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エリート人材が考えるウォーカブルシティに住むことの価値

先進国では、高齢者への配慮、健康対策、エコの観点からも、街のウォーカビリティ(歩きやすさ)が重視されるようになってきている。実際に、歩きやすい街(ウォーカブル・シティ)には、他地域からの転入者や、観光客も多いという経済効果が確認されている。高齢者に限らず、若者の中には、運転免許を持たない者も増えていることから、都市のウォーカビリティを向上させることが、地域経済の発展や不動産価値の向上に繋がりはじめているのだ。

自動車を使わずに生活できる街(ウォーカブルシティ)には、高学歴で高年収のエリート層が集まることが複数の調査から明らかになっている。その理由は、徒歩圏のインフラが整った地域で生活をしたほうが、健康、時間、お金などの面で利点が多いという、理にかなったものである。そこで、地方都市でもウォーカビリティへの投資を推進しはじめている。

《エリート層が考えるウォーカブルシティの利点》
○マイカーにかかるコスト(燃料代、駐車料等)を節約できる。
○自動車が少ないため、周囲の空気がきれいで環境が良い。
○徒歩や自転車で生活するため健康に良い。
○長時間の通勤にかかるストレスが軽減できる。
○自動車に乗らなければ飲酒ができる、人との交流がしやすい。
○徒歩圏は人口密度が高いために、周囲の小売店が潤う。

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こうした流れの中で重要なのが、各地域の“住みやすさ”を客観的に把握するための指標で、それが不動産の相場や賃貸物件の入居率にも影響してくるようになる。

ウォーカビリティの条件でいえば、道路幅の設定、自転車専用レーンの有無、徒歩で移動できる公共施設までの距離、等々が判断の材料になるが、街の環境は日々変化しているため、それらのデータを定期的に調査してスコア化するビジネスが登場してきている。

【歩きやすさを採点するウォークスコアの仕組み】

米国でウォーカブル・シティの仕掛け役となっているのが、「walk score(ウォークスコア」という指標で、不動産情報サイトを運営するRedfin社が展開する事業部門である。

都市計画の専門家や学者などによって構成される判定委員会を設立して、“歩きやすい街”の基準を作り、各地区のスコアを算定しているが、その方法には特許が取得されている。

各地点から、食料品店、学校、公園、レストラン、公共施設などへ徒歩で行けるまでのルート数や所要時間を集計してスコア化しており、徒歩5分以内が最高得点、徒歩で30分以上がかると点数が与えられない。その他に、街の人口密度や道路の仕様なども、スコアの分析対象となっている。

ウォークスコアは、各地域の不動産情報とも連携しており、同じ都市の中でもスコアの違いによって、徒歩での生活がしやすい地域と、不便な地域を判別できるようになっている。賃貸アパートや住宅購入を検討している人にとって、不慣れな地域の利便性を点数で確認できることは便利であり、物件情報へのアクセス数を増やすことにも繋がる。

同サイトでは、米国、カナダ、オーストラリアの3,000都市と、その近郊地域(1万ヶ所)でウォークスコアを採点しており、「歩きやすい都市ランキング」を発表している。このランキングは他のポータルサイトやメディアでも紹介されて、不動産の相場(地価や賃料)にも影響を与えている。

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いまニューヨークやシリコンバレー周辺で家賃が高騰しているエリアは、ウォークスコアが高い地点とリンクしている。ただし、既に家賃が高い地域に住むことの費用対効果は低くなってしまうため、地方都市の中でもウォーカブルシティとしてのスコアが高い地域を探すことが、ハイテク企業オフィスの移転先やフリーランス人材の移住地としても注目されている。

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