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平均値はもともと大した意味がないが、オタク市場においてはさらに意味がない

2019年1月30日のItmediaの記事より。矢野経済研究所がオタク市場の調査結果を発表した。

その調査結果によると、「分野別に見ると、1人当たり年間消費金額は「アイドル」が10万3543円で1位。次に「メイド・コスプレ関連サービス」(6万8114円)、「鉄道模型」(6万3854円)が続く。アイドルオタクは、2016年、17年度の調査でもトップを占め、3年連続で1位だった」という。

しかし、この調査には大して意味がない。なぜならば、オタク市場は、一部のロイヤルユーザーが、数千万円、数百万円使い、大半のオタクは数千円、数百円しか使わないからだ。オタク市場は、一部の強烈な課金ユーザーにより、市場が支えられているのである。

よく20%の顧客が80%の売上を構成する「2-8の法則」が顧客ポートフォリオ分析で語られるが、オタク市場では、これが更に極端になる。

市場規模や消費額の肌感覚を持つ

僕が平均に意味がないと思ったのは、「1人当たり年間消費金額は「アイドル」が10万3543円」というところだ。これがオタク市場で1位の平均額?

僕は今でこそ、ラーメンの消費量が年間100杯程度に減少しているが、全盛期は年間500杯ほどラーメンを消費していた。単価を800円で考えると、500×800=400000円である。500杯というのは、コアなラーメンオタクとしては序の口で、年間40万円のラーメン消費額もコアオタクの入り口に過ぎない。こういう肌感覚があれば、「1人当たり年間消費金額は「アイドル」が10万3543円」という平均値の意味のなさが、肌身に染みてくる。

ビジネスを俯瞰するうえでは、市場規模の感覚も持ちたい。

日本最強の業界は自動車関連。次に建設と、医療、生命保険。家電小売などは消費者視点だと大きく見えるが、意外に小さい。こういう俯瞰の肌感覚の醸成もとても重要だ。

「平均値」というのは、特徴ある市場やセグメントを、丸め込むことにより、もっとも特徴を無くす値である。名だたる大企業で会議に参加していると、一見頭がよさそうなビジネスパーソンが「平均値」を多用したグラフをたくさん見せてくれることがある。

そういう時は、基本的に「ふーん」「で、何が分かるの?」「何が言えるの?」「どんな発見があったの?」と聞くようにしている。しっかりした洞察を述べてくれるビジネスパーソンには、めったに出会えない。

多くの場合、「平均値」は、この世に存在しない平均的人間を作り上げる。この世に存在しない人間なんだから、それを前提に議論をしても、ほとんど意味はない。「平均値」で議論するくらいなら、生データを見て、この人はどんな人で何を考えているんだろうと、顔を想像しながら議論をするほうが、よほど生産性の高い議論をできるはずだ。


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名古屋商科大学ビジネススクール 教授。専門は、経営戦略、マーケティング、デジタルマーケティング、ラーメン。日経COMEMOキーオピニオンリーダー
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