政府骨太方針「人に投資」 対象は誰なのか
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
このコラムでも度々「リスキリングの重要性」について指摘してきましたが、いよいよ政府の骨太の方針にも盛り込まれました。
直近でのDXを担うべきデジタル人材の不足は以前から課題として挙げられていましたが、そもそも日本全体の労働人口が減るという確実に来る近未来に向けて国を挙げて取り組む方針が出てきたことは好感できます。
今回はそれだけではなく成長分野への労働移動を促したり、兼業・副業によって不足している人材の活躍の場を広げる取り組みも盛り込まれています。厚生労働省が担う職業訓練でも民間への委託を強化することで、いま必要なスキルを身につけられるようにしていくとのことです。
一方で、リスキリングというと若手や中堅社員に対して、今後急速に需要が高まるデジタルスキルを身につけてもらうという文脈で語られることが多いです。本当にそれだけでよいのでしょうか。
終身雇用、年功序列が強く残る企業において、若手社員のスキルをあげるだけでは変革はできません。それを使いこなす側、つまり経営者および管理職のリスキリングが何より重要だと思います。加えて、ジョブ型に移行することで社員に対してリスキリングに対するインセンティブを働かせることができます。そうなるとこれは会社全体を巻き込んだ対話や意識付けが必須となってきます。
日本型雇用の特徴として「現場にノウハウが貯まり続ける」仕組みであることも理解しておく必要があるでしょう。「現場力」や「上からの指示ではなく現場の創意工夫で難所を乗り切る」ということは時に美徳として語られますが、そもそも適切なマネジメントが機能していないことの証左でもあり「組織が戦略に従っていない」とも言えるのではないでしょうか。現場のノウハウが経営レベルのダッシュボードで把握できない仕組みは、実はDXを進める上での大きなハードルのひとつにもなっています。
日本でも国際的な流れを受けた東証のガバナンスコード改革を契機に、上場企業では人的資本の開示が求められるようになりました。例えば取締役のスキルマトリックスを開示することで、なぜこの人がこの役職にふさわしいのか、全体としてそれぞれがどのような強みを発揮することで力強い経営の舵取りができるのかなどをデータを元に開示することが求められます。
また、役職が上の人材がつまっていく問題も無視できません。日本企業の社長の平均年齢は60.3歳で31年連読で上昇。世界の平均は53歳とのことです。今後定年はさらに伸びる予想であり、ますます平均年齢もあがっていくことでしょう。何歳になっても学び直すことはできるとはいえ、実際に行うのは相当な努力が必要です。
経営者が最新のマネジメントを取り入れアップスキルできるかどうか。人への投資が成功するかは、この層の再教育が成功するかどうかにかかっているのではないでしょうか。
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