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古代チーズの「蘇」が今、話題な理由

「蘇(そ)」というレシピが話題になっています。
蘇は、飛鳥時代〜平安時代に貴族が味わっていたお菓子/チーズのようなもので、牛乳をずーっとただ煮詰めて冷やすと完成する食べ物。ミルク飴に近い味わいです。
「1000年来のブーム到来」とか「今年初の食トレンド」とザワザワしています。話題になった事の発端を簡潔にまとめると以下。

ウイルス感染拡大防止のため一斉休校

●販路がなくなった牛乳がピンチ!

●牛乳の大量消費が話題に。特に「蘇(そ)」レシピ

蘇は脳みそ夫さんがTwitterであげていて、話題になっております。


バズの構造は至ってシンプルですが、食トレンドを趣味で研究している私としては、もう少し深く「蘇」が話題になった背景を考えたいと思います。


▷改めて。 食トレンドとは何か?

「食トレンド」とは何か?と問うならば
【①特定のもの ②大人数で  瞬間最大風速 でハマること】と整理していいと思います。

実は上記の条件を満たすためにケアしなければいけない点は、同じ食でも、外食・中食・内食では全然異なります。

今回のような家庭料理でトレンドを作る場合は「①特定のもの ②大人数で」がとても大変。外食や中食は、同じものを提供する環境が整備されているのでクリアできますが、家庭料理の場合は調理者が老若男女、調理スキルも初心者から玄人、調理環境も多種多様ですからね。
だから【同じものを、大人数で同じ時に、ハマる】ためには諸々、レシピの条件が厳しくなるんですよね。
今回の蘇は、意外にもこの条件を突破している優秀レシピでした。

▷家庭料理のトレンド公式は 【食材×調理者×調理心理】。

トレンド化させる必要条件である「②の大人数」を家庭料理でクリアするためには【入手しやすい食材】×【普及している調理器具】×【調理スキル不要】を突破できれば参加障壁が格段に落ち、多くの人がトライできます。

蘇の場合は、
【牛乳】×【フライパン】×【煮詰めて冷やす】だけなので、きっと小学生でもできちゃうレベル。だから日本国民のみんなが気軽に作れるメニューなんですね、蘇は。素晴らしい。

あと、蘇って見栄えはそんなに良くありませんが、視点を変えると「誰が作っても似たような見た目」とも言えます。牛乳を煮詰めるだけだからアレンジの仕様がない、というのが正直なところですが、この見た目が同じというのもこれまた大事なポイントです。

作り手が違う家庭料理において「見た目が同じ」というのは「話題・流行っている状態をつくる」ためにはとても大切です。なんか最近よく見るな〜とSNSで思わせたいのに見た目が違うと認識されにくいですもんね。
だから調理器具起点でトレンドが生まれやすいのです。ニトリのスキレットとか。

今流行っている「かためのプリン」も各店が出していますが、想起するプリンのイメージは「濃い色のカラメル×黄色いカスタードプリン×ホイップクリーム×銀皿」のはず。こうやってアイコンとして成立しないと、うまく拡散していかないのです。純粋想起ってやつ。

▷唯一の難所「調理時間」は、リモートワークと一斉休校が解決した。

家庭料理でトレンド化する条件を意外に満たしていた蘇ですが、ひとつ大きな問題がありました。
調理時間です。牛乳をひたすらずーっと弱火で煮詰めないといけません。

いつも毎日だったら「惣菜やミールキットにさえ頼りたいのに、ひたすら牛乳を煮詰める? なぜ、なんのために‥!」と年々強まる時短志向の世の中で、絶対に相容れないレシピなわけですが、今は奇しくも非常時。

リモートワークで台所の近くに普段よりいる、気分転換したい。
子どものお世話で自宅にいる、子どもとなにか遊びたい。
という方々が増えたことによって、この面倒なレシピは長い調理時間の壁を超えることができて、話題になったのだと言えるでしょう。

▷お店にもコンビニにも売ってない「古代のチーズ」。

最後の調理者心理。
蘇はなぜ私たちを掻き立てることができたのか?と問われれば「他で味わったことがないから」に尽きると思います。どこにも売っていないものを、暇なときにちょっと作ってみるか。そんな感覚にみんながなっていた、ということなのではないでしょうか。
ふしぎ(未知)な体験をしたい、味わってみたい、このわくわく感は調理心理の大きな原点です。

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ちなみに、データで「蘇」と検索した性年代とエリアのデータはこんな感じでした。SNSで情報に触れた20代女性と、男性が比較的検索しています。やはり忙しい子育てママ世代は検索していない模様。エリアで見ると首都圏。

また、20代は歴史の教科書(図説)で、蘇を勉強した!というコメントも。だから馴染み深いのかな?


▷家庭料理のトレンドは、社会を映す。

国民の誰もが関わる「衣食住」。
特に即時性があって、変数の多い「料理」は、短時間で社会の「空気の変化」を教えてくれます。
今は非常時。だから日常では異種の「蘇」に注目するのかもしれません。社会の色を、私はこれからも”食卓”から覗いていこうと思います。


▷蘇については、こちらに詳しくまとめてます。

脳みそ夫さんに取材させていただき記事化しました!ぜひお読みください。ただただ癒やされて、ほっこりします。
上記で簡単に示した「蘇」のビッグデータについても詳細に記載しています。

(他の記事はこちら)


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渥美まいこです。 いただいたサポートは、食トレンド調査に大切に使わせていただきます。感謝…。

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食トレンドを追いかけながら社会変化・消費行動を考察中。フォローしているだけで「最新の食トレンド&背景」がわかるアカウントを目指してます。時々抽象的なことも語る。普段は食×マーケティングメディアFoodClip(http://foodclip.cookpad.com)の編集長。

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