かつてそこはゴルフ場だったーこれから日本はどう生きる
そこは、かつてゴルフ場だった。夜、グリーンから見る海・空・星・月・山・グランピング施設は幻想的だった。朝、サウナ室から見るグリーンの樹々、青空は開放的だった
1 かつてグリーンだった
空を飛んだ。うつ伏せになってジップラインをすべって、上空からフェアウェイとグリーンを見る。フェアウェイでドローンを飛ばして、空から伊勢志摩の風景を見渡す。グリーンに向かい、ゴルフボールと悪戦苦闘していたことを思い出す
コロナ禍のなかテレワークがはじまったとき、ワークとライフの場所がそれぞれ拡張して混ざりあい、多様な目的ごとの場がうまれていく。さらにワークとバケーションが混ざり合い、ワーケーションが生まれるだろうと考えた
そんなのものはできる訳がない、そんな需要は生まれるはずがないという声が多かった。そこに生まれたのが、ゴルフ場がアスレチック✖グランピングの場に生まれ変わり、開業以来、人気を集めている
海外からのインバウンドの人たちのスタイルも変わった。観光だけでなく、様々なモノ・コト・トキ経験へと多様化して、ホテルでのコワーキングスペースでオンラインミーティングしている姿をよく見かけるようになった
圧倒的なグリーンのなかにできた巨大なクライミングタワーで127種類にコンテンツをクリアしてゴールをめざす。レーザー銃で2チームに分かれてサバイバルゲームをする。友人や家族だけなく、会社のメンバーのワーケーションとしてチームビルディングやチームワークの訓練の場としても活用されている。訪れる人たちそれぞれが、それぞれの物語を綴る、新たなライフとワークスタイルが生まれつつある
2 駅馬車会社はどうなった
かつて駅馬車会社があった
産業革命前
イギリスの主力輸送機関は
駅馬車会社だった
いかに馬で早く運べるか
いかに馬で多くの人を運べるか
という経営をつづけていた
駅馬車ばかりみていたため
新たに生まれた機関車や
自動車の存在・動きに気がつかず
お客さまを奪われ
駅馬車会社はなくなった
自らの事業を「輸送事業者」と位置づけて
市場・技術の動きをつかんでいたら
時代は変わったかもしれない
自動車産業は何屋?
家電産業は何屋?
散髪屋さんは何屋?
と常に問いつづけないといけない
ゲームメーカー任天堂はかつて
花札やトランプだった
コンビ二のローソンはかつて
アメリカの牛乳屋だった
キティちゃんで有名なサンリオはかつて
山梨の絹を販売する会社だった
20年前、30年前と比べても
日本の「市場」は変わった
世界も、10年前、20年前と変わっている
同じやり方をしていたら
うまくいかない
時代速度は加速している
自らがかわらなければ
会社はなくなるかもしれない
そのことは、頭で判っているが
行動できない人・企業が圧倒的
その会社は、ずっと繊維会社だった
3 再定義の時代
その会社は、かつて電気屋だった。
その会社はかつて写真フィルム屋だった。
再定義の時代である
車を売って儲けていた自動車産業
テレビを売って儲けていた電器メーカー
髪を切って儲けていた散髪屋さん
移動手段としての自転車を売って
儲けていた自転車メーカーも
人口が減ってきたら
これまでどおりに考え
これまでどおりに行動していたならば
販売数量が必ず減る
それは至極当然の話
4 最大公倍数の時代
最大公約数の時代ではなくなった
最大公倍数の時代になった
100の市場で、70や80の需要を狙う
一点集中の時代ではなくなった
10と20と30の需要をそれぞれ狙い
揃えて、まとめていく時代である
「プロフィット・プール」という考え方がある
利益のかたまり、売上高×利益率=利益の構造
バリューチェーンにおいて
各分野・事業の収益が現在どうなっていて
過去から現在、未来という時間軸のなかで
なにを、どこに注力すべきか
どう事業を変えていくべきか
という考え方である
市場の変化、価値観、技術の進歩
ライフスタイル、ビジネススタイルの変化
商品サイクル・商品のコモディティ化
などの動きをつかんで
次を読み、総合的に考えて
経営の舵取りを変えていかねばならないが
これが苦手な人、企業が多い
5 最終製品で勝負する時代ではない
中国やシンガポールやベトナムなどアジアを訪ねると
その成長に驚く
日本との勢いの違いに圧倒される
しかし日本企業が駄目というわけではない
たとえば中国の電気自動車しかり
新幹線しかり
スマホしかり
基幹部品、主要部品、重要なメンテナンス機器は
日本企業製
海外で「最終製品」が売れれば売れるほど
日本製の基盤部品が売れる
プロフィット・プールの変化
事業の儲け方は
時代とともに変わる
車が売れないとか
テレビが売れないとか
といったように
最終製品の増減のみに
目を奪われるのではなく
事業・利益・製品のあり方に
目を向けるべき
日本企業はその商品が商品たらしめる
中核部品やサービスの品質を高めつつ
コストを下げつづけ
お客さまをフォーカスしつづけることに
軸足をおくべき
プロフィット・プールを見据えて
事業を再定義して
発展しつづけている
企業や事業は、日本には沢山ある
5 これから、どう戦う
「床を優しくしてあげたい
という日本人の気持ちがすごい」
ダイソン創業者が考えた
デュアルサイクロン方式の掃除機を
日本人が洗練させて
画期的な世界的掃除機に育てあげた
という話は有名
ダイソンの掃除機にかかわった
日本のエンジニアだけでなく
エンジニア以外の人たちが
モノを大切にして
モノの美、機能、素材に対して
愛情を注ぐ日本人の感性・センスに
ダイソンの創業者は驚いたという
ダイソンの掃除機を
ダイソンたらしめるために
日本人の洗練していくセンスに
学ぶとともに
ダイソン掃除機には
日本製の素材・部品が多く用いられている
西陣織もしかり
日本企業が生き残る道がある