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アニメ映画「天気の子」と上映イベントについて=ドイツから考える

ドイツ語圏の各都市で1月16日、新海誠監督のアニメ映画「天気の子」が映画館で上映されました。今回は興行成績とネットの反響を整理し、上映イベントというビジネスモデルについて考えてみたいと思います。

ドイツの映画配給会社Universum(注1)は1月16日、19日の計2日間、ドイツにオーストリアとスイスを含むドイツ語圏の各都市の映画館でアニメ映画「天気の子」の上映イベントを実施しました。映画館によってはドイツ語吹き替え版と日本語オリジナル音声にドイツ語字幕を加えた2種類を上映しました。

Universumは上映イベントに合わせて映画館をマッピングし公開しました。まさにドイツ(語圏)の隅々にまで上映イベントが行き渡っているのを確認できます。

筆者が参加したフランクフルト会場は市内中心部の映画館でした。

気になる興行成績ですが、ドイツのメディア業界誌によると、217のスクリーン数で6万1391人を動員し、73万1688ユーロ(日本円で約9000万円弱)を売り上げました。新海誠監督の前作「君の名は。」の動員数6万5000人に迫る数字だと同誌は報じています。この興行成績にはオーストリアとスイスは含まれていないのでドイツ語圏全体ではもう少し増えそうです。

注目すべきは、ドイツの週刊チャートです。2日間の上映だけで、他の通常上映作品を押しのけ第8位にランクインしています。

別の映画情報サイトの週刊チャートでは第6位となっており前後の作品タイトルを見ても「天気の子」の健闘ぶりが目立ちます。(以下のスクリーンショットを参照)

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配給会社のUniversumはこの2日間の上映イベントの成功を受けて、1月23日と26日に規模を若干拡大して追加上映を実施しました。結果、動員数で1万1352人を積み増し合計7万2752人となりました。売上高は12万9480ユーロ(日本円で約1600万円弱)だったので、4日間の上映イベント全体の売上高は概ね1億円の大台は越したとみてよいと思います。

ちなみにネットの反響については、ドイツのクオリティペーパーに位置づけられる雑誌『シュピーゲル』や『南ドイツ』新聞が公開前にそれぞれ特集記事を公開しました。

公開直後には、上映イベントに参加した多くのファンがツイッターで感想を投稿しました。ハッシュタグ「#WeatheringWithYou」は一時ドイツのツイッターのトレンドにランクインしました。2日目の上映では前作「君の名は。」と比較するツイートが大量に発生し、同作のドイツでのタイトル「Your Name」が同じくツイッターでトレンド入りしました。

感想ツイートの内容は筆者がざっと見たところ、たしかに「君の名は。」との比較が多く、「天気の子」を支持するものと「君の名は。」のほうがよかったという感想の両方が入り混じっていました。中には上映イベントに合わせて、手作りのてるてる坊主を持ち込む様子なども見られました。

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このような映画館を活用したアニメ映画の上映イベントに関して、「天気の子」の上映を控えた映画館の関係者が興味深いコメントをインタビューで述べています。およそ以下の通りです。

アニメ市場はCinemaxX(映画館チェーンの名前)にとって、信頼できるコミュニティを受けて強力に成長している市場です。拡大する傾向にあり、そのトレンドは、少なくとも「天気の子」の前売り券の販売状況からも、そう判断できます。

日本でもアニメファン向けのビジネスは不況知らずと言われるような、そんな状況がドイツでも起きているとみてよいのかもしれません。

ドイツでは今週もアニメ映画「ヴァイオレットエバーガーデン外伝」の上映イベントが各地で2日間の日程で開催されます。配給は「天気の子」と同じUniversumです。

このような映画館を活用したアニメ映画の上映イベントは、「天気の子」や「ヴァイオレットエバーガーデン外伝」といった単発の作品に限りません。シネコンの複数のスクリーンを終日使用したアニメ映画祭「AKIBA PASS」はドイツ語圏の各都市を巡回する興行モデルとして以前、このCOMEMOで扱いました。

そして今年も先日、巡回をスタートさせたところです。話題作がまとめて楽しめる「AKIBA PASS」はファンの支持を得て、ドイツの冬のイベントとして定着しつつあります。

こうした映画館を活用した上映イベントのトレンドは、ドイツだけに留まらないようです。COMEMOでも連載中の数土直志さんが運営する「アニメーションビジネス・ジャーナル」は今月、米国でのイベント上映の盛況を伝えています。

ドイツでは今回の「天気の子」の上映イベントの好評を受けて、さらに同様の上映イベントが増えるかもしれません。日本のアニメ産業にとっては、米国や中国だけでなく、ドイツや欧州各国にも目を向ける時が改めて訪れているのかもしれません。

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タイトル画像はドイツの配給会社のHPからのスクリーンショットです。

追記:
注1:配給会社のUniversumは1月29日現在、社名がLEONIEに変更になっています。ご指摘くださったYOSHIさんに感謝いたします。


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ダンケ!
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日独文化交流家(日本ポップカルチャー) ドイツ、フランクフルト在住。日本のポップカルチャーを通じたドイツでの文化交流を支援しています。活動での「気づき」や日々の情報収集で感じたことをドイツからお届けします。 https://twitter.com/sakaikataho
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