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 先日、自分の素朴な疑問やモヤモヤを、文字にしてくれた記事をみつけた。こんなに感染者数が少ないはずなのに、なぜ称賛の声は少ないかの仮説や、考えられる背景をまとめた記事だ。もちろん、専門家の方々や、政策の意思決定者の方々が検証、今後のシュミレーションを行なっている最中だろうし、私が何かを言うような立場ではない。でも、この記事を読んだ時に、自身が専門とする経済分野に対する素朴な疑問ともリンクした。

ウイルス学者や感染症の医師といった新型コロナ対策のプロが集う「コロナ専門家有志の会」のメンバーの1人が5月中旬、緊急事態宣言の一部解除を前に発した言葉が印象的だった。「感染者は確実に減ってきた。ウイルスを封じ込めているようだ。しかし、いったい何がこんなに効いたのか。よくわからない」

*経済対策への素朴な疑問

 これからWithコロナの継続により、緊急事態宣言が解除されたからといって、景気が一気に回復するわけではない。著名な経済学者の中にも、今後の日本経済はV字景気回復でなく、U字景気回復になっていくだろうと解釈できる見解も出てきている。となると、雇用の流動性が米国に比べて低い日本は、米国のように一時的の失業者を大量にだすインセンティブにもなっただろう米CARES法のような仕組みを導入するのは相応しくないだろう(注1)

注1:

https://research.stlouisfed.org/publications/economic-synopses/2020/04/17/unintended-consequences-of-coronavirus-related-unemployment-insurance-tax-laws/

 他国の政策を真似することなく、しかし、迅速にスピードを持って雇用対策なり、経済対策が矢継ぎ早に政策意思決定者へのニーズが高まってる‥。そうなると、時間的余裕がない中での政策ということもあり、実はあの時の政策は失敗だった、これは成功だったというモノも出てくることもありうる。

 例えば、米国では、景気刺激作の一環として、国の総需要を喚起するために配布したポイント制度も、実は需要の先食いに終わっただけであり、税金の効率的な使い方ではなかったという報告がなされ、政策に反映されたことがあるというのを聞いた。民間企業ですら、過去を振り返り、あれは間違った企業戦略だったという反省やケーススタディーは山ほど聞く。もちろん民間企業と国の運営では、意思決定の構造に違いはあるが、政策でも同様のことが起きていても不思議ではない‥。

 つまり、私の経済対策への素朴な疑問とは、「過去の政策の検証とフィードバックは、意思決定者にされているのかな?また意思決定者にとって、そうしたフィードバックを反映するようなインセンティブ設計になっているのかな?なんとなく、なぜかあの政策で景気回復したね的に終わってないかな?過去の検証をすれば、未来に更に活かせるのに‥」である。実は、この疑問に対してのムーブメントが海外では起きつつある。

*EBPMの流れ

 それは、「EBPM」という科学的エビデンスに基づく反省と、検証、施策立案。アメリカやイギリスでは税金の効率的な使い方を促すために取り入れられており、日本でも少しづつ動きつつある。しかし、当事者の研究者に話を聞くと、一国の合理性と、政策意思決定者の合理性が合致しないことも多々あり、科学的検証だけでなく人間くさいネゴシエーションも必要になる場面が多いとか。私も、ある省庁が主催するEBPM活性化の研究会に参加したことがあるが、各ステークホルダーが目指す合理性の違いを考慮することは、何百という目的関数が組み合わさせっている感じで、目が回りそうになった。


 今後、財政出動がより増えることが望まれるし、そういうニーズが高まると考えられる。でも、その時に重要なのは政策の金額ありきでなく、未来に活かすためのEBPMの実行なのかもしれないし、ガバナンスなのかもしれない。日本よ、アジアよ、世界よ、よりよくなるよう、私も少しづつブラッシュアップを重ねます!


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

応援いつもありがとうございます!


崔真淑(さいますみ)

(冒頭のイラストイメージは、崔真淑著『30年分の経済ニュースが1時間で学べる』(大和書房)より引用。無断転載はお控えください)



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