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電子マネー給与で形成される新たな経済圏と信用社会

 消費者にキャッシュレス決済が普及すれば、スマートフォンのアプリで管理された電子マネーだけで、すべての生活をすることも可能になってくる。これは、銀行を中心に形成されていた資金流通のインフラが、電子マネー経済圏へとシフトしていくことを意味している。その中でも、大きな転換点となりそうなのが、給与を電子マネーで支払うことを容認する規制緩和が進められていることである。

労働者の給与は、1947年に制定された労働基準法により、法定通貨による現金払いが原則になっている。ただし利便性を考慮して、給与の銀行振り込みが特例として認められているのだ。現状では、給与払いの9割が銀行振り込みだが、そこに「電子マネー払い」の選択肢も加わることは、企業と労働者の双方にメリットがある。

あまり意識されていないが、銀行振り込みによる給料支払いには、送金手数料が発生している。振込先の銀行口座によって、会社側が負担するケースと従業員が自己負担しているケースがあり、1回あたりの手数料額は150~800円。そのため送金コストを省く理由からも、給与の支払いは月1回の月給制が主流である。

しかし、電子マネーは、銀行振り込みよりも送金手数料を安く、または無料にすることもできるため、1日単位の日払いにも対応できる。日払いによる給与制度は、アルバイト人材の求人には効果があり、人手不足に悩む飲食業界や建設業界でのニーズが高い。また、日本の銀行口座を持たない海外の人材に対して給与を払うことも、電子マネーであれば容易にできる。電子マネーによる給与払いは、従来の給与体系や雇用のスタイルを変革することにも繋がっていく。

給与が電子マネーで支払われると、日々の買い物や、水道・ガス・電気などの公共料金、家賃の引き落とし口座としても利用することで、様々な特典が受けられるようになる。これは、米国のクレジットヒストリーや、中国の芝麻信用(ジーマ信用)のように、キャッシュレスによる新たな信用社会が日本にも近づいていることを示唆している。

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