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おじさん/おばさんの居場所

大企業の早期退職募集や配置転換がブームを超えて定常的なものとなってきているかのように感じるニュースが多い。それに連れて、知人から転職や早期退職への向き合い方について、最近の経験者ということで相談を受けることも増えてきた。

この記事によれば、従来は、おじさん/おばさんの居場所であった顧問ですら、20代や30代の起用が増えつつあるという。

顧問に期待するものが、主に1)知識や経験・ノウハウ、2)人脈 の2つであるとすれば、2)はともかく1)は時代の急速な変化によって「賞味期限」が短くなっており、引退を迎える年齢の人の過去の経験やノウハウが役に立ちにくくなっていることは間違いないし、2)にしても1)と関連する人脈は、1)について今通用するものを持ち合わせていないと、あまり役に立たない人脈である可能性も高い。

一方で、社内外を問わない人間関係の作り方や営業のノウハウなどといったアナログな部分は、技術によって解決されない部分が多く、それゆえに「賞味期限」が長いので、経験がものをいう余地が引き続き存在するという実感がある。

こうした部分では、おじさん/おばさんの出番が残されているのだが、問題となるのは、必要とされる部分と、必要とされない部分がセットになってしまいがち、ということ。

例えば、どのようにして相手との信頼関係を築くか、相手の言葉の言外の意味をどのように解釈するか、といったノウハウのエッセンスは普遍的なものだとしても、それに時代遅れな手法の部分がセットになっていたりすると受け入れてもらえない。中には、今のコンプライアンスや男女平等などの流れにそぐわない過去の手法もある。おじさん/おばさんがそこに敏感であればいいのだけれど、そういう面での「鈍感力」が強くて、全体として古臭く役立たないノウハウに見えてしまって全てを拒絶されている、という残念でもったいないケースが案外少なくない気がするのだ。記事にも

元オラクルの幹部、リズ・ワイズマンは自著「ルーキー・スマート」で「豊富な経験を持つ利点は以前ほど大きくなく、むしろ弊害が思いのほか大きい」と指摘する。

とある通り、弊害が利点を上回ってしまっているということ。

これは、別な言い方をすれば、弊害を減らす努力をし、利点が弊害を上回るようになれば、おじさん/おばさんでもまだ役に立てる余地がある、ということでもある。

もちろん、言うは易く行うは難し、なのだが、おじさん/おばさんは、自分が持っているものを棚卸しして、利点になる部分と弊害になる部分を見極め、後者を捨て前者を維持強化していくことができるなら、まだそれを生かす余地はあるのだと思う。利点となる経験をさらに積んで、最新のものにアップデートしていくことも大切だ。

そして、その利点を生かせる場は、若い人が中心の組織、例えばスタートアップにもあると感じる。若い人の側におじさん/おばさんを受け入れる余地があるとともに、おじさん/おばさん側も自分の持つ利点と弊害を峻別して利点だけを提供する努力ができるなら、幸せなマリアージュが成立するかもしれない。

私も、国内のスタートアップ2社で、週に1回はそのオフィスで仕事をさせてもらうようになって2年、海外のスタートアップ1社とも1年以上にわたって仕事をさせてもらっている(さすがにこちらは年に数回の訪問と、オンラインミーティングがメインだけれど)。

その経験からも、

好奇心をもって新たに学ぶ謙虚な姿勢を持ち続けるほうが成長できると説く。過去の経験にしがみついていても仕方がない。

というのは、自戒を込めてそう思う。

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