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Netflix再考‐日本アニメの変化 アヌシー映画祭から

 6月10日から6月15日までフランスで開催されたアヌシー国際アニメーション映画祭にいってきました。アヌシーは最も歴史が古く、最大規模のアニメーション映画祭として長く知られてきましたが、近年はハリウッドの大作映画や日本アニメを積極的に取りこむことで、世界のアニメーション業界で圧倒的な存在を誇っています。
 今年はゲスト国に日本が選ばれました。日本作品が多く上映され、企画セッションや話題も豊富でした。これも映画祭の日本取り込みの一環でしょう。

 新しいものを次々に取り入れるアヌシーの先進性は、IT分野にも及びます。2019年にもうひとつ大きく印象に残ったのが、Netflixの急拡大です。世界で契約世帯1億4000万超、実写からドキュメンタリー、アニメーションまで、オリジナル番組も続々手がける巨大映像配信のプラットフォームです。
Netflixのアヌシーへの本格参入は、昨年からに過ぎません。ところが今年はコアファン向けの「ANIME」とファミリーキッズ向けの「Animation」のふたつに別れたスタジオ紹介、シリーズ番組『エデン』と初のオリジナル長編アニメーション『Klaus (クラウス)』の制作工程の紹介と、4つ大きなセッションを開催しました。
 またクリスマスが舞台となる『Klaus (クラウス)』に合わせて、等身大の巨大なスノーボールが街の公園に出現しました。スケートリンクを借り切って真夏に冬を再現するパーティーも開催するなど目を惹く仕掛けも盛り沢山です。

 Netflixがアヌシーに力をいれるのは、3週間前に同じくフランスで開催されたカンヌ映画祭と対立して、参加をボイコットしている反動もありそうです。
 しかし同時に、Netflixの番組編成の中で「アニメーション」の役割が大きいことも理由と思われます。さらにアニメーションの中で、日本アニメをかなり重視しています。
 アヌシーの「ANIME」セッションでは荒牧伸志、神山健治の両監督による『ULTRAMAN』第2シーズン決定、CG版『攻殻機動隊』の情報が目玉でした。「Animation」のほうでも日本のアニメスタジオのアセンションによる『怪獣少女ガウ子』がメインタイトルのひとつ。会場での先行上映では、会場から大きな笑いと喝さいが巻き起こりました。

 日本アニメは華々しい一方で、Netflixの考える「ANIME」がより明確になり、それは日本が考える「アニメ」と異なることも見えてきました。
 ひとつは単独セッションが設けられた『エデン』です。Netflixアニメ部門が企画段階から関わる肝いりプロジェクトです。監督は入江泰浩、キャラクターデザインに川元利浩、脚本にうえのきみこ と、日本のトップクリエイターを起用します。ところがプロデュースは米国で、アニメーション制作の現場は台湾の有力スタジオCGCGです。それ以外のスタッフも世界中に散らばっており、Netflixは本作においてダイバーシティ(多様性)を強調します。
 もうひとつはNetflixとフランスのアニメーション教育の名門校ゴブランとの提携です。プロジェクトのひとつは、ゴブランの学生をNetflix日本オフィスに派遣するものです。ここでも文化交流、多様性の促進というNetflixの価値観が窺われます。

 海外では「ANIME」と呼ばれる日本アニメは、日本から見れば日本固有のもの、それゆえに強さを発揮すると思いがちです。ところがNetflixにとっては日本で生まれた映像ジャンルで、それは世界中の才能を注ぎ込むことで多様性を持ちうるものです。
 これは日本アニメが、Netflixによって変えられていくようにも見えます。それが日本にとってよいことなのか、悪いことなのかは、かなり意見が分かれそうです。
 ただ国内では人口減により市場が縮小し、一方で急速にアニメーション制作のコストが上昇しています。日本のアニメ業界は多かれ少なかれ、海外ビジネス、コラボレーションを念頭にいれなければ成り立たない時代になっているのは間違いありません。Netflixは日本と海外のつながりかたの可能性のひとつを提示しています。

 海外の環境も大きく変わっています。これまで海外の日本アニメビジネスは、何十年も日本アニメを専門とする現地の配給会社、専門家の小さくて密なコミュニティで成り立っていました。
 しかし「ANIME」を中心としたヤングアダルト向けのアニメーションのジャンルが発見され、それが大きな市場を形成することが巨大企業に認識されるようになりました。Netflixはそうした巨大企業の最初のプレイヤーに過ぎないのかもしれません。
 日本特集に盛り上がった2019年のアヌシーでしたが、5年後、10年後の日本アニメは大変貌を遂げているかもしれない。そんなことを考えさせた今年のアヌシー国際アニメーション映画祭でした。

* トップ写真 Netflix『エデン』セッションから。
左からリードコンセプトデザイナーChristophe FERREIRA氏、入江泰浩監督、Netflixチーフプロデューサー(アニメ)櫻井大樹氏

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