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地域通貨こそQRコード決済で

キャシュレスとかQRコードを使った決済が話題になることは多いものの、地域通貨についてのニュースを見聞きすることは少ない。そんな中、こんな記事が目にとまった。

地域通貨は、法定通貨の欠点を埋めるものとして誕生し、様々な試みがされてきた。利息がつかず、手元に置いておくほど目減りしたり、誰がどのような目的で支払ったのかを通帳に記録したりなど、利息という仕組み(当たり前にように感じてしまうが、これも人為的な取り決めに過ぎず、お金の本質的な機能・性格とは言えないだろう)に縛られず、またお金の匿名性に起因する問題を解決しようとするなど、法定通貨とそれを基軸に動いている現代の経済社会の問題点を指摘し是正しようとする試みが地域通貨なのだ、と感じている。

そんな地域通貨だが、なかなか大きな定着をみているものはないのではないか。その理由の一つとして、管理の手間があげられると思う。お札やコインのようなものを印刷・鋳造すれば、それだけでコストもかかるし偽造の問題もつきまとう。一方で、通帳方式は煩わしく通帳持参の手間や記入の手間もかかる。

私自身も使っていた渋谷の地域通貨 r(アースデイマネー)も、携帯電話(ガラケーだが)を使った当時としては先進的な地域通貨の仕組みだったと思うが、ちょっと調べてみた範囲では最近は活動が止まっているようだった(サイトの更新が止まっていた)。

こうした地域通貨の管理の問題を解決しうるのが、スマホをベースとしたQRコードを用いた決済ではないか、と思うのだ。もちろん、QRコード決済であるから、普通のお金の決済に比べて、まどろっこしいし手間も時間もかかる。一方で、すでに多くの人が(経済活動を活発に行なっている人に限定するなら、ほとんど全ての人が、と言ってもいいかもしれない)使っているスマホ同士を使い、アプリとQRコードという枯れた技術で完結する仕組みを整えれば、新たな設備投資は最小限で済むし、機器の設置に伴うコストや時間といったものもほとんどかからない。

中国でQRコード決済による法定通貨のキャッシュレスが一気に普及したのも、こうしたメリットがあり、それがデメリットを大きく上回ったからだろう。そして、中国がいつまでもQRコードを使って決済しているかというと、そんなこともないように思う。一旦キャシュレスが浸透してしまえば、それをICカードなどの方式に(QRコード決済と並存する形で)順次置き換えて行くことは難しくない。

地域通貨ではないが、スウェーデンの電子決済システムSwishも、QRコードを使ったアプリ決済であり、主に個人間のお金のやりとりに使われているという点では、非常に地域通貨に近しい使われ方であると思った。

今回の大阪での取り組みは、路線長で日本最大の私鉄、近鉄が音頭を取っているというところがとても興味深い。鉄道路線というのは、特に私鉄の場合、会社ごとに沿線の街の特徴や性格が感じられて、それが一つの緩やかなコミュニティを形成していると解釈することも可能だ。そういう沿線のまちづくりに大きな設備投資のいらないQRコード決済による地域通貨を導入していくなら、コミュニティ形成に活用していくことも可能ではないだろうか。

例えば、駅の入口やホームのゴミをちょっと拾い、カジュアルに掃除をしてくれた人に鉄道会社から地域通貨を払い出す。駅前商店街の店の前の掃除でも同様に店が地域通貨を払う。一方で、休日の鉄道乗車にこの地域通貨が使えたり、(法規制などで様々難しいことは承知しているが)バスの運転が終了した時間帯の地域住民の駅からの送迎の乗り合いに、乗せてもらった住民が乗せてくれた住民に地域通貨を払い出す、といった活用ができるなら、鉄道会社を核に、その沿線の住民や商売をする人たちのコミュニティのつながりを強めることができるのではないだろうか。

これまで地域通貨が普及定着しなかった理由を精査する必要はあるとは思うのだが、もしその理由が主に技術的な理由・実施に伴うコストの理由だったとするなら、今こそ地域通貨にとってチャンスが巡ってきている、ということなのかもしれない。


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