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海外投資家が着目するスキーリゾート地の再開発事業

 新型コロナは外国人旅行者のインバウンド景気を一変させたが、欧米の感染者状況と比較すると、日本は「安全な国」と捉えられている。パンデミックが収束に向かえば、日本人気が再燃する可能性が、海外の不動産業者から注目されている。

その兆候として、北海道の倶知安町(くっちゃんちょう)は、コロナ禍でも令和3年の地価上昇率が前年比25%(地価公示)で、全国の住宅地で上昇率トップとなっている。倶知安町は、外国人から人気のニセコリゾートに隣接している地域で、海外業者による土地買収が過熱している。

ニセコは15年程前から、雪が降らないオーストラリア人から人気のリゾート地として火が付き、その後は中国や台湾からの旅行者も増えていたが、海外企業が推進しているワーケーションは、コロナ収束後も定着していくと予測されるため、日本のリゾート地は、地価の割安感がある一方で、アジア圏の中でもブランドイメージが高いため転売しやすい、というのが海外投資家の考えである。

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北海道倶知安町の地価推移(土地価格ドットコム)

【世界からみた国内別荘地の割安感】

 ロンドンを拠点とした国際的な不動産プロバイダー、Savillsのレポートによると、コロナ禍でも三密を避けて、夏と冬の両方が楽しめる山岳リゾート(スキー場がある地域)の需要が高まっており、温暖化対策の避暑地やリモートワークの拠点としても人気がある。そのため、富裕層をターゲットとした高級リゾート物件の価格は、世界的な上昇が見込まれている。

Savillsが世界のスキーリゾート地を調査した不動産相場のランキング(2021年)では、フランスのクールシュヴェルが1平米あたり25,300ユーロ(約328万円)と最も高く、2位が米国のアスペンで22,100ユーロ(約287万円)、3位がフランスのヴァルディゼールで20,700ユーロ(約269万円)という相場だ。

対して、日本で唯一ランキングされたニセコは、32位の1平米あたり7,900ユーロ(約102万円)で、世界の別荘相場からみると、かなり割安な水準といえる。こうしたデータが、海外の不動産投資家が日本の別荘地に注目する根拠となっている。

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THE SKI REPORT(Savills)

【山間地にシフトする富裕層不動産市場】

 米国でも、富裕層は新型コロナの感染リスクを避けて地方に長期滞在する傾向がみられるが、人気となっているのは、夏と冬の両方でアウトドアレジャーが楽しめる山間地に集中してきている。コロラド州の標高2,500mにある人口7000人の町、アスペンは米国で最も高級な別荘地として人気が高く、不動産相場はニューヨークと同水準の価格帯で取引されている。

富裕層向けの不動産コンサルティングを手掛ける、Knight Frank(ナイトフランク)によると、2020年以降は、家族の安全とリモートワークを目的とした別荘の購入需要が、ニューヨーク、ロンドン、パリ、香港などの大都市に住む富裕層の中で高まっている。

これまで、別荘の候補地としては、海岸沿いと山間部の人気が半々だったが、コロナ禍では、できるだけ人口密度が低く、広大な土地のある一戸建てが安全と考えられていることから、夏は釣りやゴルフ、冬はスキーを楽しめる山間部の人気が高まっている。スキーリゾート地の中でも、スキー場の数、スキーを楽しめる期間、空港や高速道路のアクセス、地元賃貸物件の利回り、食や文化イベントの開催状況、ネット回線の速度などによって、人気エリアが決まっている。

Ski Property Report 2021(Knight Frank)

こうした世界のスキーリゾート人気を踏まえると、日本のスキー場は1990年代から衰退したままで、地価も安値で放置されている。そこに海外投資家がチャンスを見いだすのは頷ける行動であり、ニセコ以外でも、コロナ社会に適応したリゾート開発が進む可能性はある。ただし、海外資本に依存したリゾート開発は、為替レートの変動によって、資金繰りが当初の計画から狂いやすいことが、リスク要因として指摘されている。いずれにしても、日本のリゾート再生を外国人投資家に依存する構図が、コロナ禍以降は鮮明になってきている。

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