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なぜ今オープンイノベーションか

なぜ今「オープンイノベーション」が必要なのでしょうか。20世紀は、標準的なモノやサービスを国の隅々まで行き渡らせることが事業の役割でした。この時、仕事を「標準化」し、そのプロセスやルールを「横展開」することで生産性が向上しました。しかし21世紀の社会は「変化」と「多様性」を求めており、画一的なモノやサービスの価値は急速に低下しています。従って、標準的なルールを作り、それを守るだけでは、価値を生み出せません。

 我々は、むしろ常に「実験と学習」を行い、恐れず変化を生み出す人に変わる必要があります。ここで実験とは、いわゆる技術的な実験に限りません。社会が求める大きな目的の実現に向け、常に仮説を実験により確かめつつ、必要なことは何でも行うことが求められます。まず追求すべき大きな目的があり、大きな目的であるほど不確実なので、実験と学習を続けることが必要です。同時に大きな目的ほど、必要な資源は幅広くなるので、企業や分野の垣根を越えた協力が必要です。これが「オープンイノベーション」という21世紀の働き方なのです。この目的から出発する発想は、これまでの供給サイド/技術サイドからの発想とは大きく異なります。

 昨今、データに関心が集まっていますが、実は、データは万能ではありません。20世紀を代表する知的偉業が、クルト・ゲーデルによる「不完全性定理」です。この定理が証明したのは、いかにAIが発達しようともデータから読み取れる未来は、その可能性のごく一部であり、我々の本当の可能性は無尽蔵であることです。

 この無尽蔵の未来の可能性を追求するのが「実験と学習」を通じた「オープンイノベーション」です。従来から研究者は不確実な中でも前進できるプロ集団です。これからの研究者は「実験と学習」の対象を、従来の狭い技術の世界に留めず、より広い社会の課題に拡げることで、よりよい社会に向けた根本的な課題を解決する可能性が拡がります。

 この歴史的な転換点に立ち会える幸運に感謝し、倦まず弛まずオープンイノベーションを通じて、未来という無限の可能性を開拓したいものです。


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