見出し画像

「象徴」か、「スケープゴート」か。環境問題で起こりがちなコト。

軽井沢で行われていたG20エネルギー・環境大臣会合が閉幕しましたね。正式名称は「持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」。G20は先進国だけでなく、中国やインドなどの新興国やロシアも参加する会議体ですから、ただでさえ成果文書を取りまとめるのは大変ですが、エネルギー転換・温暖化対策については、2年前トランプ大統領が参加するようになってから全体でスタンスをあわせることが困難になっています。昨年11月30日~12月1日に、アルゼンチンで開催されたG20ブエノスアイレスでも、気候変動に関するパラグラフは「パリ協定署名国」と「米国」で書き分ける形となりました。そんな中で今回、アメリカとそれ以外で書きわけるということでなく文書が取りまとめられたのは相当の交渉努力があったものと思います。関係者の皆さんには心から敬意を表したいと思います。(成果文書が採択された、しかも1:19ではなく20でまとまった、と聞いてはしたなくも「すげー!!」と叫んだのは私です)

実は気候変動についての「京都議定書」も、生物多様性に関する「愛知議定書」も、名前から明らかな通り、日本がホストした国際会議で採択されました。愛知議定書をまとめた後には「japan Miracle」という言葉も聞かれたものですが、環境に関する国際会議をまとめる力において、日本は高く評価されています。日本の中でほとんど知られず、報道もされないのが残念ですが、バランスの良さやそれぞれの国への配慮が求められるホスト役として、日本の評価は相当高いのです。

さて、今回の会合で大きな目玉となったのが海洋プラスチックの問題です。プラスチックごみの問題に積極的な姿勢を示す意味もあって、日本政府はこの会議に合わせて東京オリンピック・パラリンピック前の2020年4月からレジ袋の有料化を導入する方針を示しました。私たちが袋さえ持ち歩けば削減できるものですし、普段利用することが多いだけに消費者に気づきを与える効果も大きいのは確かでしょう。ただ、環境問題に往々にしてありがちなのが、こうした象徴になりがちなモノ・コトを、ある意味スケープゴートにして、それだけを叩き、それだけをやめれば問題が解決したように思ってしまうこと。この記事では「レジ袋使用量は年間20万トン程度と、年間に出る廃プラの2%程度」であると述べていますし、もう一つプラスチックごみ問題で「象徴」にされたプラスチックストローも、量のインパクトとしてはそれほど無いことは皆さんも容易に想像がつくと思います。(もちろん世界全体で考えれば、毎日50万本以上のプラスチックストローが使われているとしている調査もあるので、絶対値として少ないとは言いませんが、他との比較論として)。そして、レジ袋は少なくとも私が住む自治体ではゴミ袋として使えますし、その他もろもろ利用することが可能ですよね。

なのになぜ、レジ袋でありストローなのでしょうか。それは代替が容易ということと、より強いのは、象徴的な意味合いであろうと思います。下記にご紹介した記事でも、原田環境大臣は「使い捨てプラスチック削減の象徴となる」と述べたとされています。そうした象徴を作ることによって、生活を変えようということに異論があるわけではありません。でも先ほど書いたように、象徴ではなくスケープゴートにしてしまい、それで満足してしまったのでは本末転倒です。レジ袋有料化は、それまでお店がコストを負担して提供していたものを消費者に請求する訳ですから、これが一斉に行われる限り企業としては反対する理由がありません。でも消費者が負担したコストが何に使われるのかが重要でしょう。今回のレジ袋有料化は、残念ながらそうした議論を十分に尽くして提案されたとは言い難い。

こうやって関心を持って身の回りを見てみると、クリーニングから帰ってきた洗濯物はプラスチックのカバーに一つ一つくるまれていますし、食品も化粧品も医薬品も、私たちは多くのプラスチックを日々消費していることに気づきます。せっかく日本がホストしてまとまったG20 の成果文書に海洋プラスチックごみに関する記述も盛り込まれました。レジ袋やストローをスケープゴートにして、それで「やったつもり」になるのではなく、実態を伴うプラスチックごみ対策にしていくことが、この問題を積極的に打ち出した環境省を中心とする政府機関に求められることであろうと思っています。期待を込めて!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?