
EVは救世主か?リスクか?
2024年の欧州での電気自動車販売台数で英国がドイツを抜いて初めての首位になった。その背景には、ドイツが補助金というアメを廃止し、イギリスがゼロエミッション車の義務化というムチを付加したこと、がある。製造業で力を発揮してきたドイツは、そもそもロシアからの安いエネルギーを使って、中国に製造業輸出をしていたドイツ経済の低迷が、気候変動対策という中でEVにかかるコストがかかり過ぎたことも一つの供給ショックの遠因となって、深刻化してしまっていることがここでもわかる。ドイツはこのところ絶不調だ。
EUの自動車市場を見ると、新規自動車登録台数は減少しており、残念ながら衰退中と見ざるを得ない。とはいえ、EVの総販売台数が自動車市場を上回っており、この傾向には逆行している。EVの中でも、HEV(ハイブリッド)へのニーズは手堅く、成長の原動力となっているが、対照的にBEV(バッテリー電気自動車)とPHEV(プラグインハイブリッド)は減少傾向。EVに舵を切るべきだったかもしれないが、その失策が目立ち、VWは国内工場閉鎖を検討、結局は見送ったものの人員削減には乗り出したし、タイヤのミシュランや自動車部品ボッシュなどもリストラが必要になってくる状況にある。
中国や米国の自動車販売、とりわけEV自動車の伸びが堅調であることを見ると、欧州自動車の混乱ぶりがより顕著になってくる。EV自動車のコンセプトのみならず、シェアカーの実験など、欧州自動車の気候変動対策も含めた対応は決して遅かったわけではないのではないか。それでも、今やEVはリスクになっている。
欧州自動車はEV自動車をひっさげ、どう立ち直るのか。しかし、2024年11月現在の市場シェアを見ると、中国のEV市場は中国市場のうちの52%、米国は同22%止まりなのに対し、欧州は56%である。市場シェアが大きいということはそれなりにニーズがあることでもある。もともと欧州の自動車には一定の人気もブランドもある。EVは明らかにゲームチェンジャーとなったが、まだ出来ることはあるのではないか。低コストで、真似できないかっこいいEV自動車を出すことで、欧州自動車の捲土重来は不可能ではない、とは思うのだが。