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日本企業でDXが進まない構造的な課題と、世界をリードしていく明るい未来。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉がバズワード的に広がってだいぶ経ちますが、皆さん、DXは進んでいますか?

・・・どうやら、なかなか苦労している会社さんが多いように見受けます。

今日は、DXが進んでいない理由について、その根本原因を探りつつ、どうやったら日本がリードして行けるかという、明るい未来についても触れていきたいと思います!!


背景:過度に難しいものになってしまったDX

DXについての議論を見ていると厳しめの論調が目立ちます。

「ITツール導入による効率化だけでは、IT化であってDXではない」
「ビジネスプロセスを全て変革し、顧客に価値を提供してこそDXだ」

こんな感じで、「デジタル化すればいいってほど甘くはないぞ」という主張がよく見られます。

経産省の資料では、IDCの定義が記載されていて、こう描かれています。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォームを利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること(IDC)

ハイ。分かります。こうしたら良くなるのは、よーく分かります。

しかし、話が大きくなりすぎて、難易度が高くなりすぎてるんですよね。
「理想はわかるし、正しいのもわかるけど、何をやったらいいの?」と。


現状①:日本企業の現実はどうなっているのか

何をすべきか明確でないまま、経営陣からは「DXをやるのだ!」と号令がかかるので、部門ごとにできることを検討することとなり、こういう議論が始まります。

営業:顧客をデータ管理できるように顧客管理ツールを入れよう
人事:ジョブ型にしてデジタルがわかる専門家を採用しよう
法務:契約書を電子化しよう

こんな感じで、部門ごとにDXを目指して動き出します。

しかし、皆さんご認識の通り、これでは部署ごとにIT化が進むだけで、「ビジネスプロセスを変革して顧客への提供価値を向上させる」といった本来のDXの目的までは果たせません。

しかし、それでは足りないと分かっているけど、どうしても部門別の縦割りでしか動けないというのが今の日本のビジネスにおける現実なんですよね。

日経の記事でも、「縦割りの組織構造が、DXによる生産性向上を制限しているのだ」という立本教授の話が掲載されています。


現状②:他国と異なる日本のカルチャーの特性

これがなぜ起きているのかを考えた際、あるとき、日本の組織には構造的にDXが進まない理由があるということに気づきました。

それは、このマップを見た瞬間でした。

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日経ビジネスの2021/08/20の記事より)

ユニークなのが日本だ。アジアの多くの国と同じように日本のリーダーシップは階層主義的だ(図の右半分)。上下関係がはっきりしていて、部下が人前で上司に意見することはめったにない。リーダーシップが階層主義的な国の多くは、意思決定はトップダウン型になる(図右上)。迅速で柔軟、一度決まったことでもすぐに変更や修正がある。中国やインドがこうしたケースだ。一方、日本の意思決定は合意型だ(図右下)。組織のなかで合意を積み上げていく。意思決定に時間はかかるが、ブレずに迅速に実行される。

と、記事にあります。

階層を重視する組織の多くは、トップダウンで意思決定をして縦のレポートラインを中心に組織運営を行います。(アジアの多くの国がこれに当たります)
一方、平等主義でフラットに仕事をする組織の多くは、立場に関係なく意見を出し合いながら合意形成して組織を運営します。(これはヨーロッパ、特に北欧に顕著に見られます)

日本は特殊で、縦の階層を重視しながらも、合意形成もしながら組織を運営するという他の国にはない位置にプロットされています。

これがどういうことかというと、たとえば、ある提案を上司であるA部長に持っていっても、「ちょっとB本部長にも聞いてみよう」となる。これは階層を重視しているから当然です。
一方、B本部長に持っていけば決めてくれるかというと、「それって、隣のC部長とD部長にも聞いた?CさんもDさんもOKなら、僕はOKだよ。」とB本部長は返します。

こんな感じで、階層を意識しつつ全体で合意して決めていくので、4つの象限の中では意思決定までの労力が最も多くなります。
だから「日本企業はすり合わせ文化で意思決定のスピードに欠ける」と言われたりするんですね。

一方で、全員ですり合わせて確認してから進めるので、リスクは抑えられますし、その後の実行における徹底力は高い、とも言えるので、必ずしも悪いことばかりではありません。


影響①:部門横断のプロジェクト型組織へ

さて、ここで、DXの話に戻して、DXがどういう影響と変化を組織に与えるかを考えていきます。

DXを本格的に推進するには、顧客起点でビジネスプロセスを見直さなければなりません。顧客を中心にデータを繋ぎ、シームレスに顧客に価値を提供していくわけです。

こうなると、従来の縦割りの組織ではなくて、横割りともいうべき、部門横断のプロジェクト型組織で一貫性をもって顧客に価値を提供しないといけないんですね。

BtoBのビジネスであれば、マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス→カスタマーサクセス、といったプロセスに組織が分けられています。
部門ごとに異なるKPIを持っていて、マーケティングはCPCやCPAを最適化し、営業は商談数や成約率を追いかけ、CSは顧客満足度を最大化します。

従来は、このように組織を縦に割って、それそれで仕事が完結でき、生産性を高めて成果を挙げることができました。しかしこれからは、顧客起点の体制を築くべく、顧客に対しマーケティングからセールス・CSまでがワンストップで繋がって価値提供することが求められます。

こうなると組織としては自ずと、部門横断型のプロジェクトがたくさん立ち上がるようになりますよね。そうやって、部門を超えた横割りのプロジェクトによってDXは主導されてゆくことになります。


影響②:専門職採用がプロジェクト型組織を加速

このように、DXを進めると部門横断型の動きが進みますが、それを一気に加速させるのが、専門性の高い人材の採用です。

従来の「新卒採用してジョブローテーションしながら人材を育成する」という前提においては、ゼネラリストが育つので、縦割り型で組織が動いていても、それぞれがある程度の領域をカバーして対応することができました

たとえば、営業部門と言いながらも、CS的な動きもしたり、企画的な動きもしたりしながら、顧客に対応してきたわけです。現場で採用活動もしたり、経理的な処理もしたりと、ゼネラリストであることによって、縦割りでも一定の仕事は完結できたんですね。

しかし、エンジニアなど専門性の高い人材は、専門性に特化している分、ゼネラルに経験を積んではいないので、専門分野以外の仕事は得意ではなかったりします。仮にゼネラルにこなせるとしても、専門職は希少性が高く人材が足りないので、当然「専門分野に専念させたい」という話になる。

そうした人材を抱える部門では、部門単独では仕事が完結できず、横断的なプロジェクトを作って成果を生むことが必要となります。
つまり自ずと、エンジニアに、プロダクトマネージャーやデザイナーとセットでプロダクト開発をするし、その先の事業開発やマーケティングも一緒にやっていくから、プロジェクト化しよう、ということになるわけです。

このようにして、顧客起点での部門横断のプロジェクト組織化が加速していくわけです。


課題:プロジェクト型組織とフィットしないカルチャー

こうした動きが加速する中、先のカルチャー・マップでいう各国はどのようになってゆくでしょうか?

トップダウンであれば、トップの強い指示で「やれ」と指示して進められますし、平等主義であれば元からフラットに横割りで組織が動いているので、プロジェクト型と馴染みやすいでしょう。

しかし、日本のスタイルは、「階層主義×合意形成型」です。
そうした日本企業ではどうなるでしょうか?

まず、意思決定が混乱します。
これまで、縦の階層の中で合意形成しながら意思決定をしていたところに、横のプロジェクト単位で「プロジェクト責任者」が現れます。彼らはプロジェクトの成果に責任を持ち、自ら意思決定をしようとします。
しかし、所属しているメンバーからすると、日々一緒に仕事をしているのはプロジェクト責任者でありつつも、評価者である上司は従来の縦のラインにいる自分の上長、という構造になります。
これにより、どちらの判断を仰いでいいのか?意見が割れた時にどのように合意するのか?という意思決定で現場が混乱をしてゆきます。

次に、マネージャーが多忙で疲弊します。
管理職であるマネージャーは、縦横斜めのすり合わせをすることが求められます。その結節点の機能を果たすには、部下の仕事に関する情報を把握し、適切に上長や周囲に共有できないといけないわけです。
従来なら、縦に閉じた範囲の仕事だけ把握すればよかったのですが、プロジェクト中心になると、部下本人の仕事だけでなく部下が所属しているプロジェクトの情報を全て把握しないとなりません
こうなると、マネージャーが扱い、把握するべき情報量が指数関数的に増えて、情報を把握して共有するだけで毎日が終わってしまうわけです。

このように、「階層主義X合意形成型」という組織モデルでは、プロジェクト型の組織運営の難易度が飛躍的に高まります

だから、DXを進めようにも、意思決定が思うように進まず、マネージャーがボトルネック化し、推進力が高まらないのです。


提言:日本企業が描く、明るい未来とは

では、日本企業はどのようにDXを推進すればいいのでしょうか?

その一つの解は、DXをトップの強いコミットの下で実行すること。そして、併せて横断型のプロジェクトベースでの意思決定を根付かせることです。
それにより、トップ主導で顧客起点へとプロセスを移行するのです。

例えば富士通さんは、ロールモデルとなりうる企業さんの一つですね。

僕は、日本企業になら必ずこの変革を推進できると信じています。

日本企業は、階層を重視しながらも合意形成をとりながら組織運営をしてきました。これは、色々な人の意見を引き出しながら、それをまとめ上げて、全員が納得できる結論を出し切るというある種の特殊スキルだと思います。

ここに、専門性の高い人材が掛け合わさり、多様性が増します。
多様性が高まったときに更に活きてくるのが、この「意見を引き出しまとめあげるスキル」だと僕は考えています。
ファシリーテーション型ともいえる、このリーダーシップスタイルを生かして、多様性の価値を最大化することができれば、日本企業にしかできない変革をきっと成し遂げられます。

さぁ、官公庁でも、いよいよ今日9/1からデジタル庁が立ち上がり、国を挙げてのDXが始まります!!

みんなでDXをテーマに新たな日本流の組織像を作り、世界をリードする明るい日本の未来を作ってゆきましょう!!!


(ご参考:カルチャー・マップについてはこちら👇👇👇)

カルチャー・マップとは、INSEADのエリン・メイヤー教授が提唱されているもので、国のカルチャーを8つの軸で把握しようとするものです。


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