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”見た目”では分からないこと、”らしさ”の押しつけ

時折「若い人が優先席を譲らない」ことに憤る言葉を耳にすることがある。もちろん、席を譲れる人が必要としている人に意識が向かない、ということを問題視することはうなずける。ただその「若い人」は本当に、優先席を必要としない人なのだろうか。「見た目」で全てを判断する前にもう一度、考えてみたいことがある。

私の知人は内部障害があり、普段はカバンにヘルプマークをつけている。

最近目にすることが増えてきたヘルプマーク。義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠中の方など、見た目では分かりづらくても、援助や配慮を必要としている方々であることのサインとなるものだ。

友人は20代で、一見は元気ではあるものの、自律神経失調を抱えている。ただ、たまたまその日はカバンを入れ替えていたため、ヘルプマークを持ってくるのを忘れてしまっていた。

電車で移動中、軽いめまいがしたため、ちょうど空いた優先席に座ったという。少しずつ落ち着いてきた頃にふと気づくと、「若いのに座って…」という近くで立っていた人たちの言葉が耳に入ってきたそう。

「日ごろからどこか後ろめたい思いは抱えてきましたが、それ以来、電車に乗ろうとすること自体がますます心の負担になってしまって」と彼は曖昧に笑った。

ついつい”見た目”で判断をしがちな場面は、病気や障害に留まらないのではないだろうか。

難民申請をした方に「あなたは難民にしては元気過ぎる。本当の難民はもっと力がない」という言葉が投げかけられてしまったり、犯罪の被害に遭った方に対しての「被害にあったのなら笑顔になれるなんておかしい」という二次被害ともいえる言動も、根底は同じではないだろうか。

こうして”見た目”の思い込みを疑わないままに、らしさの押しつけをしてしまう、のだ。

それは往々にして、「そんな服装をしているから性被害に遭うんだ」「あなたが美人だから狙われたんだ」という言葉に反転しやすい。

物事を判断する前にもう一度、自分自身に問いかけたい。私たちの目に映るものが全てではないはず、そして見えない何かにしっかりと、想像力を及ばせているだろうか、と。

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安田菜津紀(フォトジャーナリスト)

フォトジャーナリスト。東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で貧困や災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。J-WAVE「JAM THE WORLD」水曜日ニューススーパーバイザー。TBS「サンデーモーニング」コメンテーター。

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コメント2件

本当にこの視点は大切だと思っています。
見た目だけ判断すると言うのは、色々な意味で多くの危険性を孕んでいます。
恐らく多くの人はこれについては認識していると思うのですが、
電車のような事例に自分ごとして接した場合には、感情も揺さぶられるのでこの認識の外に出てしまうように感じています。
今一度、自分に問いかけ、想像し直してみる余裕を持ちたいですね。
ヘルプマークと言うのですね。最近よく目にするようになっており、気になっていました。ありがとうございます😊
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