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日本でイノベーションを起こすために、破壊すべき3つの岩盤とは?

日本は、イノベーション不毛地帯に見える。典型的な指標は、ユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の非上場ベンチャー)数だ。2019年2月CBinsightのデータでは、米国151社、中国82社、日本1社である。なお中国は、レジェンドキャピタルという投資機構の綿密な調査では220社もあった。当然ユニコーンのすそ野にあるベンチャーたちも、この数に比例すると考えられる。日本は情けないほど少ない。日本のイノベーションに必要な改革は何だろうか。中国との比較を通じ考えてみたい。

■企業のガバナンス改革

日本企業のジャッジの遅さは、もはや世界の奇観の1つだ。最近、アリババのジャック・マー会長が、日本企業の取締役会は、ごま塩頭の中年男ばかりだ、と指摘した。これも奇観の1つである。同じ世代で、似たような経験をした生え抜き組が多く、価値観に大した差異はない。熱心なのは派閥争いくらいである。こんなメンバーで一体何を決められるというのか。

これに対し、中国IT巨頭BATJ(バイドゥ、アリババ、テンセント、ジンドン)は社歴そのものがせいぜい20年である。ごま塩頭たちのサロンなどはなく、20代の社員がアプリ開発の前面で活躍中だ。彼らは開発者兼消費者として、社会の最前線にも立っている。

一方、日本の若手社員に求められるのは、稟議、根回し、プレゼンテーションの技術である。本業とは関係のないスキルばかりだ。普通、天は二物を与えない。独創的な発想力を持ち、しかもプレゼン能力の高い人は少ない。くだらない社内慣行を繰り返しているうちに、やる気も失せ、提案自体もカドが取れてしまう。取締役は自らの存在証明のため、どうでもよい会議ばかり招集している。今や中小企業すらこの傾向に陥っている。日本の労働生産性が、先進国最低水準に沈んだのもうなずける。

固定的な部課のマネージャー制度から、プロジェクトチーム制または社内起業制とし、提案力のない人間を排除すべきである。

■行政改革と地方分権

中国は経済運営に関しては、中央集権ではない。もちろん国務院級の重要マターはいくつもある。しかし、そこで承認さえ取ってしまえば、省のさらに下、広域市(日本の県に近い)が実質的な権限をふるう。また中央から“指導的意見”が出ても、その解釈や罰則の制定は地方政府だ。

主体的に動かなけばならないため、地方間競争は激しい。かつては外資導入競争が目立っていた。現在の戦場は、中国流“新経済”を目指す活動全般に拡がっている。新経済とは、大衆による創業 万衆の革新、サプライサイドの構造改革等、政策の進行に伴い、AI、IOT、ビッグデータ等の技術進歩が加速、常に産業や業態、ビジネスモデルが刷新される状態だ。

そのためにAI、IOT、ビッグデータなど企業を内外を問わず誘致し、ベンチャー企業を育てなければならない。

さらに成果をアピールするためには、看板事業が欲しい。例えば現在では、無人運転バスなどの試験走行ニュースが目白押しだ。競争の成果によって“社会実装”の進行は素早い。規制ありきではない。いちいち中央政府にお伺いを立てる必要もない。

日本で新業態に挑もうとする場合、中央政府に水も漏らさぬ完璧な計画を提出し、承認を受けてから、やっと動きだす。ベンチャーには荷が重く、何よりこのスピード感では話にならない。行政改革、地方分権は必須である。優先順位は財政再建の比ではない。

■余剰金の出動

日中の若者は、育った環境が正反対だ。この30年間、中国の経済成長は歴史的な高水準だった。鄧小平のスローガン“発展是硬道理”を地で行った。かたや日本は、この間、停滞の極みだった。名目GDPは5兆ドル前後で、ほとんど変わっていない。人は経済成長しなくても幸せか?という新テーマに取り組んでいたように見える。

日本は先端技術の実装で後れをとり、有力なプラットフォーマーも出てこない。中国のようなITイノベーションは起こらなかった。取柄は、きめ細かい職人技とおもてなし精神だけになりつつある。そして日本の若者は保守的となり、最も出世意欲が低い国民となった。

それでもやはり若者に期待するしかない。2018年末の家計資産に占める現預金、984兆円、日本企業の内部留保金463兆円(金融・保険業を除く)を、いかにベンチャー投資に導くかポイントである。現状のプラットフォームでは不十分だ。ベンチャー投資部門でも有力ベンチャーが求められている。

■まとめ

日本のイノベーションのため、破壊すべきは、企業ガバナンス、中央政府、個人と企業のため込んだ余剰金、この3つの岩盤である。日本には莫大な資金が眠っている。こんなに恵まれた国はないだろう。とにかくアイデアを出し合い変わっていこう。中国を参考にするのもよい。2014年以降に起こった数々のイノベーションは、新しいネットインフラを存分に利用したものだ。きっとヒントが眠っているはずだ。

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中島嘉一(プラスチャイナ CEO / 36Kr Jap...

プラスチャイナ株式会社CEO / 中国スタートアップ専門メディア 36Kr Japan 顧問 / 23歳から10年中国滞在 / 上海で起業 / 日経COMEMO KOL / NewsPicks注目ピッカー

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