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Co-creation(コクリエイション)を実現する役割

Wikipediaは、多くの参加者を巻き込みながら、正確かつバイアスのないコンテンツを作ることに成功しています。しかし、このように多くの編集者(参加者)が関われば、必ずしもコンテンツの質が上がるという訳ではなく、特定の条件を満たしている場合にのみ、コンテンツの質が向上します。この研究(Harnessing the Wisdom of Crowds in Wikipedia: Quality Through Coordination_Kittur, Kraut(2008))では、Wikipedia が、コンテンツとして含まれるべき内容の範囲や、文調など、 多くの人と共通の価値観・認識を有している点に注目し、どのように個々人の執筆活動が協調 されている(Coordination, 共通の価値観のもとでまとめられている)のかを調査しています。

 Wikipedia では、2 つの協調活動が行われています。

1)Explicit Coordination 「明確な協調活動」 ディスカッションページなど、参加者同士がコンテンツについて、その表記の方法や説明の仕 方などの他の参加者と議論すること。特に、コンテンツが書かれる初期段階でこの協調活動は 重要です。

2)Implicit Coordination「暗黙の協調活動」 コンテンツとして取り上げられるべき事項の範囲や方向性を定めたり、多くの個人による執筆の文体を揃えたり、といった少数の参加者がリーダー的な役割を果たして個人の執筆をまとめていく活動。(下図において、黄色と赤で描かれているのが、implicit coordination を行ってい る人の編集活動。Music of Italy というページでは 2 人の執筆者が大きく関わっており、 TUF-KAT というユーザーは初期の段階で方向性を決めるのに尽力し、Jeffmatt というユーザ ーは個々人の執筆活動をまとめる際に、中心な役割を果たしている。彼らの編集行為は、他の 参加者に相談されながら、行われるのではない。)

Figure 4. User activity for the “Music of Italy” article.

また、時期によって重要とされる協調活動は異なります。

ステージ A(初期段階):コンテンツの内容の大枠などを少数の個人が設定します。Implicit Coordination が重要。Wikipedia では新たにコンテンツを執筆する人に対して、「他の参加者 が中身を広げる際に必要となる情報を初めに提供すること」を求めます。

ステージ B:決められた構成に基づいて、多くの人が情報を投稿して、参加します。Explicit Coordination が重要。大きすぎない集団が複雑な事象を話すときに、最も有効。集団が大きくなりすぎると質が下がります。

ステージ C:本当にわずかな参加者によって、全体を統一させるための編集作業が行われます。Implicit Coordination。

ステージ D:C の段階での Implicit Coordination に対して、他の参加者に分かる形(Explicit) で フィードバックが行われます。ただし、ステージ Bで一般的な個人による参加が行われていたのとは異なり、このとき Explicit Coordination として参加する人はコンテンツに深く関わっている人のみです。

Evolution of topic structure for the “Music of Italy” article. Letters above the topic structures correspond to the beginning

of the periods in Figure 4: creation of the article (A), the end of TUF-KAT’s initial editing (B), the beginning of Jeffmatt’s editing

(C), and the end of Jeffmatt’s editing (D).

コミュニティをデザインする上で、こうした役割を担う人材の積極的な参加を促すための魅力的な世界観づくりと、それを適切に伝えられるような表現方法に時間を割くことは、とても大切なことだと思いました

Harnessing the Wisdom of Crowds in Wikipedia: Quality Through Coordination(Aniket Kittur, Robert E. Kraut , 2008)

http://repository.cmu.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1098&context=hcii

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