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卵の自給自足を体験するニワトリのレンタルサービス

 地方の郊外で一戸建てに住むことの醍醐味として、家庭菜園を楽しめることがある。自然の土に触れながら、季節毎に収穫された野菜を家族で食べる生活をすることは、健康な食生活に回帰する手段として有効であるし、子どもの教育にとっても良いことである。

米国でも一戸建ての家庭では、自家農園が盛んに行われているが、野菜以外にも対象が広がっており、ミミズの飼育や、水槽キットで魚を養殖することこと、さらにニワトリの飼育にチャレンジすることも人気となっている。

しかし、一般の家庭がニワトリを飼うのは簡単なことではなく、飼育スペースを作り、野生動物から守るための飼い方を学んで、各州によっては、伝染病を防ぐための規則にも従わなければならない。

そこで、ペンシルバニア州のある起業家が、手軽なニワトリのレンタルサービス「Rent the Chicken」を2013年から開始して、現在では一般家庭の他に、小中学校や老人ホームなども顧客となっている。

このサービスでは、400~700ドルの料金で5~11月までの半年間、2~4羽のニワトリ(雌鳥)をレンタルすることができ、飼育用のゲージやエサ代なども、料金に含まれている。ニワトリ1羽は毎日およそ1個のペースで卵を産むため、1週間で1~2ダースの卵を採ることができ、一般家庭が自給自足をするには十分な量になる。

住宅街でニワトリを飼育には、鳴き声が近隣に迷惑になることも心配されるが、“コケコッコー”と大きく鳴くのは雄鳥のほうで、雌鳥は迷惑になることは無いという。雌鳥のみでも卵を産むことに支障は無いが、ヒヨコになる有精卵が欲しい場合には、雄鳥とペアで飼うことにも対応している。

ニワトリの寿命は約10年と言われており、7~8年は卵を産むことができるが、良い卵をたくさん産むのは、生後3年までと言われている。同サービスでは、半年サイクルでニワトリを引き取ることにより、常にコンディションの良い鳥をレンタルできるように配慮している。また、ニワトリの体調不良で卵を産まない場合や、野犬などの被害に遭った場合も、交換に応じている。

業者が鶏舎で大量生産している卵は、ニワトリの成長を促すための、ステロイド剤などを混ぜた飼料が使われており、人体への影響が懸念されているが、こうしたレンタルサービスで、各家庭がニワトリを飼育すれば、安全でヘルシーな卵を毎日食べることができる。

「Rent the Chicken」では、アリゾナ州、フロリダ州、ミシガン州など、全米各地にある農場と提携する形で、ニワトリをレンタルできるエリアを拡大している。(都会に近いエリアほど、農場運営費など原価コストも高いことから、レンタル料は高くなる)

同社は小中学校とのパートナーシップも組んでおり、スーパーで売られている卵しか見たことのない子ども達に、ニワトリが産む卵による自給自足を体験できる機会を与えている。学校でニワトリを飼育する場合には、夏休み期間の世話をすることが難しくなるが、学校向けにはレンタル期間を4月~6月と、9月~11月と分ける配慮もされている。

また、老人ホームでもニワトリを飼育(レンタル)することが、高齢者の孤独を癒やして、健康の改善や認知症対策になることが報告されている。愛玩用のペットを飼うことでも心は癒やされるが、ニワトリと触れあいながら、毎朝産む卵を食事としていただくことは、生きることへの原動力にもなる。

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