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稽古場の明かりが消えた日

最寄り駅から西に真っ直ぐ伸びるバス通りを5分くらい歩くと、右手の高台に、劇団の稽古場が見えます。会社帰りに眺めるその稽古場は、いつも夜遅くまで明かりが付いています。

新型コロナのせいで開演が延期された日、政府の自粛要請で再延期を余儀なくされた日、そして緊急事態宣言がいつ発動されてもおかしくない最近でも、夜の稽古場から明かりが消える事はありませんでした。

私からは稽古場の明かりしか見えません。きっと稽古場では、開演の目処が立たないにも関わらず、いつでも最高の演技を披露できるよう、最高の舞台を提供できるよう、演者とスタッフが毎晩遅くまで、練習とリハーサルを繰り返しているのでしょう。舞台人としての誇り、執念を感じずにはいられません。

稽古場の明かりは、高炉の火に似ています。

高炉とは製鉄所の中核設備です。高くそびえ立つ高炉は製鉄所の象徴であり、製鉄で栄えた街の住民にとっては誇りでもありました。

高炉がいったん操業を開始(火入れ)すると、炉内の火は操業停止まで消えることはありません。したがって「高炉の火が消える」とは、高炉の操業を止める事であり、鉄の生産の大幅削減ないし撤退を意味します。製鉄の街は、かつての繁栄の象徴を失います。

劇団にとっての高炉とは舞台、劇場です。様々な困難によって舞台の幕が開かない事があっても、稽古場に明かりがついている限り、高炉の火が、舞台の命が絶えることはないと信じています。

首相が緊急事態宣言の準備を表明した日の夜、その稽古場は珍しく明かりが消えていました。

たまたま休館だったのでしょう。別の夜にはきっとまた稽古場に明かりがついているはずです。ただ、それを確認する事は叶わないかもしれません。私は明日からしばらく、会社に出勤できなくなるかもしれないので。






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三菱UFJモルガン・スタンレー証券 景気循環研究所シニアエコノミスト。日本経済の分析・予測を担当しています。

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