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世界的に是正されるジェンダー差別と女性の賃金相場

 これまで不平等な賃金条件の中で働いてきたのは、女性の割合が高く、それを是正していくことは社会的な課題になっている。企業が男女の賃金格差を放置していると、ジェンダー差別として国際的な非難を浴びるリスクも高まっている。

雇用の平等が重視される欧米でも、男女の間には歴然とした賃金格差があるのが実態で、同一賃金国際連合(EPIC)によると、世界では男女で平均20%の賃金差が生じている。法律的には、男女差別が禁止されている中でも、賃金に格差が生じている理由としては、女性は家事や育児によって断続的な就業パターンになっていることや、社会的地位の高い職種では、いまだに男性の占有率が高いことなどが挙げられている。

その中でも、日本の男女格差は非常に大きく、男性の平均年収が540万円に対して、女性は296万円と、1.8倍もの差が生じている。女性は勤務歴が長く、経験や専門知識を積んだとしても、年収が300万円台から伸びていかないのが特徴で、女性役職者(課長以上)の割合も12.5%と、世界の平均値(約30%)よりも低い。

世界経済フォーラム(WEF)では、「The Global Gender Gap Report 2020」の中で、男女格差の度合いを示したジェンダーギャップ指数を公表しているが、日本は153ヶ国中で121位という不名誉な結果になっている。この問題を解消させることは、企業にとっての課題であり、給与制度の変革を支援する人事管理機能の開発は、新たな事業テーマになっている。

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世界経済フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数2020」を公表

 性別や国籍に関係なく、同一価値の労働には同一の報酬を払う原則は「Pay Equity(ペイ・エクイティ)」と呼ばれて、賃金格差禁止の法令化も各国で進んでいる。企業側では、意図的に差別をしたわけではなくても、結果として、人事の評価や給与査定に偏りが生じていることも多く、それを客観的に分析できるシステムへのニーズが高まっている。

世界で最もジェンダー差別が少ない国として評価される北欧アイスランドでは、主要企業が「Pay Analytics」という同一賃金分析のクラウドシステムを導入して、格差の修正を行っている。このシステムは、経営学と統計学の博士号を取得している教授チームがアイスランド政府の支援を受けながら、2016年から開発を進めているものだ。

Pay Analyticsは、企業内で各従業員に支給される給与内容をAIがモニタリングして、職種、職務、教育レベル、などグループ別の給与データや、外部の調査会社がリサーチした給与統計との間で交差検証を行い、給与格差の判定をすることができる。この分析は、単純に男女の給与差を指摘するのではなく、仕事の内容によって「男性社員の昇給が適している職務」と「女性社員の昇給が適している職務」を判別して、それぞれ最適な賃金額を提示することも可能だ。

人事のマネージャーは、当月に支払う総給与額(総人件費)の予算を入力しておけば、従業員間で生じている「仕事の内容と報酬額」の偏りを、AIが自動的に修正して、最適な賃金の分配プランを作成することができる。

AIに賃金分析を任せることの利点は、人間ではどうしても主観で偏りが生じてしまう給与の算定内容を客観的に見直せることと、従業員から給与不服の申し立てがあった時に、ペイ・エクイティに反していないことを立証するのに役立つ。

Pay Analytics

アイスランドでは、男女の同一賃金を義務付ける最初の法律を1960年代に制定しており、時代と共に法改正を重ねることで、女性の社会進出を支援してきた歴史がある。そして2017年には、世界初の取り組みとして、25名以上の従業員を雇用する国内企業に対して、男女同一賃金を払っていることの証明書を示すことを義務づけた。

具体的には、政府から認定された機関の監査を受けて合格すると「同一賃金証明書」が発行される。この監査は3年毎に受ける必要があり、証明書を取得、更新していない企業に対しては、1日あたり最大で50,000ISK(約4.2万円)の罰金が科せられるという厳しいものだ。

この認証制度は、国際的なISO規格に則って開発されており、他の国からも世界初の男女同一賃金規格として指針にされている。そのため給与の平等性を測る分析ツールのニーズも世界的に広がっており、「Pay Analytics」は30ヶ国以上の企業に導入されている。

■Pay Analyticsの導入企業例

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