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コロナ共生で変わる「対面」の意味

もはや以前のようには「対面」できない

緊急事態宣言が解除され、地域間の移動の制限も緩和されました。私たちは引き続き感染予防を心がけながら経済活動を再開するニューノーマル(新常態)の時代を生きていくことになります。

人と人との接触を8割減らさなければ感染拡大は免れない、という北海道大学西浦教授の警句は引き続き念頭に置いておかねばなりません。都内では連日50名前後の感染者が出続けており、地域間のヒトの交流が増えれば、この数は増えることはあっても、ウィルスの性質上減ることは期待できないからです。

そんな中、改めて人と人が実際に「会う」ことの意味が揺らいでいます。例えば私が勤める大学でも、コロナ禍以前は教員も学生も大学に集い、共に学ぶ風景が当たり前でした。しかし、オンラインで教育を受けられるという共通認識が拡がったことで、感染リスクやリスク回避のためのコストを考えると、「オンラインを継続したい」と願う学生も少なくありません。(自分の担当する授業でアンケートを採ったところ8割~9割の学生がオンラインを希望しています)

私も久しぶりに教室での授業を少しずつ再開してみてもいるのですが、マスクで互いに表情がわからず、開放された窓や換気扇のノイズで遠くの席の学生の声は聞き取りにくく、まだ入国が出来ていない留学生や一旦実家に帰ってしまった学生がチャットでこちらにメッセージを入れてもなかなか気がつくことができない、など以前とガラリと変わってしまった講義風景に愕然とさせられました。Withコロナ時代の教室ではオンラインで伝わらないノンバーバルな情報を遙かに上回るコミュニケーションの損失が起きています。

もちろん、実習や演習など教室に集わなければ実施できない教育もありますが、講義型の授業は教員がある程度習熟していればオンラインでも――というよりむしろオンラインの方が教室よりも充実した授業が行なえるのではないかと考えています。文部科学省も大学教育のDXを支援するプロジェクトをスタートさせるなど、大学の構造改革の契機とする動きも始まりつつあります。

大学にせよ、会社にせよ「やはりコミュニケーションは対面じゃなければ」と主張する人もいます。人と人との「ふれあい」こそが大事だというわけです。平時であれば全く異存はないのですが、遠隔地からの人の交流も生じる大学では、リスクとコストが、限定された対面交流のメリットを上回っていると言わざるを得ません。つまりバーチャル(=本質的)な意味ではオンラインこそ、より対面的であると言えるのです。

地方だからこそオンライン型の「対面」を活かすべきだ

「はやくワクチン・治療薬が開発されて元の日常が戻って欲しい」と言いたいところなのですが、そうは行かないのもまた事実です。

現在、わたしがいる新潟のNHKローカルニュースでは、しきりに就職活動の地方回帰の傾向が取り上げられています。東京など都市圏の企業がテレワークを取り入れるなか、新潟に留まりながら都市圏の企業への就職を目指す動きが出てきているからです。元々、若者が県外に流出する傾向が強かった新潟県にとってこの変化は重大です。地方からすれば、法人拠点が設けられない=法人税収入が見込めないというマイナス面はあるものの、何よりも避けたい人口減対策としてはこの流れはまずはつかまえておきたいはずです。

ニュースでは繰り返し、学生がオンライン面接に臨む姿が放送されています。採用企業にとってもわざわざ感染リスクを伴いながら都市部に出てきてもらって、注意深くマスク越しの面接を行うよりも、パソコン画面上で表情をちゃんと確認したり、グループワークでの細かな言動を知ることできる方が、よほど合理性があると考えているはずです。

これまで人件費が比較的安い地域で採用を行おうとすれば、その場所に支店・拠点が必要で、固定費が生じていました。しかし、テレワーク前提であればその必要はなく、都市部の高額な住宅・通勤手当なども削減しながら優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。ドワンゴが完全テレワークを導入したり、ここnoteもフルリモート勤務を前提とした採用を強化するようです。

このように、地方と都市の人を巡る関係が、コロナ禍を経た「オンライン化」で変化する中、私たちは「対面で人と会う」ことの意味を根本から見直さなければならない時期に来ていると言えるでしょう。実際、学生とZoomなどを用いてオンラインでやり取りをしていても、実際に会って話す以上の情報を画面共有やテキストチャットも交えながら濃密に行われています。今後、教育学の観点からも様々な検証が成されるはずですが、マスク越し・フィジカルディスタンシングを保ちながらの「対面」に比べてはるかに学習効果も高いはずです。企業としてもコミュニケーションの舞台のオンラインの比重が増すなか、そこでのコミュニケーションスキルを重視する傾向は強まるはずです。

この変化に対応するためには、私たち大人も自らのオンラインスキルを見直す必要も出てきます。私の大学でも年配の先生方が、4月に唐突に始まったオンライン講義に必死に対応されていました。「オンライン講義、意外と面白いし、学生もしっかり学んでくれている」と手応えを話してくれる先生もおられる一方で、「とにかくパソコン操作が大変で疲れる、はやく対面に戻して欲しい」とこぼす先生もいます。しかし、社会そのものがこのように変化するなか、どちらの道を進んだ方が未来の可能性があるか、答えは自明のようにも思えるのです。このことは教育の現場に限らず、自治体や企業などあらゆる人間活動に及ぶと断言してしまって良いとわたしは考えます。

※この記事は日経媒体で配信するニュースをキュレーションするCOMEMOキーオピニオンリーダー(KOL)契約のもと寄稿しており日経各誌の記事も紹介します。詳しくはこちらをご参照ください。
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note初心者です。ジャーナリスト・コンテンツプロデューサー・研究者として活動しています。詳しくはこちらで → http://atsushi-matsumoto.jp ※ヘッダー画像はうめ先生に描いて頂きました。

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