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農業ヘルパー制度を活用した「地方移住」のお試しプラン

 田舎暮らしに憧れを抱く人は多いが、移住を成功させるには幾つかの準備段階をクリアーしていくことが望ましい。その中でも、地方生活の満足度に大きく関わってくるのが、地域や隣人との人間関係である。ご近所・お隣さんとの関係さえ上手くいけば、移住生活の8割方は成功したといっても過言ではない。

しかし、人間同士の相性は、実際にその土地に住んでみないとわからない。実際の生活をしてみて、地域の人達と馴染めないようなら、あっさりとその場所は諦めて、違う移住先を探した方が良い。その点では、移住前の段階で、いきなり不動産を購入してしまうのはハイリスクである。

まずは賃貸物件を借りて、短期の生活をしてみて、そこで友人や仲間関係ができるようなら、本格的な住み処となる物件を探すのが良い。家探しのリアルな情報は、不動産サイトではなく、地域で親しくなった人から聞いたり、紹介してもらうのがベストだ。そのためにも、移住のお試し期間は重要である。

こうした、お試し移住の方法として活用できるものに、「農業ヘルパー」の制度が全国的に広がっており、田舎での農業に関心がある人にとってはお勧めだ。農業ヘルパーは、人手不足の農家や農業法人が、苗植えや収穫の繁忙期のみ短期で人材募集するもので、時給や日当単位での給与も支払われる。期間は1週間程度から数ヶ月間のものまであるが、上手に日程調整をすれば、現在の職場で有給休暇が取れる範囲で参加することも可能だ。

地域によっては、農業法人が募集するヘルパー人材に対して、助成金を出したり、宿泊場所の斡旋をしているケースもある。農業ヘルパーの仕事は、季節毎に募集があるため、仕事に慣れると、翌年も同じ農業法人で採用してもらえる可能性が高い。農業ヘルパーの求人情報は、各自治体のホームページに掲載されている他、JAでも農業専門の求人サイトを立ち上げるようになってきている。

たとえば、北海道富良野では、「JAふらの」の関連会社を通して、農作業ヘルパーの募集をしている。7月から10月下旬にかけて3週間以上勤務できるのが条件で、時給1000円(月25日の勤務で月給20万円程度)、男女別の宿泊施設(個室)も用意されている。

その地域での住みやすさや人間関係の良し悪しは、観光旅行ではわからないことが多く、短期でも地域の人達と働きながら、同じ釜の飯を食うのは大切なこと。海外では、農場やリゾート施設などが、移住体験をしたい人を対象に、繁忙期の人材募集をすることは広く行われており、それらの仕事は「seasonal jobs(シーズナルジョブ)」と呼ばれている。

都会の住居を引き払って、完全な移住をすることには勇気がいるが、年間を通して数週間程度のシーズナルジョブであれば、手軽に実行することが可能だ。そこで信頼関係が築けた職場では、翌年以降もリピート採用してもらえることも多いため、旅行とは違った田舎生活の体験を重ねていくことができる。

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