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地域店舗を潰さないバイローカルキャンペーンの経済学

 地域で長らく親しまれてきた店が「今月で閉店になる」というニュースが流れると、「それは残念だ」「もう少しがんばってほしかった」という声が必ず聞かれるが、それなら何故、その店に通い続けなかったのかという矛盾もある。

全国にある小売業者は、98%が従業員50人未満の中小企業で、経営は厳しい状況にあるが、地元の店が閉店することは、地域の付加価値が減少することを意味して、市民全体の損失になる。そのため、地方の自治体や消費者が何らかの形で地域の業者を支えていくことも大切だ。これは日本に限らず、他の先進国でも共通した課題となっている。

そこで、米国ではローカルビジネスの支援策として「バイローカル・キャンペーン(Buy Local Campaign)」と呼ばれる活動が普及している。地域の消費者は、売上が本社へ吸い取られていく、大手チェーンの店舗よりも、地域で独立経営をする店舗を利用することで、買い物に使った資金を地域内に環流させることができ、当地の経済を活況にしようとする取り組みだ。

消費者が、地域の商店で買い物して、店が潰れるのを防ぐことは、経営者を助けるだけではなく、失業者を減らすことや、自治体の税金が増えることによって、市民の生活向上に繋がることが、経済学からも裏付けられるようになっている。

【米国で結成されるバイローカル団体の役割】

地方の中小業者が、大手の量販店やチェーン店とは一線を画して、独自の特徴や魅力を打ち出していくことは、資金やノウハウの面でなかなか難しい。そこで、複数の事業者がグループを組むことで、ユニークな販促アイデアを企画したり、共同でキャンペーンを実行することにより、消費者に、地元業者から商品を購入する利点を提示することが、バイローカル・キャンペーンの目的となっている。

米国の各州では、事業者と市民が連携したバイローカル団体が結成されて、各種の企画を実行している。活動の根拠としているのは、地域の消費者が、全国チェーン店から買い物をするのと、大手資本には属さない、地元で独立経営をする店舗から買うのとでは、自治体への税金、従業員の人件費、商品や原材料の仕入れなどで、地元に環流する資金が以下のように違うことである。

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バイローカル団体が行うのは、地域の事業者を組織化して、具体的な販促マーケティングの方法を教えることや、会員業者が協力して販促キャンペーンを実施することである。こうしたバイローカル活動には、地元の新聞社やテレビ局、銀行なども協力的なため、安価で効果的な広告宣伝ができたり、低金利で事業資金の融資を得られたりするメリットがある。

米国アリゾナ州のバイローカル団体「Local First Arizona(LFA)」では、約3000の地元業者を会員とすることで、各業者の集客に役立つローカルイベントを多数開催している。たとえば、毎年11月に開催される「Arizona Fall Fest」は地域の原材料を利用した商品の出品販売の目的とした野外イベントで、200以上のローカル業者が参加している。

その中でも人気が高いのは、地元のレストランやワイナリーなどが出店するコーナーで、来場客は1ドルのサンプルチケットを購入することで、各料理の試食をすることができる。そこで料理が気に入れば、後日、その店の来店者が増える流れとなる。

また、米独立記念日にあたる6月30日から7月4日までの期間は、「インディペンデント・ウィーク」として地元業者の祭典イベントが、アリゾナ州全域で開催される。消費者は、Local First Arizona の公式サイトからクーポンをダウンロードすると、イベント参加中の店舗で20%オフの買い物ができるようになる。

バイローカルの取り組みにより、各家庭が毎月の消費支出に対して10%がローカル店舗での買い物にシフトすると、地域の雇用や経済を引き上げることができると試算されている。

日本人の生活を振り返っても、買い物の大半は、大手資本のスーパーチェーンやコンビニ、ネット通販などで購入しており、地元の店をあまり利用していないことに気付くが、結局それは、地元経済の悪化を招いて、自分の年収が下がることにも繋がっていく。地域の店舗を利用することで地域経済の再生ができるのであれば、それは寄付をするよりも簡単だ。

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