待望の新作ゼンレスゾーンゼロの中国での評価と中華モバイルゲームの世界の狙い方
中国ウォッチャーの皆さん、ゼンレスゾーンゼロはプレイしていますか?日本でも大人気の「原神」や「崩壊:スターレイル」でおなじみのスーパーゲーム企業miHoYo(海外はHoYoverse)が出してきた新作です。7/4のリリースは中国でもネット民たちが盛り上がっておりました。
このゲーム、開発が開始されたのはなんと2020年。4年以上の期間を経て、幾度もの出る出る詐欺情報や、β版テストプレイなどを経て待望のリリースだったので、中国ネット民が歓喜でした。XやYoutubeを見る限り、日本の皆さんもかなりプレイしているようですね。
グローバルでも屈指のゲームブランドとなったHoYoverseは当然世界を狙ってゲームを作り、リリースし、各国での現地化や巧みなマーケティングでヒットさせてきます。このあたりのヒントが詰まっているような記事やレポートを見つけたのでシェアします。日本の皆さんにも参考になるかなと。
■ゼンレスゾーンゼロの中国での評価
ゼンレスゾーンゼロ(中国語では绝区零)は7月4日のリリース時の朝11時には国内のユーザー登録数が1500万人を突破。また、リリース初日にiOSの売上ランキングで3位にランクインしていて、これはmiHoYoのリリース初日の数字としては記録更新とのことです。
正式リリースまでに、β版のテストバージョンがいくつもリリースされ、日本の皆さんも登録した人が多かったかもしれません。また、事前登録するとゲーム内アイテムが貰えるなどの特権もあり、リリース前の時点でなんと460万人の登録者がいたといいますから驚きです。
このあたりの中国ゲーム企業の戦略などは、以前書いたnoteをご参考に↓
ゲーム関係者などは、ゼンレスゾーンゼロがリリースから3カ月で約10億ドルの収益を上げると予測していますが果たして。一方で、初期リリースは盛況だったが、それはmiHoYoのブランドによるもの。過去作品の原神などのリリース時と比べると微妙なのではないかとの評価も見かけます。
その理由の多くは、ゼンレスゾーンゼロの本質がアクションゲームであり中国の現在の主流とは異なる点。この流れもmiHoYoの原神が生み出したものですが、過去5年間、多くの会社がオープンワールドゲーム(プレイヤーが自由に探索でき、あらゆるタイプのゲームプレイを追加できるタイプのもの)を開発してきたトレンドがあります。
プロデューサーのインタビューも拝見しましたが、「楽しいアクションゲームを作ることがゼンレスゾーンゼロの一貫したゴール」と語っていました。アクションシーンには尋常ではないこだわりと細かいチューニングが施されていて、ボクもプレイしてすごいなと思いました。
志を持って作りたいものを作って世にリリースすることは、個人的には大変素晴らしいことと思います。ただ、一方で原神や崩壊などに比べ、ゼンレスゾーンゼロには世界探索の深さが欠けていることや、ゲームの流れが単調(倒すだけ、歩くだけ)で退屈になりがち。SNSでも感想が投稿されていて
”アクション爽快感”を極端に追求したもので、一部のファンにはたいへん人気があるものの原神のように幅広い層に受け入れられることは難しいだろう、という評価も多く、ネット民の議論も盛んです。今後どこまで人気になってくるかは注目です。
大人気ゲームの原神についても、初期の頃での開発体制や、ゲームをどこまで大衆向けにするかの葛藤や失敗を経て今があります(このあたりの話は長くなるので、皆さんの興味があったら別途noteに書きます)。きっとゼンレスゾーンゼロも進化してくるでしょう。
■中国モバイルゲームのレポートが興味深くヒント満載
ゼンレスゾーンゼロの中国での評価の紹介が長くなってしまいましたが、肝心なポイントの一つは当然のようにグローバル展開をしていること。各地域でのユーザーを考慮して開発やマーケティングを行っていて、例えばゼンレスゾーンゼロの日本語プレイ時、主役の一人の声優はSPYFAMILYのアーニャでおなじみの種﨑敦美さんという力の入れよう。
彼らに限らず、中国のゲーム企業はグローバル市場で卓越した成果を上げ多くの海外ユーザーを獲得しています。Business of Appsのデータによると、中国のモバイルゲーム収入は現在、世界全体の31.7%を占めていて、2027年には中国のモバイルゲームの収益は約400億ドルを超えると予測されている。
プラットフォームのLiftoff Creative Studioが「2024 年中国游戏厂商出海报告(2024年中国ゲーム企業の海外展開レポート)」を発表していて、中国のモバイルゲームの主要市場におけるコスト、ROI、インストール転換率のベンチマークなどが分析されていました(レポートのURLは参考資料にはっておきます)。
まず面白かったのは、エリアごとの分析について
北米は中国モバイルゲームの重要な市場ですが、圧倒的レッドオーシャン。iOSデバイスでは、中国のモバイルゲームの北米地域での1インストール当たりコスト(CPI)は8.19USDで、これはアジア太平洋地域の2倍以上。一方で欧州・中東・アフリカ地域のiOSデバイスのCPIは2.52ドル、Androidデバイスは0.69ドルでかなり差があるというデータ。
国別では韓国、米国、日本が中国モバイルゲームの主要市場。ここはユーザー獲得競争が激しく、1インストール当たりの平均CPIはそれぞれ8.02ドル、7.68ドル、7.27ドル。
この図を見てもわかるように、韓国、アメリカ、日本の3カ国は他の国に比べてCPIが圧倒的な高さですね。日本企業で、日本人向けにゲーム作ったり、北米だけを狙っている方々は明らかにメタ戦略では辛い道に進んでいる気が。。
一方、下位三カ国はフィリピン、ブラジル、メキシコで上位とは相当な差があり、最近の中国のモバイルゲームが東南アジアと中米を重点開拓市場としていることは理に適っていますね。
レポートでは他にも、どういった広告がどのエリアで効果的なのかなどのデータがまとめられていたほか、業界全体、各社のAI活用の例などが書かれていました。ちなみに、AI活躍ゲームで日本発でのヒット作と中国の皆さんの評価については以前紹介しましたね。
長くなってきてしまいました。ゲーム業界でのAIの活用方法は中国でもさまざまな例が出てきていて、とてもおもしろいので別途書きます。ぜひフォローしてお待ちください!
(参考資料)