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「安心な居場所」ばかり探していると「居場所に独りぼっち」になる

イギリスの猿真似で孤独担当大臣なんか作ったものの、人と一緒に過ごすことを社会的圧として強要される西洋社会と一人でいることをネガティブではなく必要と考える日本人とでは「孤独」に対する考え方は大きく異なる。

「孤独を感じる人が4割もいる」ことをそも重大事のようにいうが、孤独を感じることと孤独を苦痛に感じることとは別物である。

私の調査では、基本的に「孤独を苦痛に感じる」割合は男女年代問わず1割程度しかいない。つまり、孤独を感じる4割のうち75%は、むしろ孤独である時間を楽しむことができるのである。

そして、重要なのは、この「孤独を楽しめる」という境地こそが、これからのソロ社会において求められてくるスキル。逆にいえば、人生において一度も「孤独を感じたことがない」人や「孤独である時間や状態を苦しいとしか思えない」人こそが、これから絶望の瞬間を迎えるだろう。

孤独とは生きている以上必ず感じるもので、孤独なき人生など存在しない。三木清は「孤独は人と人との間にある」と論じたが、まさにその通りで、大都会で大勢の人々に囲まれている方が孤独を感じるのだ。なぜなら、人と相対し、会話したり、議論したり、いろんな感情が起きることそれ自体が孤独なのである。自と他というものを意識した時に孤独は生まれる。

そうして生まれた孤独は、自己の内面と向き合う意味でとても重要な体験なのである。ある意味、それは無意識下で、自分自身の中にある「さまざまな自分」と対峙接続することでもあり、時に大きな創造性やひらめきを生む原動力となる。古今東西、何かを発明したり、アイデアを生み出した人とは内向型人間が多い。

コロナ禍の3年間で、多くの人が感じたことがうる。在宅勤務で最初は家族といつも一緒にいられて幸せだと思ったかもしれないが、四六時中一緒にいることでかえってストレスになった人もいるだろう。毎日の通勤時間なんて無駄と思っていたかもとれないが、コロナ後通勤を再開して、あの一日のうちの1-2時間通勤で「一人の時間を得られる」ことがいかに大事かに気付いた人もいるだろう。何も考えず、ぼーっとつり革につかまっている時間もまた必要な時間だったのだ。

人間は内向性と外向性が半々いるが、決して内向性100%や外向性100%の人間などいない。両方の要素をあわせもって、時と場合と相手によって出しわけている。どっちかではなく、両方必要で、人によってどっちかの量の配分が多い方が快適であるというだけのことだ。片方がゼロなら、いずれにせよストレスになる。

要するに、「孤独」というものは誰かと接続すれば必ず生まれるものであり、それを消化するために自分自身の中に一旦とりこんで「どうなの?これ」と自分の中にたくさんいる自分と対話するために必要な体験である。それこそが自己のメタ認知というものである。

孤独を楽しめない者は、自分自身を認識できないに等しい。そういう者が定年後、会社という所属するコミュニティから追い出された瞬間に、自分そのものを喪失し、絶望し、一日中テレビだけ見て過ごし、わけのわからないことに怒りだけを覚え、かわりに喜びや悲しみという感情表現をすっかり忘却し、定年後5年以内にストレスで急死していくのだ。

そんな末路にならないためにも、孤独とはなにか?自分と接続するとは何か?自分の中にいるたくさんの自分とは何者か?という点を把握しておいた方がいいだろう。

そんな新刊が3/31に出ます。「居場所がない人たち」という本です。ぜひポチっていただけると幸いです。


勘違いしないでほしいのは、「居場所が必要なんだ」という本ではないということ。むしろ逆で、人生に必要なのは居場所ではない。

どう抗ってもソロ社会は到来するし、結婚したところで最期はまた一人に戻る。「所属するコミュニティ」は決して永遠ではない。問題なのは「居場所がない」ことではなく「居場所だけに依存している」こと

結婚するしないとかの話ではなく、独身は不幸だとか孤独は悪だとかそういう一部界隈が煽る恐怖ビジネスに惑わされることなく、不毛な独身vs家族などという対立論に巻き込まれず、まずファクトを知り、その上で自分の接続先を増やしていくという視点が大切じゃないの?という話をしています。

2020年現在、もう既に日本には15歳以上の独身者は約5000万人います。若い独身より中年以降の独身の方が多い時代です。既婚者にとっても無関係な話ではない。「安心な居場所」だけに固執していると、いつの間にか「居場所に独りぼっち」になる。それこそが孤立です。

本のコピーに「家族・職場・地域に頼らない生き方とは」とか書いてあるけどそうじゃない。むしろ逆で頼っていい。むしろ頼れる生き方をしなきゃいけない。が、家族だけ職場だけという唯一依存になることが危険なのである。頼れる接続先が沢山あればあるほどいい。頼れる先はずっと一緒である必要もない。

ご期待通りの身も蓋もない話もたくさんありますが、現実世界はそもそも身も蓋もない中でどう生きていくかという話でもあると思います。感想・書評お待ちしています!

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO27485560Y8A220C1MM8000/

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長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。