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B as Communityという新しい事業のかたち 〜複業スタートアップ進化論

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こんにちは、uni'que CEOの若宮です。「複業スタートアップ」という変わった形で会社を経営しているので、その実験をしながら見えてきたことを書いています。

ユーザーとともに事業を成長させる

「B with C」という言葉をご存知でしょうか。

「B to C」(企業(Bussiness)が顧客(Consumer)にサービスを提供する)という一方向的な関係ではなく、従業員が頻繁に顧客とコミュニケーションし、ニーズを取り入れながら事業を成長させて行く、という考え方です。

https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/040400128/070700007/?P=2

このような考え方にシフトしてきたのは、下記のような時代の変化が背景にあると思います。

・顧客のニーズの多様化

企業が考えて作れば売れる、という単純ニーズの時代で無くなった

・コミュニケーションの双方向化

広告や放送などの一方向コミュニケーションよりSNSなど双方向コミュニケーションが主流になった

・モノ売りからコト売りへ

モノの不足が解消され、モノだけでなくストーリーが重視されるようになった

企業が企業の中だけでプロダクトやサービスを考えるのではなく、ユーザーの意見を取り入れながら事業を改善し伸ばしていく。

特にインターネットビジネスでは、プロダクトは作って出して終わり、ではなく市場や顧客と常に対話しながら継続的に改善していくものなので、B with Cのような形が主流になっています。

そしてuni'queではいま、「B with C」をさらに進め、「B as C」という新しい事業の形を作り始めています。

「全員複業」から「遠距離恋愛」へ

過去の記事でも触れましたが、uni'queは「全員複業スタートアップ」という形で事業をしています。

https://teamlancer.jp/articles/10

このような変わった組織体を取っているのは、女性が活躍できる環境をつくり、女性主体の事業を生み出していくためなのですが、一年間「全員複業」で事業をやってきて、今、新たなフェーズに移りつつあります。それが「遠距離恋愛」です。

以前、こちらの記事でも書いたのですが、複業で事業をする上で、一番大変なのは、時間の捻出です。それを効率的にどうやったらやれるか?と一年間工夫をし続けてきた結果、仕事の「境界を溶かす」ことがコツだとわかってきました。

https://comemo.io/entries/10040

そんなある日、ある仕事で名古屋に出張する機会がありました。出張には往復の時間もかかる。せっかくなのでこの出張を何かに活かせないか?一つの仕事をそれだけで終わらせず、他の仕事も「溶かす」ことはできないか?

「そうだ、ユーザー会しよう」

行き先は京都ではなかったのですがそう思い立ちました。

uni'queが提供しているYourNail(ユアネイル)というサービスは、ユーザー参加型のオーダーメイドネイルアプリです。ユーザーさん同士がネイルのデザインをつくって投稿し合い、あるユーザーさんが作ったネイルデザインを遠くに住む別のユーザーさんがネイルとして楽しみ、「かわいい」「ありがとう」など感謝のコミュニケーションが生まれています。

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(YourNailユーザーさん同士のやりとり)

アプリの中だけでも楽しいけれど、やはりリアルに会ってコミュニケーションするのも大事。オフラインのユーザー会は時々開催していたのですが、遠方ではなかなかできず東京開催ばかりになっていたので、出張のタイミングに合わせてユーザー会をしよう、と思ったわけです。

思いついたのが出張10日前。すぐ名古屋に住むユーザーさんにお声がけをし、ゲスト講師となってくださることになった人気ユーザーの「イズィ」さんと遠隔で電話会議やLINEチャットで打ち合わせ。バタバタと当日を迎えましたが、結果としては大成功。とても盛り上がりました。

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(人気ユーザー・イズィさん、cinontioさんをゲスト講師に名古屋ユーザー会)

ここで一つ気づいたことが。「あれ、遠方とでも全然いつもと変わらない感覚で仕事ができるぞ」

よく考えてみれば、uni'queはそもそもみんなが複業なので、仕事は基本チャットやビデオ会議です。メンバーが実際に顔を合わせるのは月に一回あるかないか。それで一年やってきたのでテレワークで仕事を進めるノウハウがかなり溜まっていました。

「複業」という働き方をしていると、実は遠方とでもほとんど変わらない感覚で仕事ができてしまったのです。

これは発見でした。スタートアップの少ないリソースでどうやってサービスを全国各地に広めていこうか、と思っていましたが、東京から出向くのではなく、全国各地に一緒に働く複業メンバーを見つければいいのです。複業メンバーがいるだけで全国各地に支店をもてるようなものです。

スタートアップは資金もですが、採用が大変です。地方進出となるとなおさらです。ですが各地に複業メンバーを作って、テレワークで仕事をしていくのなら簡単に全国展開ができます。オフィスすら要らないかもしれません。「遠距離恋愛」でも愛ははぐくめるのです。連絡をマメに取ったり会えない分想いをちゃんと伝えたり、少し工夫は必要ですが。

「 B as C」へと溶けて行く。

そして今、uni'queは「遠距離恋愛」のその先に、「B as C」という構想を描いて進んでいます。Cは「ConsumerのC」ではなく、「CommunityのC」です。

この構想に至ったのにも、実はきっかけがありました。

先日、サービスで大丸百貨店さんとのコラボをしたのですが、(※YourNailはコラボする企業を絶賛募集しています【PR】)

その時に大丸百貨店の担当者さんとこんなやりとりがありました。

僕(以下僕)「では、コラボのデザインは大丸さんの方でご指定いただく形でいいですか?」

大丸さん(以下大)「あ、、はい。。。ただうちにいるデザイナーさんってネイルのデザインできるかなあ、、、?御社にデザインお願いすることってできます?」

僕「あ、できますよ。ただぶっちゃけていうとうちのデザイナーもUIとかが専門でネイリストってわけじゃないんですよね。。。」

大「そうなんですかー、ネイルのデザインって普通のデザインとは違いますもんねえ」

僕「・・・・ですね・・・」

百貨店でご購入いただく、ファッション感度の高いお客様にせっかくプレゼントするのですから、おしゃれなデザインでないといけない。でもネイリストさんとかにお願いしたら、それはそれでデザイン料がかかるし・・・

デザインをどうしよう・・・

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(人気ユーザーasuchilbeさんデザインの大丸百貨店とのコラボネイル)

その時閃いたのです。

「YourNailにはネイルデザインのプロみたいなユーザーさんが沢山いるじゃないか!」

まさに灯台下暗し。ユーザーさんの方が我々よりもずっと沢山ネイルをデザインしているし、センスもいい。

こうしてネイルのデザインを人気ユーザーさんにしてもらう企業コラボの形が生まれました。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000027946.html

そしてここから事業にユーザーさんを積極的に巻き込むようになりました。ネイルのデザインだけでなく、コラボイベント当日のスタッフもユーザーさんからお手伝いを募集したのです。

これも当初は、イベント運営も複業メンバーのスタッフだけだと手が足りず、アルバイトでも雇おうか・・・、と考えていました。ですが、よく考えてみると、誰よりもサービスのことを知っていて、ネイルを貼るのも慣れている、なによりもYourNailのファンなので愛情を込めてオススメしてくれる。日雇いのよくサービスを知らないアルバイトさんに即席レクチャーするより、100倍効果的です。

松坂屋名古屋店とのコラボイベント当日、三人のユーザーさんが現地に駆けつけてくれました。

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(松坂屋名古屋店でコラボネイルをするイズィさん)

イベントをユーザーさんのお手伝いをいただいてやってみて、また、一つの気づきがありました。

uni'queのメンバーとユーザー、どこまでがBusinessでどこからがConsumerか、そういう違いはもしかしてあまりないのではないか?

そういう境界を溶かして、「YourNailをつくるみんなのCommunity」と考えたら良いのではないか?

(ちなみにuni'queではここにプライベートも溶かしていて、松坂屋さんイベントは小学生の長女がスタッフとして参加しました)

B as Communityがもたらすもの

このような展開が可能だったのは、uni'queが「全員複業スタートアップ」なればこそ、だとも思っています。

そもそもメンバーも複業でやっているため、できる時にほんの少しの時間でも事業に参加する、会えなくてもコミュニケーションをとる、そういう働き方が当たり前化していたからこそ素直にこういう発想になったし、そういう働き方のノウハウが溜まっているので実行もスムーズでした。

そしてまた、「Community」として事業を考えることで、事業の、働き方の形がまた違って見えてきたのです。

以前こちらの記事でも書いたように、終身雇用が崩壊して人材が流動化し、複業も当たり前になって組織の壁が溶けてくるこれからの時代には、従業員を第一顧客として考えるのが重要だと考えています。

https://comemo.io/entries/10170

B as Cという考え方をすると、そもそも従業員とユーザーとの境界が溶け始めます。

・ユーザーを大事にするように従業員も大事にする
・事業を通じて従業員だけではなく、ユーザーにも報酬を還元する
・従業員、ユーザーどちらにとっても自己実現の機会を提供する

こういうことがとても当たり前のことに思えてきたのです。

「B as C」という考え方は僕の発明というわけではなりません。

「あたらしい経営」「あたらしい働き方」などと書いてきましたが、そもそも、ビジネスというのも原初的には地域の人を含めたコミュニティとして発展し、その中で価値が還流するものだったはずです。

それが産業技術の発展によって分化・専門化し、プロとコンシューマーが分断されてきたのが20世紀まででした。

インターネットの力はこの分断をまた溶かしつつあります。たとえば有料のオンラインサロンが増えてきていますが、そこではお金を払っているConsumerがコミュニティを運営し、拡散し、一体となって盛り上げています。B to CやB with Cより、それよりもB as Cと呼んだ方がしっくりくるように思えます。

ただし、概念としては成り立っても、現実的にクリアして行くべき課題はたくさんあります。従業員とユーザーは一緒といってもそこにはもちろん違いがありますし、インセンティブや評価、クオリティコントロールやセキュリティなど、これからしっかり考えていかなければいけません。

けれど。

この一年複業スタートアップとして複業メンバーと、そしてユーザーさんと一緒に事業を走らせてきて、そういう課題はやってみれば一つずつ工夫で解決できる、という手応えを日増しに感じています。そしてそういう実験を、工夫を、メンバーやユーザーと一緒になって重ねる中であたらしい働き方を生み出していけるのではないか。

ごく普通のママが企業のデザインを担当する。学生や主婦がスキマ時間で事業を成長させる。残念ながらまだまだ日本では女性の活躍の機会は十分ではありません。色々な働き方の形ができて、まだ活用されていない個のバリューがもっと社会に滲み出したら、社会のバリューをもっと増やせるのではないでしょうか。

© comemo992439091

(人気ユーザーringo3さんをゲスト講師に大阪ユーザー会)

↓9月からKOLとして不定期で投稿しています。興味持っていただけたら他の記事も読んでいただけたら嬉しいです

https://comemo.io/user/13928

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