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年収よりも「お金の使い方」に左右される経済的幸福度の価値観

「高年収を稼げば幸せになれる」という価値観は、ビジネスパーソンが仕事に取り組むためのモチベーションとして長らく定着してきた。しかし、高年収者の中では、仕事に対する重いストレスを抱えていたり、経営者になれば会社の資金繰りに四苦八苦しているのが実情、というケースは少なくない。

経済的な観点からみた「幸福度」に限定してみても、必ずしも「高年収者=幸せ」とは言えないことが、各種の研究からも明らかになっている。内閣府のシンクタンク機関である経済社会総合研究所でも、幸福度についての研究を行っているが、その中でも「所得の上昇が人々の幸福度を改善するには限界がある」ことが言及されている。

一方、海外では「所得を増やすこと」よりも「お金の使い方」によって、経済的な幸福度は影響を受けるのではないかという研究が進められている。米国では、フルタイムで働く現役労働者の中でも、4人に1人は金銭についての悩みを抱えており、それが「仕事に集中できない」という能率低下に繋がっている。

金銭問題の悩みを抱えている従業員は、年収の高いグループの中も含まれており、高額の家賃や住宅ローン、クレジットカードの返済、保険の支払い、子どもの教育費などで月々の支出が増え、家計が赤字の状態に陥ることが、幸福度を下げる要因でとなっている。

そのため、企業にとっても、従業員に対して「健全なお金の使い方」を指導する金融リテラシー教育が、新たな福利厚生サービスとして重要視されるようになっている。従業員向けの金融リテラシー教育は、「Financial Wellness Programs(経済的健康プログラム)」として、各種のサービスやツールが開発されてきている。

米国で「Financial Wellness」の提唱者としてラジオやテレビ番組でも活躍する、金融作家のピーター・ダン氏が経営する「Pete thePlanner」では、「Your Money Line」という、法人向け金融教育のプラットフォームを開発している。同プラットフォームと契約している企業の従業員は、会社には知られずに、自分の金銭的な悩みを電話とメールで金融専門家に相談しながら、解決策のアドバイスを受けることができる。

また、メンバー専用サイトの中では、毎月の収支状況を管理できるダッシュボード機能があり、年齢やライフステージ別にみた平均値との比較で、支出の内容が偏っていたり、老後までに貯める目標額に対して、毎月いくらの貯蓄をしていけば良いのか、などを把握できる。

日本でも、キャッシュレス経済の到来や、年金・退職金制度の改革により、お金の使い方や貯蓄、投資の手法も急速に変化している。その中で、経済的に幸福度の高い人生設計を築くには、新たな金融知識を習得する必要が生じている。

マイホームは持ち家・賃貸どちらが良いかの判断にしても、仕事の内容や働き方のスタイル、住んでいる地域、家族構成などによって異なるため、自分たち家族にとって最適な資金の使い方を考えていく必要がある。日本の一般世帯(30~40代)では、手取りの世帯収入に対して、ローンの支払い額は15%前後が平均値となっている。それが25%を超してくると、毎月の生活は苦しくなり、幸福度は下がっていく。

日本人がこれまで「一般的な常識」として信じてきた金銭感覚は、これからの時代にも通用するとは限らず、自分の収入がこれから増えていく見通し(逆に減っていく見通し)も想定した上で、健全なお金の使い方や貯蓄ができる知識を習得することは、人生の幸福感を高めることに役立つものになるだろう。

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