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大企業の落とし穴を回避せよ!MAKESHIFT→→SHIFT MAKER 姑息な手段こそ、変化を生み出す第一歩!

こんにちは、スマイルズ野崎です。気が付けば新年が明けてしまいました。
今年もよろしくお願いします。

さて毎度入りが一緒なんですが、 スマイルズは自社事業に加えて、外部企業のコンサルティングやプロデュースなどもお手伝いしております。

スマイルズの会社の特性上か、既存商品やサービスに関するブランディングやプロモーションのお手伝いをすること以上に、企業における新ブランドや既存ブランドのリニューアル、あるいは社内スタートアップなどのプロジェクトで伴走することが増えてきています。所謂0⇒1的なプロジェクトや、1をいったん限りなく0に戻して、新しい1を作るプロジェクトなどのことですね。

このようなプロジェクトに数多くかかわっていると、新規事業にはそのローンチを阻む様々な壁が存在していることがわかります。

例えば

・マネジメントのモノサシの壁
・会社と個人のモチベーションの壁
・個人の与信の壁
・エビデンスのリアリティの壁

詳しくは過去の記事で述べています。

この記事の中では、「新しいことは、実行したことがある人しか実行できない」という結論に達してしまいました。解決不能なパラドックスに陥るという映画の結末のような虚無感を与えてしまったかもしれません。

しかしながら実際は、スタートアップや、独立起業というような術をとらずとも、企業内にて革新的な新しいこと(ここでは新規事業に拘わらず、これまでの企業内成功法則を逸脱した商品やサービスを指しています)を行う方がいらっしゃいます。

少し以前に取り上げさせていただいたローソンストア100のウインナー弁当を開発した林さんもその一人ですね。


苦節10年、やっとこさウインナー弁当をローンチさせた後、第2弾であるミートボール弁当はウインナー弁当発売からわずか半年でのローンチとなりました。

結果が伴えば、その後は突然オセロがひっくり返ったかのような状況変化。これもまた企業論理における真ですよね。
林さんの場合は、どのようなプロセスでウインナー弁当ローンチの道を切り拓いたのかはインタビュー記事から推察するしかできないのですが、10年という歳月を考えると、兎にも角にも真正面から自身の熱量と確信をもって突き進んでいたのかもしれません。


それはそれで執念を感じるのですが、僕だったら10年粘ることができる気がしないなぁ、、、と考えてしまったりもします。

「10年かけずに企業内で新しいことを生み出す方法論」とは?

そこで今回は「10年かけずに企業内で新しいことを生み出す方法論」について考えてみたいと思います。 ちょっとこんな記事を発見しました。

アマゾンのすごみは「小売業の破壊力」でなく、「連続起業力」にある

筆者はアマゾンの凄みを「連続起業力」としています。
要は「組織的にイノベーションを起こし続ける仕組みを持っていること」ということだそうです。
そして、イノベーション量産の方程式として、

「ベンチャー起業家の環境」×「大企業のスケール」-「大企業の落とし穴」
=最高のイノベーション創出環境

と表現しています。

ここでは、「大企業の落とし穴」がイノベーションを阻害する大きな要因となっているわけですが、僕が”壁”と称したそれよりも大企業ならではの粒度の細かさがありますね。

ここでの「落とし穴」へ向けた回避方法は、企業やマネジメントサイドとして取りうる施策です。経営する端くれとしては大変参考になるわけですが、この落とし穴が埋まっていない企業ではやっぱり”新しいこと”を起こすことはできないのか、なんて落胆した方もいらっしゃるかもしれません。

この方の著書を管理職の方や経営者に突き付けて勉強会を開くのも一手ですよね(笑)。

それと同時に、新規事業や新しいことを起こそうとする会社の中の個人自身が新たな武器を持つ必要があると僕は感じています。

それがこれからご紹介するMAKESHIFT(姑息な手段)です。

そもそも姑息ってなんなんだ?

姑息(こそく)の本来の意味は?

姑息  [名](形動) しばらくの間,息をつくこと。転じて,一時のまにあわせに物事をすること。また,そのさま。一時しのぎ。その場のがれ。
「日本国語大辞典 第2版」(平成12~14年・小学館)

ということだそうですが、ここから転じて、「卑怯な」というさまを表現する言葉として用いることが一般的ですよね。辞書によってはこの「卑怯な」という使い方は誤用であると述べているところもあるようです。

僕たちはこの「姑息」こそ、窮地を何とか”いい感じ”でしのぐ、あるいは突破するためのプロジェクトプロセスにおけるクリエイションだと考えています。

即ち、この手段そのものは何ら本質的ではないかもしれないが、それによって齎された結果とその積み重ねによって新たな本質を映し出す、あるいは理解・共感を得るための手段となる、なんて考えているわけです。

例えばこんな経験が皆さんにもあったかもしれません。

・・・僕も学生時代は、とりたてて将来の目標もなく、ただ漫然と受験戦争に巻き込まれていたのですが、その受験戦争を突破するための様々な勉強法を編み出していました。英単語を語呂合わせで覚えるなんてのは、まさにほぼすべての受験生がやっていたであろうMAKESHIFTですよね。ちなみに僕が生み出した語呂合わせの最高傑作は「ブリッと弾丸=BULLET(銃弾・弾丸)」。英語を学んでいく過程における本質はまったくと言っていいほど捉えていないのですが、強引にでも数千語の単語に新しい語呂合わせを生み出し、頭の中に叩き込んでいくことで、苦手分野との距離を縮めていきました。途中からはほぼこの語呂合わせを考えることが趣味化したりなんかして…

弾丸

そのほかにも物理・科学においては「三国志勉強法」、数学においては「RPG勉強法」など様々なMAKESHIFTを編み出して、何とか受験戦争を突破していったわけです。

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結果的にその学問の本質を理解したというよりは、自分の前に突き付けられた壁を突破するための手段と人間の行動発意の本質を学んだわけです。

意外と皆さんの生活の中でも、様々な壁を突破するためのMAKESHIFTが存在していたんじゃないでしょうか?例えばお年玉のせびり方とかね。そしてそのMAKESHIFTこそが学びを与えてくれていたなんてこともあるでしょう。

しかしながら、働く局面においてはついつい正面突破を挑みがちじゃないでしょうか。それが会社の仕組みだからとか、上司の聞きわけが悪いと外部環境のせいにして。

そもそもSoup Stock TokyoはMAKESHIFTから始まった!

食べるスープの専門店『Soup Stock Tokyo』も創業してから早20年を過ぎました。スマイルズ創業者の遠山正道が三菱商事在籍時代に当社のコーポレートベンチャー0号として立ち上がった事業です。そのローンチまでの道のりが抜群に姑息だったんですよね。

遠山写真_KFC蕎麦屋時代

遠山さんは当時情報産業グループに所属していたそうなのですが、自身の個展をきっかけに社内起業をおこなうことを企てます。それが今の『Soup Stock Tokyo』に至るわけですが、まずは三菱商事のグループ会社であった日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社(以下KFC)へ出向します。この出向への布石も非常にMAKESHIFTな手段を使っていたのですがそこはこちらの書籍を読んでいただければ克明に記されています。


KFCの大河原社長や三菱商事の当時の外食ユニットのマネージャーであった新浪さん(現サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長)へのプレゼンテーションを経て、新規事業としてローンチする運びとなるわけですが、その産声をあげた場所は三菱商事でもKFCでもなく、大河原社長の個人会社の事業として立ち上げたそうです。

所謂”出島”ということではありますが、『Soup Stock Tokyo』の場合は、”出島”のさらに”出島”で立ち上がったということですね。

新規事業となるとどうしても他部門からの横やりやら、縦の社内決裁の煩雑性などによってどうしてもスピード感をもって動くことができないのが世の常(笑)。社内政治に翻弄されて結局何をしたかったんだっけ?なんて当事者の動機が薄れていくなんてことはよくあることです。三菱商事にとっても前例のなかったであろう当時は、今の比ではないほど見えない壁が存在していたのではないかと考えられます。

SSTヴィーナスフォート_001

既存事業とは”離れた島=出島”を経営者あるいは当事者が意図的に作り出すことで、既存事業から精神的に分離することは、以前よりはアクセラレータープログラムなどを通じて新規事業開発を行うことが当たり前の経営課題となった現代においても、初期段階ではやはり有効な手立てと考えられますね。

決裁者が分からないことを判断する最大の与信は外にあり!?

新規事業はなんせ会社の中でもやったことのないことを判断せざるを得ないケースが多いですよね。実のところ社内の決裁者においても正解や、KFS(成功のカギ)がわからないなんてこともよくあります。結果的に判断不能なため、棚上げされてしまうなんてこともしばしば。どこまでロジカルに説いたとしても、リサーチなどのエビデンスを取っていたとしても実経験が決裁者にないがゆえに”ピン”とこないわけです。さすがに決裁者も全知全能というわけにはいかないようです(かく云う私も似たようなもんですが)。

比較的新規事業に寛容な弊社でもやっぱりそれなりの投資案件となると簡単にはいきません。以前ご紹介した『刷毛じょうゆ 海苔弁山登り』もその一つでした。日本初!?かはわかりませんが、みんな大好き海苔弁の専門業態なんです。その業態を興したのは当時弊社のネクタイブランド『giraffe』の事業部長でした(現・株式会社海苔弁山登り 代表取締役)。その時点で?が3つぐらい浮かびそうですが、彼はきっと虎視眈々と狙っていたんですね。

GINZA SIX店

経営会議でもたびたび話題にはあがっていたんですが、僕を含めた役員二人の中ではあまり合点がいっておらず、うやむやにしてしまう日々。しかしながら、気が付けば銀座の一号店の内諾をデベロッパーからとってきたんです。もはややらざるを得ないという状況とでもいうか、外部からの評判や賛同を盾にして役員会での決裁を取り付けるに至りました。当然本人にとっての確信や数字的算段があったことは言わずもがなですが、ロジックを固めて内部を中央突破するより、外周から一気に攻め込む方が腹落ちしてしまうという真実。。。

社内説得より社外アサイン!
外堀を埋めることから始めることに活路があるわけですね。
それを僕自身が身をもって中側として体感したのでこれこそ真だと思います。じゃあこの社外アサインのためには、担当者自身の社外関係資本(外部人材との関係値)が非常に重要なわけです。新しいことを実行したい方は会社の中だけでなく、いやむしろ外に関係値を築くことをお勧めします。

「ヒトのフンドシで相撲をトル」

この言葉、あまりいい意味では使われないことが多いようですが、ビジネスの世界では案外重要なポイントかもしれません。

ビジネスの世界でも、リスクをテイクして伸るか反るかの大勝負は美談として語られるもの。映画化したくなるようなストーリーです。

そんな大ごとだから燃える人も当然いらっしゃるとは思います。ただ大半の人はそんな大勝負を目の前にしてしまうと、尻込みをして結局やらないイイワケを作ったり、いろんなリスクを鑑みて中途半端なアウトプットになってしまうんじゃないでしょうか。

「飛び越えないといけない奈落の底に通じる崖があったなら、トランポリンを張ってから飛んだ方が寧ろ大きく飛び越せる」。なんて思うわけですね。
そこでなるべくリスク回避をしながらも実行するためには、全てを自前では行わず誰かのフンドシを巻いてみる、あるいは誰かの船に乗ってみることも肝要。

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先に出た海苔弁業態も最初はJALの機内食で提案したことが始まりでした。実際に飛行機の上に乗っかり、好評も得たことで次に繋がっていきました。

またこのコラムの中でも過去にたびたび登場した企業のB品やデッドストック品あるいは新しいサイクルへ向けた取り組みを紹介するイベント『PASS THE BATON MARKET』もこの例に当てはまります。

そもそも『PASS THE BATON』自体は今から10年以上前、セレクトリサイクルショップとして丸の内にOPENしたのが始まりです。当時としてはかなり斬新なコンセプトでした。単なるリサイクルショップではなく、出品者の方々のプロフィールや出品物に対する思い・ストーリーを載せてそれごとまるっと次の誰かへバトンをお渡しするといったものでした。だからリサイクルショップによくある”安かろう、悪かろう”といった商品は扱わないし、どこかで買えそうなものもない。お店に行けばいつも新しい発見や刺激に満ち溢れていました。その後表参道や京都にも出店し、またオンライン上でも同じく展開していくことでその可能性を拡張していきました。

しかしながら業容が拡大すればするほど、その手間暇は倍々で増えていってしまいます。なにせとにかくアナログで、丁寧に出品者お一人お一人からお話を伺いながら出品物を選び取っていったので。お店が増えても生産性はなかなか上がらないわけです。またそうこうしているうちに、メルカリなど新しいサービスも生まれ、CtoCが当たり前化していく中で、もはや初期の役割は終焉を迎えたといった側面もありました。

ちょうどそんなころに偶然にも事業部長を任されたのが僕だったのです。元々の『PASS THE BATON』という概念は大切にしつつも、もっと軽やかに価値を伝えることはできないだろうかと考えた時に生まれたのが『PASS THE BATON MARKET』だったわけです。

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しかしながら、既存事業が必ずしも堅調ではない中で新たな方向へ舵を切っていくには、人的リソースもさることながら、金銭的リスクを鑑みるとなかなか踏ん切りがつかないものです。人的リソースについては、何とか社内の別組織(偶然僕自身が別組織のクリエイティブチームを束ねていたので)をアサインすることができたのですが、大きな投資が掛かってしまうと私自身も会社としても二の足を踏んでしまう。
要は「それって儲かるの?本当に大丈夫?」みたいな。

そこで方々駆けずり回っていた時に、偶然にも東京・京橋に本社を構える戸田建設のご担当者の方と出会い、ちょうど戸田建設さんが本社屋の建て替えを計画していて、解体までの期間で何か未来の京橋エリア開発へ向けたPRができないか考えていたことを聞きつけました。そんなことがきっかけで『PASS THE BATON MARKET vol.1』を戸田建設さんの京橋旧本社屋にて開催するに至りました。

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京橋エリアは、今となっては大企業のオフィス集積したビジネス街の印象がありますが、元々は職人の町として栄え、今でも骨董通りがあったり、美術館があったりとモノヅクリや文化の集積地でもありました。改めてこの街に光を当てなおすことと、企業の倉庫の中に眠っていたモノに光を当てなおすことは、偶然にも親和性があったわけですね。戸田建設さんのご厚意と多大なる支援もあり、有難い条件で間借りさせていただくことが可能となりました。更にはもともとアパレルが入っていた区画や解体途中であった区画をまったくいじることなく利用したことで、極力費用を抑えて開催にこぎつけることができたわけです。敢えて、手を入れずほぼありのままの空間を会場にしたことで、京橋にはいままで出現したことのない空間が生まれました。 解体途中の埃舞う現場で、良品計画の金井会長や面白法人カヤックのCEO柳澤さんにご登壇いただいて開催したトークセッションは、普段のセミナー会場の雰囲気とは一変し、誰も体感したことのないものになっていたことでしょう。

結果的に1回目ながらも多くの方にご来場いただき、イベントとしては想像以上の成功を収めたことが今日の状況に繋がっていったわけです。

単に小さくやってみる(所謂リーンスタートアップ)も大切ですが、ヒトのフンドシをありがたくお借りしながらヤリタイコトをヤリタイ規模感でやってみることもとても大切です。

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今回は新しいことをやるためのMAKESHIFT(姑息な手段)として、

「出島を創る」
「外堀を埋める」
「ヒトのフンドシ」

の3つを紹介しましたが、これらのアプローチもそこそこ大ごとです。

次回はもっと簡単に、今日から実現できそうなMAKESHIFTをご紹介したいと思います。

この記事を書いた人

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野崎 亙(のざき わたる)
株式会社スマイルズ/取締役CCO/Smiles: Project & Company 主宰

京都大学工学部卒。東京大学大学院卒。2003年、株式会社イデー入社。3年間で新店舗の立上げから新規事業の企画を経験。2006年、株式会社アクシス入社。5年間、デザインコンサルティングという手法で大手メーカー企業などを担当。2011年、スマイルズ入社。giraffe事業部長、Soup Stock Tokyoサポート企画室室長を経て、現職。全ての事業のブランディングやクリエイティブを統括。外部案件のコンサルティング、ブランディングも手掛ける。
著作に「自分が欲しいものだけ創る!スープストックトーキョーを生んだ『直感と共感』のスマイルズ流マーケティング」(日経BP)。


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