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投資における著名人の役割を考える

昨今の株価の上昇で、改めて個人の投資意欲が高まっているという。アメリカのそれは、この記事では「投機熱」として紹介されている。日本でも、日経平均株価がバブル以来の3万円越えとなったことは、こうした動きを後押しするものになっているのだろう。

こうしたなか、著名人の関与が投資家、特に個人投資家のお金を呼び込むことに一定の役割を果たすことは、間違いないだろう。

これについてはプラス・マイナス両面があり、一概に否定されるものではないけれども、マイナス面についても十分に認識した上でその是非を考える必要がある。

未公開会社・事業の買収を目的に設立される会社・SPACについて、アメリカで一種の流行になっており、そこに著名人が関与することによって個人投資家のお金が流れているが、これが必ずしも投資家にとってプラスになるかどうかは分からず、気をつけなければいけない、というのがこの記事の趣旨である。

無数の金融商品・投資機会があり、どこに投資したら良いのかをプロのように網羅的に見て判断することが難しい個人投資家にとって、著名人が関わっていることにより注目が集まりお金が集まる図式は、否定できないものがある。

投資面でも社会的にも良い案件でありながら、見出されず注目を浴びることがないために十分にお金が集まらない、あるいは、さらに多額のお金が集まるなら事業の成長が早くなり成功の確率が高まることはあり得る。このために、著名人が投資機会を周知する役割を果たすことは、プラスの効果を期待することが出来るだろう。

一方で、投資の本質を考えた時に、第一義的にはお金を増やすことが目的にあることを考えると、その目的に本当にそれが投資家にとって最適なものであるのか、また投資先がお金を生む仕組みが社会的に見て是認されるべきものであるかどうか、ということについては慎重な判断が必要なのだと思う。

SPACではないが、日本でも著名人であるサッカー選手本田圭佑氏が関わって設立された投資ファンドが、事実上解散となったという報道が先日あった。

これについても上に述べたことと同様で、本田選手という著名人が関わることによって多くの人の注目が集まり、そこにお金が集まってスタートアップへの投資に関心を持つ人が増えることは、日本のスタートアップ全体の活性化及びスタートアップを次の時代を担う企業として成長させていくためには非常に意義深いことだと思う。

一方で、著名人の関わるファンドが、金融面で十分な体制を整え、投資家の期待に応えるのに十分なものであるかについては、きちんと検証されなければいけないだろう。

もちろん、著名人の関与がなくても、こうしたファンド運営の行き詰まりは起こりうるだろう。ただ、著名人が関わることで、その知名度の大きさに過度に依存し、体制の面で十分な対応が取られないままにファンド運営がスタートし、それがファンド運営の支障となるなら、今後著名人が関わるファンドについてネガティブな見方が広がってしまう恐れがある。そうなると、せっかく著名人の知名度によって注目が集まることの効用をそいでしまうことになりかねない。

このファンドも、設立のこころざしは共感できる内容が含まれていただけに、解散となってしまったことは残念だ。

どんな国でもそうかもしれないが、特に我が国においては、大企業・既存企業に対する「信仰」が厚く、一方でそうした企業の少なからぬ割合で、十分な新陳代謝を得られないままに曲がり角を迎えていると感じられる現在の状況を考えると、スタートアップが次の世代の日本の産業を牽引する存在になっていくことの意義は他国にも増して大きいと、個人的には考えている。

それを思う時に、著名人が果たす役割は少なくなく、むしろ大いに期待している。それだけに、著名人が関わる動きには、十分な体制や対応が取れるような慎重さ、用意周到さを求めたい。

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