪問回数も、バナー広告のクリック数も、水増しされたと感じるのだろうか?
 そして、最大の問題は、水増しの数が、実際には測定できない点である。
 結果、リテールメディアの取り組みによって、広告主が、広告主に、広告の水増し請求をする可能性があるのだ。

関係者での議論とコンセンサスが重要

 これらの、ネット広告の取引に関する問題は、ルールの問題、IT技術の問題など複数の要素が関係しており、実は100%の解決策はないかもしれない。しかし、問題を先送りすることなく、関係者での議論が必要だろう。そして、そのためにも、実際に存在する広告配信サーバーを、第3者による監査や確認を行い、実際に水増し請求は、起こりうるのかを確認し、その問題にどのように取り組むのかのコンセンサスと、ロードマップ作りが必要な時期に来ている。
 このような問題で、一番大きな問題は、このアドフラウドの知識がない人が、無知のまま、大きな広告取引事件(事故)を起こしてしまう可能性があることだ。

 アメリカでも、この問題には、長い時間かけて、取り組んでいる。日本でも、きちんとこの問題に、どのように向き合うのかを、決めないといけないだろう。

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