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女性リーダーの飛躍を阻む「ガラスの崖」

世界が固唾をのんだ米国大統領選の結果、2021年には、女性副大統領が誕生する運びとなった。

2008年にジョン・マケイン大統領候補のチケットに載ったサラ・ペイン(当時アラスカ州知事)候補を含め、今までも女性副大統領候補はいたものの、かつて実現してこなかっただけに、喜ばしい。

特に困難な状況で、急に女性が要職に推されることを「ガラスの崖」現象と呼ぶそうだ。うまくいったら、儲けもの。でも失敗しても、女性を推したことで、進歩的な印象を残す。その一方、やっぱり女性だから無理だったよね・・・という無言の再確認がされ、そのあとの進歩は滞留してしまう、という後味の悪い結果が伴う。

今回の選挙では、副大統領選びがバイデン候補の圧倒的な劣勢を覆すためのミッションインポッシブルな選択ではなかったため、カマラ・ハリス服大統領候補には、「ガラスの崖」要素が少ないとされている。彼女の成功を応援したい。

ところで、ここまで「積極的な」意地悪でなくても、実は「消極的な」ガラスの崖は、日本で働く女性にも日々起こりうる。私が肌で感じる「ガラスの崖」は、女性の職位が上がるにつれて組織の応援が退潮するというものだ。

30-40代でも、ある程度昇進すると、急に上位者や周りのサポートがなくなり、キャリアが滞る事例がある。これは、経営コンサルタントとして私が接する顧客企業だけでなく、実は我々外資系ファームでも起こりえる「(消極的な)ガラスの崖」だ。

なぜか?「ここまで昇進したのだから、後はお手並み拝見」という(やっかみ交じりの)視線は、男性に対しても向けられる。ただ、女性管理職にとって、特にそれまで「女性活躍」の上昇気流に乗った分、足元が崩れ落ちる不安感はより大きい。まさに「ガラスの崖」から落ちる気分だ。さらに、女性の先達が少ないため、悩みを分かつ相手がおらず、「初の女性役員として」という気負いから、孤独と焦燥が空転してしまう。

女性の昇進に見えない上限があることを表す「ガラスの天井」は認知され、ある程度退治されてきた。「ガラスの崖」はより微妙で、「ガラスの天井」突破以降に起こるため、厄介だ。

企業側は、「ガラスの崖」があり得ることを認め、女性幹部のステップアップを支援し続けることが大切だ。例えば、メンターやスポンサーは、執行役員になった途端おしまい、ではおかしい。また、女性を含むマイノリティは、無意識のうちに、分かりやすい型にはめられることが多いことも意識したい。女性にも男性と同様にいろいろなリーダーシップの素質があるはず。狭い「女性リーダー像こうあるべき」の思い込みから、活躍の場を狭めていないか、点検すると良い。

一方、「ガラスの崖」を危惧する女性は、どのように行動すべきか?もちろん王道は、サポートを求め、実績を上げ続けることだ。加えて、社内で任せられた任務の「一本道」から視線をずらし、自分の居場所を社外に広げることも有効だ。自社の常識から離れ、自分を客観視することで、気持ちに余裕が生まれる。また、社外の人脈を社内に還元して、自分の味方を増やすこともできる。このような柔軟なふるまい方は、組織のマイノリティとして育つことが多い女性ならでは、うまく出来ることも多い。

せっかく育った女性管理職が飛躍できなければ、大きな損失だ。このリスクを正面からとらえ、積極的であれ消極的であれ、「ガラスの崖」のない組織を目指してほしい。

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