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「夢のコラボ」こんなアイデアが集まりました!

「こんな会社とこんな会社のコラボがあったら面白そう!」「こことここが組んだらこれまでにない面白いサービスが誕生するのでは?」。そんな夢のコラボについて、投稿プラットフォーム「COMEMO」(https://comemo.nikkei.com)で意見を募りました。いただいた提案で目立ったのは、「いま困っている人たちの悩み」や「目の前にある社会課題」を企業間コラボで解決し、ビジネスや地域活性化にもつなげるアイデアでした。

外国人観光客が増えたものの、夜に遊ぶ場が乏しいのが彼らの悩みで、観光消費額も頭打ち状態。もったいない話です。エコノミストの宮嵜浩さんは、劇団四季、宝塚歌劇団、アニメをテーマにした「2.5次元ミュージカル」の制作者などがコラボして日本版ブロードウェイを作っては、と提案します。

宝塚歌劇・劇団四季という国産二大ミュージカルが、2.5次元ミュージカルとともに上演できるような「ミュージカルの聖地」を形成できれば、いずれのタイプのミュージカルにとっても、国内外にファンのすそ野を広げるチャンスが増えるとともに、観劇に伴う食事やショッピングなど、関連産業の創出にもつながるのではないでしょうか。

地域活性化に向けたコラボ案をもうひとつ。駅前などに多い銀行の店舗は午後3時に閉店するなど、街のにぎわいへの貢献度がいまひとつだと、商店街の運営者から聞いたことがあります。この問題を解決し、銀行の本業も活性化するアイデアが、コモンズ投信会長の渋澤健さんの「くつろぎの場を提供する銀行」です。

出発点は「コンビニの中に銀行(のATM)があるのに、なぜ、銀行の中にコンビニがないのか。なぜ、銀行はコミュニティの人々が集まる工夫をもっとしないのか」という問題意識です。

美味しいコーヒーでくつろぎながら、本や雑誌のページをめくりながらくつろぎの場を銀行支店が提供する。そして、そのくつろぎからのセレンディピティで旅行、家のリフォーム等への意欲が高まり、そのファイナンスを提案できるのが銀行。そのようなことが、これからの新しい時代の金融の常識であっても良いのではないでしょうか。

IT(情報技術)の進化と社会の変化は大手企業にも新しい挑戦を迫ります。コラボゲートファウンダーブロックチェーンCMOの栗原宏平さんが目を向けるのは、高齢化と人手不足でメーカーが対応を求められている自動運転を巡るコラボです。「社会的に必要とされる取り組みに関しては各社が協力しあって新しい価値を見出していく必要がある」と考えます。

これまでは自社でいかにデータを囲い込むかという発想を中心にビジネスを展開する事を是と考えていました。しかし、今後より重要なのは囲い込む発想だけでなく各社でデータを共有して新しい価値を生んでいくというところがポイントになる。ただデータを共有する基盤を作れば良いという事ではなく、安全に管理するために暗号化の技術などデータの機密性に関する議論を今後も進めていく必要は残されている状況です。

人々が暮らしの中で買い物などのためスムーズに移動できる権利は「移動権」や「交通権」と呼ばれ、近年注目を集めつつあります。移動に関して、もうひとつ提案がありました。

不妊治療の普及などから、双子など多胎児の比率が昔より増えているそうです。しかし路線バスで双子用ベビーカーの乗車を断られるなど、育児負担の大きさが社会課題として浮上しています。税理士の岩下尚義さんも、自身の双子育児の経験から、さまざまな不便を体験し、新しいサービスの必要性を実感しました。

大手の自転車や自動車、電化製品のメーカーとベビー用品の企業がコラボして、よりこの方面も発展してくれたらいいな~なんて思います。

こうしてみると、企業間のコラボは、社会のニーズや生活者の期待にこたえるため真摯に取り組むものだといえます。読者からは、ただ単に世間の耳目を集めようとするコラボは不要だという辛口の意見も聞かれました。電通の倉成英俊さんの投稿です。

そもそも、企業間がコラボすること自体は、別に面白いとも何とも思わない。その2者から生まれてくるものが、イケてるかどうか。それが問題だと思う。組むために組むのはナンセンス。

「イケてる」コラボになるための鍵は、両者が「気が合っているか」どうかだと倉成さん。「気」は「思い」「志」「ノリ」と言い換えてもいいそうです。志や思いが共通する企業なら、業種や分野が異なっても、いいコラボが成り立つのでは。そんなアイデアを寄せてくれたのは、大学生のけんしんさん。サンリオとソニーがコラボして、「シナモン型aiboを作っては」と提案します。

シナモンとはサンリオの人気キャラクターで、耳の大きな子犬。aiboは子犬に似た自立歩行型ロボットです。「シナモンがaiboになり自分の家でしゃべって動くのは夢の状況」だといいます。

サンリオは事業を通して幸せの源泉となる人と人とのつながりを作るということを大切にしてきたようです。aiboも人と人とのつながりを大切にしています。シナモン型aiboによって、テクノロジーによる新しい人と人のつながりを提示することができるのではないかと思います。

健康を鍵とする食のコラボを提案するのはエンジニア兼マネージャーのktana_さん。完全栄養食をうたうベースフード(東京・目黒)のパン「ベースブレッド」を、健康や環境保全をうたうモスフードサービスの「モスバーガー」で使ってはどうかと考えます。


味は間違いなく美味しいので、ぜひとも BASE BREADでソイテリヤキバーガーで高タンパク低脂質糖質オフな一品としてコラボレーションしてみて欲しいです。

コラボのヒントは身近なところにもあります。「週4社員、週1富山フリーランス」というミノ(蓑口恵美)さんは、年末の大掃除中、いらない服の山をみながら「メルカリ不動産」というアイデアを思いつきました。

中古品売買のネットサービス「メルカリ」については、一般の人たちから「売却時の手続きや価格交渉が結構面倒くさい」という声をよく聞きます。ミノさんは、専門の代行スタッフが3カ月に1回、不用品を見定めてメルカリに出品してくれる賃貸住宅があればいいのにと想像します。

そのマンションには自然に「身軽に生きたい」「ものを大切に使ってきた」「ゴミを出したくない」という意識の人が集まってくるはずだ。

入居者によるコミュニティも生まれそうです。

投稿の多くは消費や暮らしに関するアイデアでしたが、働き方改革を巡るコラボの提案も2件ありました。

アクティブビジョン代表取締役の川端康夫さんのアイデアは、副業に関するコラボです。

副業を解禁したいがいきなり全面解禁することに抵抗がある企業と、人手不足でギグワーカーやそれに準じる働き手の欲しい企業がコラボをして、手始めにコラボ企業の仕事に限定して副業することを認めることから、副業解禁を始めてみてはどうだろうか。

企業同士がコラボ関係にあれば、労災の責任範囲の明確化や長時間労働の回避など、「労働者が一定の保護を受けながら副業できる仕組みを整えられる」と川端さんは期待します。

一方、採用関係の仕事に携わるおおつかさんは、「対角線上」にある企業がコラボした採用活動を提言しています。対角線上とは、一見、遠く離れた企業という意味です。

「理系の採用に困っている文系採用が主体の不動産業界」と「文系の採用に苦戦している理系採用が主体のメーカー」が共同で採用イベントを開催し、それぞれの業界しか志望していなかった学生たちに新しい可能性を提示したり、興味のある業界ベースでの職業選択ではなく会社としての取り組みや社風で選べたりするような、当たり前のようでまだまだ流動化されていない部分を企業側から提示する文化をつくっていく。そんな取り組みがひろがり、理解が深まっていくといいなと思います。

日本の企業や団体は、それぞれの小宇宙の中でルールや文化を作り、商品やサービスを開発、提供する時代が長く続きました。斬新なコラボを機に、企業と企業、企業と地域の間の風通しがよくなり、常識が変わり、活気が生まれることも期待できます。これも長い目でみたコラボの効果といえます。

(日本経済新聞編集委員 石鍋仁美)




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