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自宅演奏を収益化するミュージシャンの新たなライブ配信文化

 音楽やスポーツなどの分野で行われてきたリアルイベントも、コロナ危機を転機として観客を密集させることが難しくなり、オンラインイベントへと切り替わっていくことが予測されるが、そこではイベントの収益構造も変化させていく必要がある。

前提となるのが、リアルイベントと同等のチケット価値が、オンラインイベントにあるのか?という点である。これから5Gの時代となり、映像のクオリティが向上するとしても、実際の会場で得られる臨場感には適わないため、これまで7千~1万円で売れていたチケットを、オンラインイベントでも同額で販売することは難しくなる。その代わりとして、ネットの視聴者を大量に集めることができれば、ファンクラブの有料サブスクリプション、スポンサー広告、グッズ販売(eコマース)、視聴者からのチップや投げ銭(オンライン課金)などの収入が期待できる。

一方、オンライン上のイベントは運営経費を安く抑えられるため、やり方によってはリアルイベントよりも収益性の高いビジネスモデルを築くことも可能だ。たとえば「Stageit」は、新型コロナの影響で多くの音楽イベントが中止となる中、有名アーティストの利用も増えているライブ配信のプラットフォームだ。

Stageitを使うと、ミュージシャンは自宅からでも有料でライブ配信を行うことができる。ファンがライブに参加するには、Notes(ノート)という単価のオンラインチップ(1ノート=10セント)を購入する必要があり、ミュージシャンが事前に設定したチケット代をNotesで支払うか、ライブの途中でチップとして渡すことができる。

Stageitで行われるオンラインライブの平均チケット単価は5ドル相当だが、チケット価格の設定と販売数は、各アーティストの裁量に任されている。たとえば、3ドル相当のチケット単価で無制限に販売しても良いし、10ドル相当の単価で100人に限定販売することや、最初の25人は5ドル、次の25人は10ドル、残りの50人は15ドルというように、チケットの早期購入特典を与える売り方もある。

また、100人のファンに対して5ドルのチケット単価でライブを行った後、高額のチップを払ってくれた上位20人のファンに限定して、アンコール演奏+チャットセッションを行うような、プレミアサービスを加えることもできる。

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このように、安価なチケットとチップによって稼いだ収益の63~83%はアーチスト、残りがStageit側の手数料となっている。通常、リアルな会場で行われるコンサートでは、チケット価格に対する演奏者の取り分は、メジャーなアーティストでも10~15%と言われているが、オンラインライブの収益性はそれよりも高い。

Stageitで行われるライブは、アリーナコンサートにように数ヶ月前から計画されるものではなく、FacebookやTwitterで数時間前に告知して、チケット販売を開始する手軽な形態が多い。それでも、固定のファンを持つミュージシャンは、一晩のライブで数十万円を稼ぐことも可能になっている。

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