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「ガストロノミー」の歴史的背景と料理の類型

これまで多くの論考の中で「ガストロノミー」という言葉を、美食文化と定義したり、美食に秩序を与える役割といった文脈で語ってきた。しかし、言葉には、その言葉が生まれた経緯、歴史がある。そこで、本稿では、「ガストロノミー」という言葉が生まれてきた歴史的背景と、その背景で発展してきた料理の類型を、フランス料理を中心にしながら考えていきたい。

「ガストロノミー」の歴史的背景

現代では美食文化と捉えられる「ガストロノミー」は、さかのぼること紀元前4世紀中ごろ、料理人で詩人のアルケストラスが美食を求めて地中海を漫遊した際の詩編「ガストロノミア」に起源を持つ。古代ギリシア語で「gastro」が胃袋を意味し、「nomy」は法則を意味する。

その後、大航海時代を経て、フランスは世界各国から食材を調達できるようになった。料理書に登場する野菜の種類は、16世紀後半から17世紀にかけて倍増する。肉料理は、豚肉に加え牛肉と羊肉の割合が増加し、様々な部位が使用させるようになり、料理書の中で肉の部位が次第に多様化する。このように、料理において使用できる食材の選択肢は飛躍的に増加し、その結果料理の多様性もここに大きく開花した。

こうした背景から、gastronomyは、the science or art of choosing and preparing foodと定義されるようになる。様々な食材から何を使うのか選択し、料理を創造する科学であり芸術であるという定義に昇華したのだ。この視点は、現在のビジネスにも通じるところがある。テクノロジーの進化により、活用できる経営資源のオプションは多様化している。その中で何をどう選択し、組み合わせ、価値を創出するのか考えるのが、経営者の役割である。

フランスにおける料理の類型

19世紀から20世紀にかけてフランスを代表する美食ジャーナリストであったキュルノンスキーは、フランス料理を4つの類型に分類した。

1.大がかりな料理

2.一般市民の料理

3.田舎料理

4.郷土料理

一見、田舎料理と郷土料理の区別がつきにくいが、田舎料理とは、田舎の家庭で供される料理のことである。郷土料理は、それぞれの地方で歴史に則って供される伝統料理で形式も重視されたものである。このように考えていくと、「形式、型を重視した大がかりな料理、郷土料理」と、「家庭で日々供される一般市民の料理、田舎料理」に分類することができる。また、キュルノンスキーは、産業革命以降の都市と地方の分断を意識していることから「都市部の大がかりな料理、一般市民の料理」と、「地方の田舎料理、郷土料理」という分類も可能となる。

このような分類は、日本料理にも中華料理にも当てはめることができる。類型化の軸は、もちろんこれだけではないが、今後も料理芸術研究の一つの軸として検討していきたい。

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名古屋商科大学ビジネススクール 教授。専門は、経営戦略、マーケティング、デジタルマーケティング、ラーメン。日経COMEMOキーオピニオンリーダー
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