データで紐解くオンラインイベントのマネタイズのポイント
コロナ禍の中、オンラインイベントの開催数はどんどん増えています。Peatixが公開した「オンラインイベントに関する調査レポート」でも、オンラインイベントの増加数は明らかです。
オンラインイベントのマネタイズの状況の変化
リアルイベントの開催が難しい状況下でオンラインイベント自体の盛り上がりは明らかですが、主催者の中で「オンラインイベントでマネタイズ出来るか」という課題が多く聞かれるようになりました。実際、オンラインイベントの開催が増え始めた2020年2月-4月上旬、ビジネス関連のイベントなど多くのイベントは「無料」でした。個人的な意見ではありますが、このコロナ禍初期の頃は「この状況はゴールデンウィークの頃に終わるだろう」「短期間であれば、その間はファンづくりの為に無償でイベント開催しよう」と考えるケースが多かったと思われます。そして何より、まだオンラインイベントの配信に不慣れなことがあり、「なにか配信に不手際があるかも知れないので課金は難しい」という考えも多くあったのではないでしょうか。
しかし、オリンピックが延期され、この状況の長期化を世間が実感し始めると、「コンテンツを永続的に無償で提供するのは難しい」、「有料化を検討したい」と考える主催者が増えてきました。実際、Peatixにおいても、緊急事態宣言発令後の4月中旬頃から、「有料」オンラインイベントの数は増加していきました。調査データでも下記のとおり、「オンラインイベントで売上をあげる方法として、実際にためしたもの、検討しているものを選んでください。」という質問に対し、下記のとおり回答されています。
ダントツで多かった回答は「有料チケットの販売」で66.7%でした。なお、オンラインイベントのマネタイズ方法として注目されていたスマホ決済や個人間送金サービスを利用しての「投げ銭」は合わせて30.5%となっており、多くの主催者は「有料チケットの販売」をマネタイズの軸に考えていることが分かります。
なお、音楽業界では既にサザンオールスターズがオンライン無観客コンサートを大成功に導いたり、世界を見てもタイではオンラインフェスが盛り上がり、収益化につながっているだけでなく、新たなファンの獲得に成功しています。
オンラインイベントの有料化に関しての試行錯誤
さらにイベント主催者に有料イベントの開催意向を聞いたところ、下記のとおり回答がありました。
過去に有料イベントを開催していた主催者の中で、オンラインイベント開催の際も有料にすると答えたのは54.4%と約半分でした。「無料」は12.3%と少ない一方で、有料・無料「どちらも」開催する主催者が33.3%となりました。つまり、元々有料イベントを開催している主催者の約9割はオンラインイベントの「有料化」に意向があるのです。
一方、無料イベントの主催者が、オンラインイベント開催時に「有料」にするケースも7.9%ありました。このデータからも、オンラインイベントのマネタイズに関して、主催者が試行錯誤していることが分かります。
「有料」と「無料」の使いわけ
「リアルイベントは有料で開催している、オンラインイベントは無料で開催している」と回答した主催者にさらに深掘り、「オンラインイベントを無料にする理由」を伺ったところ下記のとおり回答がありました。
この回答から、どこの場所からでも気軽に参加できるオンラインイベントの特性を活かし「多くの人に見てほしい」という理由が45.9%ある一方で、「有料チケットを売るのが難しい」という回答が33.6%あることが分かりました。このデータから、無料にすることで参加のハードルを下げ、より多くの人にコンテンツを届けたいと考えている主催者の割合が多いことが分かります。そして、「有料にしたい」けれども「難しい」と考えている主催者の悩みが読み取れます。
有料オンラインイベントの満足度
データからも多くの主催者が有料にしたいと思っていても難しいと考えていることが分かるのですが、なぜそのように考えるのでしょうか。
「オンラインイベントの配信トラブルが懸念」「有料にすると参加者が少なくなってしまうのではないか」「有料にした場合に参加者の満足が得られるかが心配」などが理由と考えられます。
では、有料のオンラインイベントの参加者は「不満足」だと感じているのでしょうか?こちらも有料のオンラインイベントに参加した人への調査データを見てみましょう。
こちら、有料オンラインイベントに参加したことがある方への満足度調査の回答ですが、実に85%以上の方が「有料イベントに満足」していることが分かります。
満足している理由としては、「遠方から/自宅で参加できた」という参加しやすさや、「アーカイブが残る」などの理由が多く、今までよりもセミナーなどを通じて学びやすくなり、楽しむことができたとの回答が目立っていました。
一方で、「有料イベントに参加しない」理由に関しては、下記のとおり回答が出ています。
「無料でも十分に面白いイベントがある」という理由が6割を超えており、有料オンラインイベントの最大の競合は、魅力的な無料イベントとなっています。
オンラインイベントのチケットの価格帯
コンテンツ次第では有料にしても問題がないことが見えてきましたが、次に考えるのはチケットの価格帯です。オンラインイベントとリアルイベントのチケットの価格帯は変わるのかデータを見ていきたいと思います。
こちら、リアルイベントとオンラインイベントの価格帯ごとの割合の算出データですが、無料のイベントの割合はそれほど変わらないのに対し、オンラインイベントでは2000円未満のチケットが32.8%と、リアルイベントの17%に対し倍くらいの割合となっていることが特徴となっています。
オンラインイベントでは集客人数にキャパシティが無い分、平均単価が低くなっても、申し込み数が増えることで、収益面がカバー出来るという点も考えられます。リアルイベントの時とはチケットの価格帯を変えることで、「より多くの人」に参加してもらう流れを考えてみては如何でしょうか。
まとめ
これまでデータを元にオンラインイベントにおける有料イベントの実態について見てきましたが、多くの主催者が不安に感じている「有料イベントにすると参加者が満足しないのでは無いか」という部分に関して、しっかりとコンテンツを提供することで問題が無いことが見て取れました。
価格帯に関しては、リアルイベントと比較すると低単価のケースが多いですが、会場代が掛からない、集客人数にキャパシティが無いことなどを考えると収益面でもしっかりとカバー出来ます。
有料にするのか無料にするのかは、イベントの目的や内容によって都度判断になりますが、「有料にしたいけど、どうしよう。。」と考えている主催者の方は前向きに有料化を検討して良いのではないでしょうか。
これからも素晴らしいオンラインイベントが増えることを楽しみにしています。