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3組に1組が離婚。そのハードボイルドな理由とは?【データ09】

最新の人口動態統計2016年でみると、離婚数は216,798件、人口千対の離婚率で1.73でした。2015年と比較して離婚数も離婚率も若干減少していますが、それはそもそも婚姻数の絶対数が減っているからであり、決して離婚が減少基調にあるということではありません。離婚を婚姻数で割り戻した、いわゆる特殊離婚率は相変わらず35%ですし、しかも、2000年以降ずっと35%以上をキープしています。これがマスコミでいう「3組に1組は離婚する」という言説の根拠です。

では、離婚の原因とはなんでしょうか?

司法統計から、協議離婚以外の離婚申し立て理由を見てみると、男女とも1位は「性格の不一致」です。男の6割、女の4割がこれを理由としてあげています。芸能人の離婚会見でよくいわれる「あたりさわりのない理由」ですね。

もちろん、「性格の不一致」も重要なポイントかもしれませんが、それ以外の理由を見た方がより実態が明らかになります。司法統計では、申立人の言う動機のうち主なものを3個まで挙げる方法で集計しています。「性格の不一致」を除き、細かく分類された選択肢を、金銭問題や暴力問題などにまとめて分類して独自に作成したグラフが以下です。

これを見ると、女性の離婚理由の40%が「金銭的問題」です。有体に言えば、旦那が「働かない」「浪費する」という理由です。つまり、妻側にとっては経済的な理由が「性格の不一致」に匹敵する離婚の大きな動機となっているわけです。

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一方、夫は、妻との別居、すれ違いの生活や性生活の不満など、どちらかというとエモーショナルな部分の理由が多い。妻が40%を占める「金銭問題」は、夫の場合半分以下の16%に過ぎません。

結婚を決意するのも金ならば、離婚を決意するのも金、それが女性の本音なのかもしれません。

一方、家庭内での配偶者の暴力、いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス)による申し立ても少なくはありません。妻22%なんですが、意外にも夫側も8%も存在します。警察庁が発表した「2015年ストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等の対応状況」によると、2015年のDV被害者(相談案件ベース)の男女比は1対9で、圧倒的に女性被害者が多いのですが、実は、夫の被害者数もここ数年で7倍近くに増えています。

もっと注目したいのは、夫婦双方とも相手の「精神的虐待」が「身体的暴力」よりも上位にきているということです。「精神的虐待」とは、罵詈雑言だけではありません。本人にはハラスメント意識がない小言、嫌味や「お前は何もわかってない」などの見下し発言なども、それを日常的に繰り返すと、十分離婚が認められる理由に該当するようです。最近では、家計や子育てに対する責任転嫁発言も、程度によっては「精神的虐待」に相当します。

最終的に「性格の不一致」という離婚理由に落ち着くのだとしても、その大きな元凶は「金と暴力」と言えるのかもしれません。結婚生活もハードボイルドなものですね。

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