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次世代型店舗から考える、店舗体験のデジタル化によるメリット

はじめまして、株式会社プレイドでコミュニケーションディレクター(というのを勝手に名乗って)やってます川久保です(プロフィールはこちら)。COMEMOのキーオピニオンリーダー(KOL)として記事を発信する機会をいただきましたので、これから私たちがサービス、メディア、イベントなどを通じて取り組んでいるCX(顧客体験)の視点を元に、ニュースや記事について考えてことを発信していきたいと思います。

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2018年1月にオープンしたAmazonの無人コンビニ「Amazon GO」は当時大きな話題を呼びました。以降、Amazon GOのような次世代型店舗に向けて、各社の取り組みはCEATECやリテールテックJAPANのような見本市で目にすることはあるものの、普通の生活で触れる機会はありませんでした。

そのため、日本の日常に実装されるのはまだ先なのかなと思っていたら、今年になっていくつかの取り組みが出てきたので、このような店舗についてCX(顧客体験)の観点から考えたことを書いてみます。

きっかけはこの2つの記事です。

来店客は欲しい商品を棚から持参したかばんなどに直接入れ、精算機で決済するだけで買い物を完了できる。

約40平方メートルの売り場の天井に約30台のカメラが取り付けられており、商品棚の重量センサーなどと合わせて来店客や商品の動きを捕捉。商品を持ったまま出口の精算機の前に立つと購入の意思があると判断される仕組みだ。

カメラは客の年齢や性別などの属性データは収集しないが、どの棚の前で立ち止まったか、どの商品を手に取ったかといったデータは集められる。得られたデータは品ぞろえや商品の配置などにも生かす考えだ。
店舗入り口で店舗QRコードを読み取り、買いたい商品のバーコードを売り場でスキャンする。画面上の支払いボタンをタップすると、事前に登録したクレジットカードで決済が完了する。退店時は決済完了を示すQRコードを専用端末に読み取らせる。

アプリの利用はベルクカードの会員登録が必要で、クレジットカードのほか専用レジで現金でも支払える。

高級スーパーの紀ノ国屋が無人決済の小型店を、食品スーパーのベルクが自分で読み取り、決済ができるアプリをリリースしたという話です。

また、同じような取り組みの話として、イオンリテールはレジゴーという仕組みを徐々に導入し、東京だと有明ガーデンのイオンスタイルで体験ができます(下記は、先日体験してきたときのものです)。

このとき、「アプリ化してほしい」と感想を書いたのですが、下記の記事によると「専用アプリの開発」と「EC機能との融合」も今後予定されているそうです。

ローソンもレジ無し店舗の実験を進めていましたね。

上記からも分かるように、同じレジ無しの店舗だとしても、自動ですべてを読み取るAmazonGO型と、ユーザーが自分でスキャンをするレジゴー型に分けることができます。

Amazon GO型とレジゴー型の違い

勝手に分類しちゃってますが、それぞれの特徴は下記でしょうか。

Amazon GO型
店の中に配置したカメラやセンサーで来店者と商品の動きを追い、商品をスキャンすることなく、どの商品をバッグに入れたかを記録する。

メリット
・スキャンの手間が省けるので、少人数で店舗を運営できる
・買った商品だけではなく、「どの棚で興味持ったか」、「どの商品を手にとったか」という情報も取得できる。
・上記の情報をメーカーへの情報提供をおこなうことで、メーカーは顧客を知る情報を増やすことができる

デメリット
・カメラやセンサーなど、店舗の設備への投資が必要になる
・カメラやセンサーの都合上、入店の制限が必要になる可能性がある
・商品について正確に読み取れていない場合に不便になる
レジゴー型
専用端末やスマホのアプリを使い、来店者が自ら商品をスキャンして精算する。

メリット
・スマートフォンでバーコードを読み取るだけなので、大きな投資の必要はない
・端末にクーポンやおすすめ商品を、買い物状況に合わせて配信できる
・スキャンの手間が省けて、レジ待ちの時間が減る

デメリット
・Amazon GO型のように、店舗内でのデータの取得が難しい
・来店者にスキャンを委ねるため、来店者にとっては一手間である

メリットとデメリットが裏表なことも多く、これだけではどちらが良いか決めることが難しそうですね。

顧客視点で考えてみる

それでは、顧客にとってどういう体験になるか、顧客にとっての価値は何なのかという観点で、この2つの違いを見てみます。

Amazon GO型
・アプリや端末を気にせずに、商品を取るだけで買い物が完結するので便利
・Amazon GOのように、アカウントを明示して入店する場合には、そのまま決済まで完了できる。また、自分の購買の履歴も貯まり、それに応じたおすすめなどが後日提示される可能性があり、継続的な関係となりえる
・アカウントを明示せずに入る場合には、スムーズに入れるが、決済の手間があり、自身のデータも貯まらない。つまり、一回限りの関係が続く
レジゴー型
・画面を見ながら買い物ができるので、その時点での金額がわかる
・自身でスキャンする体験はちょっと楽しい(実体験です、慣れると面倒になるかも)
・スマホやタブレットの画面の中で、現在の買い物に合わせたクーポンやレシピなどが配信され、便利な場面がある
・自分のアプリで操作する場合には、決済まで完了できる。また、アプリに今後もクーポンやオススメが配信される可能性があり、継続的な関係となりえる

顧客の立場で考えてみると、「その場での操作性、快適さ」と「それを利用することで、自身に還元されるメリットがあるかどうか」の2点が大きなポイントであるように感じます。どちらを優先するかにより、現在の次世代型店舗の設計の違いがありそうです。

「操作性、快適さ」でいうと、Amazon GO型はその場での体験をゼロに近づける方向であるのに対し、レジゴー型はその場での体験を新たに追加する方向であると思います。向いている矢印の方向が違って面白いですね。

「自身に還元されるメリットがあるか」の観点では、自身のアカウント、端末からの操作である(自身のデータを提供している)場合には、両者とも顧客の価値に還元していますね。データを提供する代わりに体験に還元される、この部分はとても重要だと思います。

これを今までの買い物体験で考えてみると、ポイントカードに似ていますね。自身の購買履歴を提供する代わりにポイントで還元される。このような金銭的なメリットは大きそうですが、店舗体験のデジタル化は金銭的なメリット以外にも顧客にメリットを還元することが可能になります。

例えば、「買い物の途中に今まで考えたことなかった組み合わせのレシピを提案してもらえ、食卓で盛り上がった」や「定期的に購入する日用品を買い忘れていたが、アプリに通知が来て思い出せた」など、店舗体験がデジタル化することにより、このようなサービスを提供することが可能です。

デジタルの技術が生活の中にも普及してきたことによって、顧客とのつながりを活かして継続的なサービスが増えていきます。店舗体験のアップデートとしてのデジタル化が果たす役割も大きいですが、店舗以外での体験も含めたサービス化の起点という考え方で捉え直すとさらに新しい価値が提案できる可能性がありますね。

Amazon GO型とレジゴー型、どちらの形式がより顧客にとって価値となりえるか。それは、サービスとしての体験としてどちらがより価値を感じてもらえるかが鍵になりそうです。

次世代型店舗は、人手不足やコスト削減の文脈で語られることが多いですが、その店舗体験、サービス体験は顧客にとってどう価値があるのか?という観点で見ていくと面白そうですね。

ちなみに、私の地元でもある福岡市を拠点にするスーパーのトライアルは上記で紹介したAmazon GO型とレジゴー型の融合のような取り組みを既に実施されています。

このような店舗が一般的になるのか、もっと違う形が発展してくるのか。これからもいろいろな取り組みがでてくると思うので、継続して見ていきたいと思います。

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CX(顧客体験)にフォーカスしたビジネスメディア「XD(クロスディー)」を運営しています。企業が顧客体験をよりよくするためのヒントを、様々な観点から発信しています。

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Cover Photo by Mat Reding on Unsplash

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博報堂を経て、2015年よりプレイドに参画。現在はコミュニケーションディレクターとして、CXプラットフォーム「KARTE」のコミュニケーション領域を担当する傍ら、CXカンファレンス「CX DIVE」統括とCXにフォーカスしたメディア「XD(クロスディー)」副編集長を務める。