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核家族の寿命とシニアリロケーションの新市場

 不動産市場では築25~30年を経過した中古住宅の売り物件が増えている。売り主の中には、高齢になり、郊外の一戸建てを売却して、交通の便が良いマンションへ引っ越すという人が少なくない。子供が独立してしまえば、広い家である必要も薄れてくるためだ。

近年の老後プランとしては、有料老人ホームよりも、病院や買い物に行くのに便利なマンションへの住み替えのほうが人気になっている。老夫婦が2人で暮らすのに十分な間取りであれば、一戸建を売却した資金でも購入の目処が立つ。昔のように、子供世帯と同居をするのではなく、夫婦のみ、または単身で暮らす老後スタイルが最近の主流である。

※出所: 平成30年版高齢社会白書

老夫婦のみの世帯は、やがて二人が亡くなれば空き家となるため、相続した身内が、中古住宅のままか、建物を壊して更地として売却する流れになる。これからの不動産業界では、こうしたマイホーム環境の変化に対応したサポートが必要になってくる。

「核家族」の家族形態が急増しはじめたのは、1960年代頃からのことだが、核家族には寿命があり、その期限は、結婚してから夫婦が亡くなるまでの60年前後とみるのが妥当だろう。その中で、マイホームの住み替えは以下のようなサイクルになっている。

《核家族のマイホームサイクル(昭和~平成)》
○第1期:男女の結婚………賃貸アパートからスタート

○第2期:子供の誕生………郊外の戸建住宅を購入(住宅ローン)

○第3期:子供の独立………生活に便利な小さなマンションに住み替え

○第4期:老夫婦の死………住んでいた家の売却(相続人:子供)

結婚から子どもの誕生、子育ての時期に該当する「第1~2期」のマイホームの取得については、従来の不動産業者が得意としてきた市場だが、子どもが独立した後(核家族の第3期)のマイホーム住み替えは、高齢者向けの丁寧な対応が必要となり、大手よりも個人の不動産業者のほうが適している面がある。これから、高齢者の住宅売却が増えてくることは間違いないが、家を売ることを決断した経緯や、その後の人生計画はそれぞれ異なり、個々の相談対応やサポートが求められる。

老夫婦が亡くなった後に、家を売却するケースでも、遺言や相続が絡んでいるため、従来の不動産業だけではカバーできない専門知識も必要になってくる。その点では、不動産仲介を軸として、高齢者の生活支援や終活、相続までのサポートをするスモールビジネスは成り立ちやすく、特に40~50代の起業テーマとして適している。高齢者の心情が理解できて、手厚いサポートができるのは、若い担当者よりも、彼らに近い世代のほうが適しているためだ。

【シニアリロケーションの新市場】

 高齢者の住み替え支援については、米国で「シニア・リロケーションサービス」というビジネスが成長してきている。リロケーション(relocation)とは、転勤などで留守になった家の管理を代行、賃貸に出して家賃収入を得るサービスのことを指しているが、シニア・リロケーションは、高齢者の住み替えに必要な作業や手続きの全般を代行するようなイメージである。

日本の高齢化ほどではないが、米国でも、65歳以上の世代が増加して、2030年までには総人口の20%を超すことが予測されているため、高齢者の住み替えに関する市場が浮上してきている形だ。

シニアリロケーションのビジネスは、1人でも起業することが可能で、高齢者の住み替えに関するプラン作成やマネジメントをして、具体的な作業については、外部の業者に委託するような流れとなる。マネージャーの報酬単価は業者によっても異なるが、初回の相談は無料、正式契約をした後のプラン作成などにかかる報酬は、1時間あたり40~50ドルが相場になっている。

さらに、外部業者に引越作業やリフォームなどを委託する中では、発注額の1割をマージン収入として得ているケースが多い。シニアリロケーションでどんな作業が必要になるのかは、案件によって異なるため、充分なカウンセリングを行った上でプランを作成し、すべての作業を取り仕切って、安全で最適な住み替えを実現させるのが、シニアリロケーション・マネージャーの役割といえる。

日本では、故人の家財道具などを処分する「遺品整理業」に参入するリサイクル業者が増えているが、高齢者の住み替えを専門にサポートしている業者は、まだ少ない。日本に核家族の形態が定着したのは、昭和40年頃からの話だが、その時代に家族を築いてマイホームを取得した人達の中では、人生最後の住み替え需要が生じている。

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