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5人に1人が耳から読書、7年連続2桁成長の米国オーディオブック市場

最近ではポッドキャストによる耳からのメディア消費が話題になりつつありますが、同時に最近改めて気づいたのが世界的にオーディオブック市場が急成長していることです。耳からの情報収集、スマートスピーカーの登場による読書体験など、今後どのような変化が訪れるのか備忘録的に気になった点をまとめてみたいと思います。

・米国では5人に1人がオーディオブックを聴いている(ピューリサーチ)
正直ここまでの変化が起きているとは、今回の調査結果を目にするまで知りませんでした。依然紙の本が65%と最も親しまれている形態ではありますが、米国ではオーディオブックによる読書体験が右肩上がりの20%に達し、25%の電子書籍をいずれ追い抜くのでは、とも感じさせる急成長ぶりです(こちらの調査は米世論調査団体大手のピュー・リサーチ・センターにより今年2月に米国在住の18歳以上の成人1,502人に対して電話インタビューにて行われたものです)。

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・米国オーディオブック市場は過去7年間連続で2桁成長、10億ドル(9.4億ドル=約1,025億円)規模に
上記ピューリサーチの結果を裏付けるように、今年の7月にAudio Publishers Association(APA)により公開された調査結果によると、2018年のオーディオブックの売り上げは累計9億4000万ドル(約1,025億円)に達し、前年2017年から24.5%の増加となっています。販売冊数はさらに伸びており、2017年から27.3%の増加だったそうです。

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・イギリスでのオーディオブック市場は前年比43%増、6900万ポンド(約96億円)に。
イギリスでのデータを見ても同じようにオーディオブック市場が急成長していることが分かります。驚いたのは電子書籍の売上が2014年以来20%の減少を記録していることです。背景にはポッドキャストブームがあること、そしてネットフリックスやフェイスブックやユーチューブなどのSNSの広がりがあると専門家が指摘しています(英国の紙の書籍市場もゆるやかに成長していたにも関わらず昨年5年ぶりに減少(5.4%)、2018年は29.5億ポンド(約4,136億円)規模に)。

Spotifyがポッドキャストに注力するきっかけは2017年当時、とあるドイツの音楽レーベルがドイツ内のほとんどのオーディオブックの権利を所有しており、それらをSpotifyにアップロードしていることにダニエル・エクCEOが気付いたことから始まった、と先日のハリウッド・レポーターの記事に紹介されていました

どうやらオーディオブックは世界的に、そして国内でも「来ている」ようです。国内オーディオブックの配信サービス「audiobook.jp」を展開するオトバンクも今年の10月に利用者100万人を記録してますが、驚きは直近1〜2年の成長です。サブスクリプションモデルの導入、広がりという点も時代が求めるニーズに合致しているものと思われます。

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またオーディオブックを1995年から展開し、2015年に日本でのサービスを開始したアマゾン傘下の「オーディブル(Audible)」も昨年8月、新しくダウンロード販売型と新会員制度へ移行し、発表時点で海外の38カ国語22万タイトル以上にコンテンツを拡大(日本語コンテンツは1万3000点以上)し、力を入れ始めていることが分かります。

個人的にも先日「三体」という中国のSF話題作をオーディブルで聴いてみました。最初に目にした時に難しそうな印象を持っていたものの、オーディオで聴くことでとても臨場感を持って、楽しみながら読むことが出来ました(異なる登場人物の発言をナレーターが抑揚をつけながら読んでくれるのでラジオドラマを聴いているかのような感覚でした)。

大手出版社である新潮社の関連会社ピコハウスが運営する「リスボ」も月額1,620円の聴き放題のサービスを展開するなど、既存の出版社からもコンテンツのオーディオ化が進んでいるようです。

まだ日本語でのコンテンツの数と種類が少ないという点は否めないものの、3年後、5年後の読書体験を考える際、大きな変化がもたらされているであろうことは確実に感じられます。今後どのようにサービスや読書習慣が変化していくのか、とても楽しみにしています。

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