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ポストコロナの旅行市場で求められるキャンセル保険

新型コロナのワクチン接種が進につれて、旅行業界では旅行者が戻ることに期待をかけている。世界で大多数の国は、パンデミック後に外国人の入国を制限してきたが、ワクチン普及後は、渡航の数日前に発行された陰性証明書を携行することを条件に、入国規制を緩和してきている。 米国、中国、英国、韓国などでは、日本人の渡航者に対して、フライト出発前3日以内に取得した陰性証明書の提示を条件に、入国を許可するようになっている。

日本の経済産業省では、海外渡航で陰性証明を義務付ける国が増えていることに対応して、「出国者PCRセンター」の整備を進めている。一例として、日本医科大学が成田国際空港内に、2020年11月から開設しているPCRセンターは、検査受付→検体採取→検査→証明書発行までを、最短2時間で行うことができる。検査は、空港のセンター内に設置された全自動遺伝子解析装置「GENECUBE」で行われ、料金は証明書発行料込みで30,000円となっている。

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成田国際空港PCRセンター

【旅行業界で導入されるキャンセル保険】

新型コロナの感染が広がる前、2019年の時点で日本人の出国者数は2000万人。これから海外旅行者がどこまで戻るかは、新型コロナの収束がいつになるかでも変わってくるが、その中で旅行予約のキャンセルに対応した「Trip Cancellation Insurance」と呼ばれる、旅行キャンセル保険の市場が成長している。

これまでにも、旅行会社のツアープランに申し込む際には、旅先での病気や事故に備えた旅行保険が標準で付帯しているか、オプションで申し込めるのが一般的だが、コロナ後の旅行業界では、申込者が自己都合でツアーをキャンセルしても、旅行代金の補償がされる旅行キャンセル保険へのニーズが、高額の旅行プランで高まることが予測されている。

旅行キャンセル保険は、旅行費用の5~10%を保険料として払うことにより、自然災害、体調不良、その他の理由によって旅行を中止した際に生じる、航空機、ホテル、レストラン、レンタカーなどの予約キャンセル料が、保険によって補償される仕組みだ。保険料の条件は、旅行者の年齢、目的地、旅行日数、キャンセルをする理由によっても変わってくる。

コロナ禍では、とりあえず数ヶ月先のツアーを予約しておき、旅行当日までの感染状況が悪化してくれば、理由を問わずにキャンセル補償が受けられる「Cancel for Any Reason Travel Insurance (CFAR)」というタイプの保険が人気となっている。

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「InsureMyTrip」は、旅行者が計画しているツアープランに対して、適切な補償を提供してくれる保険を検索、比較検討して、保険契約までをサポートしている旅行保険の見積もりサイトだが、その中でもキャンセル時の補償内容は保険選びの重要な条件になっている。

たとえば、30代の家族が1泊2日のハイキングに出かける短期旅行と、60代の夫婦がクルーズ船で長期旅行に出かけるのでは、後者のほうがキャンセル補償を厚くしておく必要があり、直前のキャンセルでも、旅行代金が100%返還される保険に加入しておくことが望ましい。

また、Airbnbのような民泊物件の予約をする際にも、スタンドアローン型の旅行キャンセル保険に加入しておくことが、コロナ禍の旅行計画としては推奨されている。

Airbnbのキャンセルポリシーは、物件ホストによって「柔軟(チェックイン24時間前からキャンセル料が発生)」「普通(チェックイン5日前からキャンセル料が発生)「厳格(チェックイン14日前からキャンセル料が発生)」など複数の設定がされているが、宿泊者がキャンセル保険にしておけば、旅行日直前のキャンセルでも、Airbnb、ゲスト(宿泊者)、ホストの3者すべてが損失を被るリスクは少なくなる。

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InsureMyTrip

日本でも、旅行キャンセル保険は開発され始めており、損保ジャパンの子会社で少額短期保険の「Mysurance(マイシュアランス)」では、国内旅行に限定した「Travelキャンセル保険」を2021年3月から立ち上げている。

この保険は、事前予約をした、宿泊を伴う国内ツアー、日帰り旅行、ビジネス出張などをキャンセルした時に、キャンセル理由によって、30%~100%の旅行代金を補償するもので、保険料は、旅行代金が5万円の場合で1,280円、旅行代金が10万円の場合で2,560円となっている。行政の外出自粛要請や、コロナ感染による入院、自宅療養による旅行キャンセルにも対応しているが、その場合の補償割合は、旅行代金の30%までとなっている。

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Mysurance Travelキャンセル保険

ワクチン接種がスタートすることで、徐々に普通の生活に戻っていくことが期待されるが、感染確率がゼロになるわけではないため、自費によるPCR検査、旅行キャンセル保険などの需要は、個人と法人の両方で伸びていくことが予測される。感染リスクは意識した上で、前向きなレジャーや経済活動に取り組むことをサポートする各種のサービスは、今後数年のスパンで成長していくことになりそうだ。

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