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トップ層のリーダーシップを役員報酬でデザインしよう

経営層にも会社が期待する働き方がある

組織で働いていると、組織が期待する働き方ができているかどうかが給与や処遇、異動・配属などの人事に大きな影響を与える。従業員や管理職層であれば、評価制度や上司との面談、人材育成、働き方改革、採用活動などの様々な機会でメッセージとして伝えられる。そのとき伝えられるメッセージは凡そ3種類だ。1つ目は、割り当てられた職務が遂行できたかという業績。2つ目は、労働時間や職場内でのコミュニケーションの在り方などの働き方に関する考え方。3つ目は、企業文化や理念を反映して自社らしい人材として適切な姿勢を持ち、意思決定ができているかだ。これらの要素を総合的に加味して、従業員と管理職は相応しい人材かどうか判断される。
それでは、このような仕組みを作る側である経営者が相応しい行動をとっているかどうか、どのように判断すべきか。そのときに効果的な方法の1つが役員報酬の基準にすることだ。例えば、日経新聞によると日立やデンソーが「社会貢献」を役員報酬に反映させるという。

役員報酬の評価基準を設けることによって、好ましい行動を意識づけするという方法は、世界でもよく見られる。特に、政府による経済界への介入が色濃くある欧州各国では、上場企業の役員報酬を認める基準として、政府として期待している項目を含んでいるかを設定することがある。例えば、フランスではダイバーシティ推進のために政府主導で上場企業の役員報酬を認める基準として設定したことがある。

経営者の勘と経験が時代と合わないリスク

均してみたときに、一般的に経営者は非常に優れた能力を持っていると言える。創業経営者はもちろんのこと、組織の中でキャリアを歩んできた所謂サラリーマン社長も、優秀であるからこそそのポジションに就いている。それだけ優秀な経営者であっても、時代の流れに取り残されたり、判断を誤ることがある。特に、近年では価値観の変容のスピードが早い。働き方は急激にホワイト化し、ジェンダーへの対応も変わり、10年前の価値観が通じない世の中だ。そして、価値観の変容についていけない企業や経営者は、簡単にネット上で晒される。
特に、近年では経営者のリーダーシップの健全さと時代への適応が重視されている。スノーピークの山井梨沙前社長の退任、いきなりステーキの社内報炎上など、経営者のリーダーシップが原因でレピュテーションを傷つける事案が立て続けに起こっている。
経営者のリーダーシップを見直す方法はいくつもある。例えば、経営者に特化したビジネススクール(Executive Business School)に通うことや経営者専門のコーチング(Executive Coaching)を利用することは世界的なトレンドでもある。日本では、東京大学や一橋大学がプログラムを提供している。
また、社内から意識づけすることもできる。それが評価制度に組み込むということだ。今の時代に期待されているリーダーシップの在り方を理解してもらうために、役員の評価基準に組み込み、役員報酬に反映させる。
事業環境だけではなく価値観の変化もスピードが早まる時代において、経営者のリーダーシップも、外部の教育機関を利用したり、役員報酬の設計を工夫することでデザインすることが求められるように変化している。

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