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「有限な地球」と「社会の未来」、そしてAI

 東大の五神総長の卒業式のスピーチは、多様な幸福の追求を中心においていて共感するところが多い。

https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message30_10.html?fbclid=IwAR2Y2zBuzuwKF_f-5L2dDcaeEQZ2Z40u3DgoNLCr9Y4VkC73XTVxwMlxaDA

 ここで見田宗介名誉教授が引用されている。近著『現代社会はどこに向かうか -高原の見晴らしを切り開くこと』で真正面から議論されているのが、地球の有限性が社会をどう変えるか。確かに地球も宇宙もその資源は有限である。これが我々の社会やその発展に突きつけてくることを正視する必要があるという主張はその通りである。
 
 しかし、ここに未解決の大きな問いがある。それは、地球の物質やエネルギーはたしかに有限であるが、これによって「社会や経済の成長が止まるか」である。
 これに物理学の基本法則が重要な役割を果たす。物理学によれば、確かにエネルギーや物質は有限である(これを熱力学の第一法則と呼ぶ)。ところが情報量は一方的に増え続けることが知られている(これを熱力学の第二法則と呼ぶ。情報量はエントロピーと呼ばれている)。

 ここで、情報量の増加を、社会やプロダクトやサービスなどの経済活動の発展に必然的に伴う現象ととらえれば、今後の社会で生み出される情報量やその価値は、何ら制約させず、無限に成長しつづけることになる。
 私は、これが、限りなく多様な幸福の姿を可能にすると考える。我々が、これまでやったことがない未知の世界は、経験している既知の世界より、比べものにならないぐらい広大で大きい。

 情報量は、要素の組合せによって生み出される。組合せの数は、要素数が増えると爆発的に増加し、宇宙の粒子の数を遙かにこえる。我々には無限の可能性があるのである。
 人工知能が万能なような素朴な議論をよく見る。しかし。AIができるのは所詮、既に経験している既知の世界の範囲で間違いをなくすことである。未知の世界のことはデータがないので所詮わからない。
 だから、地球の有限性に制約されずに、我々の持つ無限の可能性を引き出すには、我々は未知の世界に常に踏みだす必要がある。これが新たな情報を創り出すのである。既に知っていることの中に留まっていてはだめなのである。この前に論じたチェーン店という制度などは、人類を既知の世界に留まらせる仕組みである。だから変えなければならないのである。
 地球の有限性が見えてきた今だからこそ、我々は未知の世界へ踏みだす力が必要である。そのためには、地球外に飛び出す必要はない。無限の可能性が、既に我々の周りにあるのからである。

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