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現代の赤頭巾ちゃんは約束を守る

現代の赤頭巾ちゃんは、お母さんの約束を守る

「途中でみちくさをしてはいけません。家の外には怖いオオカミがいるから用心するのですよ。オオカミは悪いことをするから、話しかけられても、知らん顔しているのですよ」

とおばあちゃんをお見舞いにいく童話の赤頭巾ちゃんは、お母さんにいわれた約束を守らなかったのでオオカミに食べられた。現代の赤頭巾ちゃんは、ちゃんとお母さんの約束を守る良い子ちゃんになったが、どうなった?


1 ウチで群がり、ソトを排除する

友だちや仲良しの人には心は許すが
知らない人を警戒するようになった

子どもや学生は
学校の同級生や同学年の友だちと群れる
企業もそう、同年代で群れる
若手は若手だけで、中堅は中堅だけで
ベテランはベテランだけで

群れる

知らない人や
自分とは違う世界の人との
交流が苦手
話が通じない
と感じる

家や学校や会社の外に出ても、そう
知っている人だけで群がり
知らない人の人とは話しない

高齢者もそう
高齢者は高齢者だけで集まり
現役や子どもたちと交流しない
対話をしない

どの世代も
多世代と交流して
語りあったり
学びあったり
しない

だから思考は偏ってしまう
だから視野が狭まる

情報はネット・スマホで集めたらいい
他人に訊かなくてもいい
検索したら、いくらでも情報は集まる
と思う

耳触りのいい情報に出会ったら
面白そうな情報を見つけたら
それで判った気がして
うまくいくような
できるような
気がして
動く

頭だけで考えるから
多面的に考えないから

内容が貧弱で薄くなり
うまくいかない
失敗してしまう

いつから日本はそうなった?


2 えべつさんは、なにもの?

年明け一番乗りをめざして境内を疾走する「福男選び」で有名な兵庫県西宮市の西宮神社は、商売繁盛の神様「えべっさん」の総本社として知られるがあ、その本殿が有形文化財にするよう答申された

毎年1月10日の早朝に
全国のえびす神社の本社である
西宮神社の境内を疾駆して
福男を選ぶ風景や
「商売繁盛で、笹もってこい」のお囃子が
テレビで流れる風景からも
商売繁盛の神といわれるが
えべっさんとはなんだろうか?

東京では商売繁盛は熊手の「酉の市」で
近畿では 1月10日の
「十日戎=えべっさん=商売繁盛」と
思っている

えべっさんとはなにもの?

室町時代に、農民・漁師・商人の間で
「五穀豊穣・大漁・商売繁盛」
を祈願する信仰として
えびす神やかまど神が祀られるようになり
地域の農家や漁師や商人の間で
「えびす講」というつながりがうまれた

かまど神

その祭礼として
旧暦の10月20日に「百姓えびす」
1月10日に「商人えびす」
がおこなわれた

現代の熊手の酉の市は「百姓えびす」
笹の十日戎は「商人えびす」
の系譜を継ぐ

10月20日の「えびす講」の日
江戸時代の京都・大坂では「誓文払い」
がおこなわれた

えびす講の日には
商店では年1回の安売りが
現代でいう「バーゲンセール」
がおこなわれた

商売上の駆け引きで
お客さまを欺いた罪を払い
神罰を免れることを
祈るための商いをした

商人はこのようにして
お客さまにお返しをしていた

決して熊手や笹で
商売繁盛を祈るだけではなかった

現代は、その熊手や笹の意味が
分からない人が増えた

3 えべっさんアナザーストーリー

えべっさんは
商売繁盛の神といわれるが
もうひとつ深い物語がある

えびっさんのまたの名は、蛭子(ひるこ)

「たらちねは いかにあはれと思うらん 三年に成りぬ足たたずして」

平安時代 歌人 大江朝綱

神話の話
イザナギとイザナミの不具の子が
葦の船に乗せられ、海に流された
摂津の国に流れ着いたヒルコを
摂津の浜の人たちは
「可哀そうに」と救った

1700年もたった現代も
えべっさんとして
篤く信仰されている

西宮神社

外から、知らないところから
立派な神様がやってきたから
その神様を祀る国は多い

イタリア・シチリア島 アグリジェント

弱者だから
大事にしてあげないといけない
弱者を神様にする
というような国は
そうそうない

五穀豊穣とか商売繁盛とか
家内安全とか合格祈願とか
病気平癒とか交通安全とか
手を合わすだけでなく

ヒルコを「可哀想に」

と祀ってきた日本人の心持ちは
どんなだっただろうか?

4 えべっさんが背負ってきた物語

日本の神話には
強者の神話・物語よりも
敗れていく人たちの物語が多い

日本は弱者を大切にする
風土であった

源平合戦、南北朝、戦国時代、関ヶ原の戦い
戊辰戦争で、逃げていく人たち
弱者・敗者たちを

優しく、労わった

えべっさんを信仰するなかで
無数の「救い」があり
全国に広がっていった

えべっさんは
海運の神から
市の神、商売の神
農耕の神、芸能の神になり
全国区になっていった

「商売繁盛で笹もってこい…」
という商いだけで
えべっさんをとらえてはいけない

えべっさんが背負ってきた
ストーリーが大事

日本人が
「なにを信じて、どう生きてきたのか
どう救われてきたのか
いかに守られてきたのか」

ということに、思いを致すことが大切

日本人が承継しつづけた
えべっさんの物語に

寛容と融和

という日本人の心を観る

おそらく物語の源となった
エピソードがあったのだろう
不具の子どもも、受け入れた
戒という字から、渡来人も受け入れた

日本人は
外から来た人々も
寛く受けいれ
つつみこみ
混ざり合っていった

大切なことは
外から、異なる形で、やってくる

ということを伝えつづけてきた

SDGsが国際社会の目標となっているが
日本はずっと昔から
その本質を実践してきた

そのニッポン
それを忘れてしまいつつ
あるのでは

外の人とは
自分とは異なる人には
無関心
敬遠する
混じらない

現代の赤頭巾ちゃんは
寄り道はしない
オオカミに挨拶しない

どうなる?



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